助けて
誰か、お願い。
私を助けて。
この生き地獄から逃れられるなら、誰でもいいから。
私は雨に打たれながら、そんな奇跡を期待する。
私の血液が、雨に流されて行く。
痛い、痛い。誰か、助けて。
人通りの無い路地に、座り込んだ。
寒い、冷たい。
寂しい、怖い。
「誰…か。助、け……て…」
そんなSOSは、雨音にかきけされる。
唐突に、足音が聴こえてきた。
少し、びくりと震える。
遂に幻聴が…。
だが、その足音は確実に近付いてくる。
足音は、うつむいている私の前で留まった。
「大丈夫…じゃないよな。どうしたんだ?」
少年の声。
私は顔を上げない。
「痛いの」
震える唇で、答える。
消え入りそうな小さい声。
「何処が?」
全てを見透かす少年の声。
きっと、わかっていながら問っている。
「ここと、ここと、ここ」
怪我を指差し最後に、軽く握った右手を、自分の胸に添えた。
それが意味するのは、心の傷。
「俺が治癒してやる。来い」
白く綺麗な手が、眼前に差し出される。
ああ、きっとこれ、夢だ。
手を掴み立ち上がる。
少年は、驚く程美形だった。
アイスブルーの瞳で、少年は微笑みかける。
「あの、お名前は?」
走りだそうとする少年に、聞く。
「アルフだ」
「私はっ、アイリーンです!」
それまで降っていた雨が止み、雲の隙間から除く夕日が、アルフを照らす。
アルフの笑顔に、ドキリとした。
なんて、幸せ。
でも私は、ずっとこの時間が続かないことを知っていた。
貪欲に幸せを求め、それを自ら壊してしまう。
それに例外なんか無い。
それでも、今、この瞬間の幸せを味わおう。