66:潰えた銃弾
ハティウルフクラスの大型魔獣が一頭いれば、中型のヘルムボアクラスは同じ生息域に百頭は生息している。
となれば、トリクラプスドッグやユニコーンラビットなど小型の魔獣に至っては千を数える事が考えられる。
これは食物連鎖における捕食者と非捕食者の個体数比の問題であり、この点については国防陸軍も池間の指示で推測値ながらも計算を進めていたが、全てを見通せる訳ではない。
九月末から十二月の初頭に掛けての二ヶ月半の間、初期にA-10のガトリング砲に驚いたヘルムボアが暴走したような事故的な例は除くとして、小型の魔獣が集団化して森から出る事は殆ど有り得なかったため、フェリシア側も国防軍も魔獣の生態を掴み切れていなかった。
小型、中型の魔獣は追われぬ限りにおいては森を出ずに息を潜め、自分たちを捕食する大型魔獣が北上して、森が平穏になるのを待っているのが現状である。
予防的措置とはいえ、国防陸軍はその彼らの生息域に踏み込んだ。
前回までは森から北上する魔獣を仕留めるだけであった人間達が、今回は自ら自然界における『棲み分け』のルールを破ったのである。
人間が先手を取っただけとも言えるが知性がないから獣であり、本能で動くから獣なのだ。
力で押せば、ぶつかり合いになるのは当然のことである。
魔獣は、高位種になればなるほど無闇に襲ってくる事は無いが、捕食目的なら当然ながら弱いものを狙う。
だが希にでは有るが、自分より強い筈の相手に向かって其の力を得ようとでもするかのように襲い掛かってくる高位種は確かに存在する。
中、低位の魔獣は、その力次第だが実は人を恐れることもある。
魔力の強い人間など、自分たちを捕食する高位の狼や竜と何ら代わらない『気』を発しているからだ。
だからこそ潜んでいるというのに何故自分たちをあぶり出そうとするのか、と逆上しつつあるのが現状であろう。
人間が振りまく炎もその爆風も、高位魔獣の咆哮や其処から発せられる炎熱と何が違うというのか。それらは魔弾であり、魔炎ではないか。
彼らの恐怖心は、そのまま生物としての生存本能、即ち闘争心に繋がっていく。
そして魔獣とは、単に力ある『凶暴な生物』ではない。
魔を纏って生きる。
即ち、怒りによって我が身を作り替えていくのが『魔獣』なのである。
地球の生き物の生態が一様でないように彼らの生態も一様ではない。
しかし、様々な要因から人間に対する攻撃性を強めているのは確かであり、生存のために身を作り替えてきていることも事実である。
有る時から本来は黒かった筈の竜が、決して届かぬ上位種である『碧竜』へ近付こうと必死でその姿を変えたように、その他の魔獣も自らの体を少しずつ作り替えていく。
小型の魔獣が強化されれば、大型魔獣はそれ以上の強化を見せる。
人間だけが未だそれに気付いていない。
いや、本来それを監視するはずだった者達さえも。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
十二月十三日夕刻
第四小隊総員二十五名は森林地帯から約十八キロ離れた地点で、野営の準備に入った。
後方には半径百メートル程の林があり、一通りの調査を済ませ安全は確認してある。
万が一の際は兵員輸送車を盾にその林を防衛線とする事に決めた。
明日から開始される第十六ブロック攻撃に備えて、早めに休憩に入る。
所謂、南部防衛壁の東端から西への距離二百二十キロから二百三十キロの間の森林にAH-2S、十二機による制圧爆撃を行った後、それに追い立てられて来るであろう魔獣を相手しなくてはいけない。
竜やハティウルフなど大型のものが出たなら、そのままヘリが対応するが一トン以下のヘルムボアクラスから下の小型魔獣は三十式偵察警戒車両と歩兵科によって殲滅する事になる。
また、爆撃後は両サイドからASが森林に突入するので、大型の魔獣が潜んでいたとしても撃ち漏らす事はないであろう。
つまり、上空、正面、両サイドからの包囲殲滅戦である。
魔獣にとって逃げ場はダニューブ河を渡った不可侵域しかない。
其処まで魔獣の生息域が下がってくれるならそれで良いのだ。
池間を始めとする指揮官から一兵士に至るまで誰もが『そう』思っていたのだが、魔獣達はダニューブ河を渡って不可侵域に戻る事が出来ぬ理由もあるのだ。
ガーブの言う処の生息域飽和状態であるが、それこそ人智の及ぶべくも無い理由であり、彼らは前へ前へと進んでくる。
次第にその異常性に気付くべきであったし、実際、巧や五十嵐、アルボスなど五ヶ月にわたり魔獣を相手にしてきた面々は肌でそれを感じていた。
勿論、先に述べた通り、彼らとて真逆魔獣が自らの体を作り替えるほどの力を持つなど思いもよらないことではあったのだが、これはやむを得ないことであろう。
唯、現場指揮官である連隊副官の池間はフェリシアにおける対応期間は彼らに及ばないものの、既にその好戦性の異常が日を追うにつれ増大している事に気付いてはいた。
彼の通り名である『剃刀』は伊達ではない。
本日昼前には『警戒を密にせよ』との司令を出す。
しかし、碧み掛かった竜どころか大型魔獣すら、今の処現れていない事、中型までの魔獣は現代兵器の火力によって制圧されると後は算を乱して逃げ惑うだけである事などから現場の各隊員には危機感が薄かった。
