前編
いらっしゃいませ。我が社幻獣派遣サービスでございます。本日は我が社を知っていただくために、従業員である私の一日をご覧頂きます。
私のデスクはテレフォンルームの先にあります。
「ゲゲゲの鬼○郎は、三十件先まで予約が入っております。代わりといってはなんですが、一反○めんはいかがでしょうか?」
「爬虫類部門で今一番のおすすめは、体調十五メートルの二足歩行カメレオン、『ヨッ○―』でございます。鼻の大きな赤帽子の配管工から買い入れた我が社の○ッシーは、世界でも最大級のものとなります」
「キューピットですか? 申し訳ありませんが、我が社では天使は扱っておりません。代わりにメデューサをお送りしますので、睨まれないようお気をつけ下さい」
皆様ご存知の通り、我が社は幻獣派遣サービスでございます。ここ数年急成長を遂げる幻獣派遣業界ではございますが、我が社の強みは何といってもあらゆるお客様のニーズを叶える対応力でございます。
妖精派遣が基本のこの業界で、我が社は妖怪や怪獣も派遣リストに取り入れ、和洋折衷の企業となっております。
肝試しやハロウィン、クリスマスにいたるまでほぼ全ての年中行事も、我が社にお任せください。
テレフェンルームを抜けると、その先は第一管理部。派遣リストに登録された幻獣の管理、派遣手続きなどを行う部署でございます。
「先輩、申し訳ありません!」
部下の一人が突然私に頭を下げました。
「赤鬼たちが、一斉にストライキを始めました」
急な問題でしたが、慌ててはいけません。上司の私が取り乱しては話が先に進みません。その代わり、部下に冷たく接して怒ります。
「・・・ストライキ?」
「トラ柄パンツ着用が普通なのに、デニムを履いて仕事するものですから注意したら・・・」
「お客様は?」
「桃太郎様と一寸法師様から苦情の電話が来ております」
そっちはお客様相談センターの管轄か・・・
「仕方ないな。特注でトラ柄のデニムを作ろう。その流れでお客様と赤鬼と交渉して。あとデニムの発注も忘れずに。ほら急いで」
できるだけ小さくことを収めないと。
「先輩、スフィンクスから有給の申請が来ています」
また別の部下が私を呼びます。
「有給って、何日?」
「一月です。何でもロシアに別荘があって、そこで涼みながら趣味を楽しんで休みたいと」
趣味って、ただのなぞなぞだろ・・・
「じゃあ代わりにその一月の間、イースター島からモアイ一体まわして。それで何とかやりすごす」
「わかりました」
「あと、イエティって今どうなってる?」
私の部下は机から書類を取り出します。
「え~、イエティはハーゲン○ッツのキャンペーンで地方巡業中です」
「そうか。巡業が終わったらすぐヒマラヤに戻るよう言っといてくれ」
見苦しいところをお見せしました。これが私の仕事です。この業界は外見華やかなものですが、やはりどの企業も底辺は地味で大変なものなのです。
一息ついて、私はイスに座りました。シャットダウンしたパソコンの黒いディスプレイに、私の顔が映ります。
―――やせたな
やりがいのある仕事だとは私も思っています。入社当時のことを思い出します。生まれたばかりの業界だからと、必死に頑張って会社を大きくさせようとした時期を。
しかし会社が大きくなり大人数で大量の仕事をこなそうと思うと、マニュアル化になりがちです。多忙と肩にかかる思い責任に悩まされ、消極的な妥協案しか出せなくなった自分に、時々やるせなく思います。
昔はもっと大きな志があって、仕事をしていたはずなのですが。
・・・おっと、申し訳ございません。皆様に愚痴をこぼすなど。
では、明るい話題を。我が社の新規開拓の話です。中でもおすすめは『ハッピーガールプロジェクト』! 住んだ家を幸せにするという、座敷わらしの派遣です。
―――ってあっ、これは言ってはいけなかった・・・実はこれ、全然流れに乗らないプロジェクトでして。座敷わらしさんが職人気質な人なので、なかなか協力が得られずに・・・やっと今日、商談まで持ち込めたのです。




