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絡繰人形の遭遇

お屋敷のお庭の隠れた場所にある洗濯場でせっせと洗い物に精をだしています。大きなシーツやテーブルクロスを洗って干すとなるとだいぶしんどいのでこういう仕事は班を組んで一週間のローテーションがやることになっています。

ですが私は主人付きなので班には加わらずに決まった日付でローテーションを組まれているのです。めんどくさいことこの上ないですが組んでくださってる侍女長に感謝です。


「ふぅ……」


今までしてた仕事が終わった瞬間、やり遂げたとゆう達成感が吐く息として出ててきてしまうのが私の癖の一つなのです。


青空の下、白い洗濯物。


心地よいと感じる風がさわさわと吹き抜けて、干した洗濯物が揺れています。シーツなどを干すのは重たくて1人では骨が折れますが同じ侍女仲間とともにせっせとほしざおに干していくのは楽しいです。侍女仲間には勿論私のような絡繰人形アンドロイドだけではなくひとも同じように働いています。ひとの場合は礼儀見習いだったり奉公だったりとしますが私たちの場合は買われたモノなので給与もでません。かといって24時間フルで働くことは人形でも無理な話なのです。ひとと同じように眠り、同じように栄養を摂取します。摂取の仕方はいれものによって異なりますが私のようなヒト型はヒトと同じように口から摂取します。摂取するものは勿論違いますがそれ故、ヒトに成らざるモノとして呼ばれたりしてます。ひとの都合で作っておいて勝手だと常々思ってしまうのです。


私が仕えているお屋敷はきちんと絡繰人形アンドロイドまで待遇がいいのです。休日は無くとも休憩時間は確保されていて食事もきちんと手配してくださります。それに一体一体に寝台があるのです。

素晴らしいと思いませんかっ!?だからこそ、ここで働かせてもらえることに感謝しなければいけないのです。


絡繰人形アンドロイドに感情はないと言われているのはとうの昔のお話なのです。多少なりとも周囲に対する想いは芽生えてきます。感情の起伏はあまりありませんが。ひとと違うのはそれらがメモリーで保存されているためにメモリーを消去されるとその感情も無くなってしまうのです。

今までそのメモリーを消されたことがないのでどのよつになるのか見当もつかないのですが消されたくはないな、と思ってしまいます。人形には不要だと言われたとしても。

さて次はどこの掃除だっただろう、と屋敷の中に戻ろうとしたら聞き慣れすぎた声が私の名を呼んだ。


「ジゼルッ!」


後ろから声をかけられて振り返れば少しだけ不機嫌な主人がこちらに向かって驚くほど大股でそれはもう鬼のようで少しだけ逃げ出したくなったのは秘密です。そしていつの間にか一緒に洗濯物を干していた侍女仲間もいなくなっています。完璧に置いてけぼりを食らいました。待ってください、私も逃げたいです、切実にっ!


なんて思ってても主人が呼んでいるなら応えなければならない。それが仕えるものの決まりであり、守るべき礼儀だと私は思うのです。ですから逃げ出そうとする足を叱って主人のほうへ歩み寄ります。


「何でしょうか。ゼルド地区にご視察ではありませんでしたか?」


朝にご予定を確認したとき、今日はゼルド地区に視察に向かわれるので1日お屋敷を空けるとのことでした。私は当然視察には同行しませんし何より主人がお屋敷を発たれるのを使用人一同お見送りいたしましたのでこの時間に主人がここにいることはとても不思議なことなんですが……。


「そんな事よりも、ジゼルちょっと来い。」


そんな事って、地区の視察はとても重要なことですよ……と心の中でツッコミをいれておきます。


ぐい、と手首を捕まれて連行されてしまっているのですが他と比べて小柄な私は男性の平均身長を上回る主人がはや歩きしてしまえば当然のことながら小走りしないと追いつけないのです。いや小走りしても追いつけない時もあるのです。如何せん、ひとではないといえこんな扱いを女性にするからこそ主人は結婚出来ないのでしょうか。


なんて無礼なことを考えていたせいか主人の額に皺が一本刻まれてしまったような気がしてならないのです。はい。


「――これはこれは、ハイド様。そんなに急がれてどうしたのですか?」


嫌みったらしく聞こえた声に主人はぴたりと止まる。

ついでに勢い余ってポスンと主人の背中に顔面を打ち付けてしまいました。主人の肩越しに覗いてみれば、この国には珍しい金瞳金髪で有名なキエラント伯爵家の次男であるヘルス様が笑みを浮かべながら立っておられました。はて、キエラント伯爵様が訪問される予定なんて無かったはずなのですが、と主人の予定を頭の中で繰り返していくと主人から地を這うような声が聞こえて思わず体がギクリと強張る。


「キエラント殿。私は貴方に名を呼ぶことを許した覚えはありませんが。何故屋敷の中を彷徨いておられるのですか。」


「いや、あんまりにも貴方が遅いものですから。少しばかし散策を、と思いましてね」


金色の視線を何故か私に向けて含みを持たせる笑みを貼り付けてそう言い放った後ろで執事長であるヴェル様が慌てた様子で此方に頭を下げたのです。成る程、強引に客間から出てきたと言うことですか。キエラント殿なら納得です。


「屋敷の中を勝手に彷徨くことを許した覚えはない。ヴェル連れていけ。」

「承知しました。キエラント様お部屋にお戻りください。」


「ふふ、良いものみれたし今日は帰りますよ、あぁ部屋じゃなくて玄関まで送ってね。――では、また後日。ウィスタント侯爵殿と可愛らしい絡繰人形アンドロイドちゃん」


金の髪が優雅に去っていくのを呆然と見てしまっていた私が悪いのでしょうか。主人の機嫌が一気に急降下していくのを肌で感じた為、急いで主人を自室に連れて行くことにしました。


えぇ、世間一般では大柄と評される主人を引っ張っていくのは骨が折れる仕事でした。あぁ今日は何も買い出しを頼まれてなかったはず。

それよりも、これからのことを考えてため息がでるのは何故でしょうか。




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