この二週間で死者どころか負傷者すらゼロなのである。
余裕が生まれ、それが油断に繋がったとしても、当然の帰結であったのかも知れない。
池間の最大の失点、それは魔獣を相手にするならば同じ波長を持つ『魔術師』を少なくとも各小隊に最低一名はオブザーバー的にでも参加させておくべきであった、と言う事である。
勿論、彼もそれを考えなかった訳ではない。
しかし、合同訓練のような『慣れ』の時間も無しに国防軍の圧倒的火力の連携行動を見せ付けられた場合、年明け以降に行われるフェリシア-地球連合による作戦行動において、フェリシア人の戦闘意欲が削がれる事を恐れた。
また仮に少数のフェリシア魔術師を参加させていても、彼らからの警戒への呼びかけ等は一笑に付されたであろう。
そして、それがフェリシア人のプライドを傷つけ、今後の連携に不備を招く事をも恐れたのだ。
そのような訳で、フェリシア兵を参加させない事は苦肉の決断であった。
国防軍の兵士ひとりひとりがそれを分かっていて欲しかったが、なにぶん彼らは下士官と下級尉官による『若い兵士』の集団であったのだ。
国防軍の殆どはある意味、未だ『兵士』では無かったのだ。
『殺意』の意味を知る本物の兵士は第十三連隊から選抜された三十二名ぐらいでは無かったのではなかろうか。
彼らは、池間の命令の意味を過去の体験から来る『勘』で捕らえていたのだが、他の多くの兵士はそうはいかなかった。
地球の野生生物は餌として襲う場合なら基本的に自分より弱い者しか襲わない。
魔獣にそれが当てはまるのならば、そのような意味では左翼に展開する第四小隊二十五名が襲われるのは必然だったのかも知れない。
不可侵域から最も離れ、安全地帯に最も近いこの小隊は纏う空気が弱すぎた。
第四小隊は三分隊を一小隊としており、編成は最も正規のものに近い。
その小隊長少尉、古館。
人は悪くないのだが、何故この選抜に選ばれたのか分からない程に平凡な指揮官であった。
試験成績が良いだけの融通の利かないタイプと言うべきか。
多分に人手不足が響いたとしか言いようが無かったであろう。
アメリカに派遣される可能性の高い尉官は先に押さえられ、池間をフェリシア派遣軍に引っ張り込めたことすら運が良かったと言える程であったため、これも当然かも知れない。
反面、政府内部でもアメリカ南北戦争は『回避』の可能性が有ると根拠もなく楽観的に考える内務大臣は少なくなく、外事課の小田切からフェリシアへ補給線確保の兵力増強を求めるという要請書は首相の説得にも関わらず内閣で一致を見ていなかった。
何より首相や国防相としても、表向きはシーレーン確保のための実践的訓練参加という曖昧な説明しかできない派兵であったと云う事が大きい。
そのようなものに一気に一千五十名も参加させられる方が異常なのだ。
また、ヴェレーネが選抜において、今後フェリシアを利用しようとする可能性のある功名心のある人物を避けた事も上げられる。
そのような意味では古館は申し分なく真面目ではあった。
しかし、残念ながらそれだけの人物だったのだ。
いや、それは言い過ぎであり単に運の悪い男であったと言うべきかも知れない。
十二月に入り風は当然ながら北風である。
小隊は現在、歩哨を残して眠りに入っている。
大型のライトを南部の森に向ける必要性はない。
虫を余分に引き寄せるだけである。
月齢は新月。月明かりのない深夜十二時を廻って、森から出てきた十二頭のハティウルフの獣の匂いは全て南に流れた。
ハティウルフは標準体長十七メートル、体高四.五メートルの大型魔獣である。
夜間に置いても三十式のレーダーは動き続けており、必ずその姿をサイトに浮かび上がらせる筈であった。
しかし、彼らは自分の周りを一種の対抗力場で覆い、レーダーという彼らにとって耳障りな音を消す事に成功していた。
それはレーダー電波が反射せずに吸収される事を示す。
一ヶ月前。巧が二頭のハティウルフを相手にした時、一頭を見逃したのは彼の迂闊によるものだけでは無かったのである。
あの時点で既に魔獣はその進化を遂げようとしている最中であったのだ。
魔獣はこの耳障りな音が自分たちにとって何らかの不利な条件である事を野生の勘からか見抜いていたようだ。
音を消す事に成功した時、彼らの逆襲は始まった。
次第に忍び寄る十二頭の影。
月も無いその夜、歩哨に立っていた一人の伍長は地平線から少し高い位置にある赤い星が消えたのを見た。
「雲が出てきたかな?」
伍長が隣の同僚に話かけたその時、彼の耳に激しい息づかいの様な音が聞こえた。
「何か言ったか?」
「いや、それより臭わないか?」
「……そう言えば、何か」
「獣が居るのかな?」
そう言って銃を構える。銃に装着したライトに照らされた範囲には草原しか写っていない。
「三十式、聞こえるか? サーチライト入れてくれ。南側二十番、二十一番だ」
三十式のライトが森の中から平原を照らした時、彼らの悲鳴と、銃撃音が響き渡った。
星が消えたのは雲によるものでは無く、狼の巨体によって水平線近くの星が隠されてしまったためであったのだ。
銃のライトは、ハティウルフの足の間の草原しか照らしていなかった
相手が大きすぎて、人間の感覚ではその正確な位置を捕らえる事は出来なかったのである。
目の前に迫る巨大な狼の前に七.六二ミリ弾は全くの無力であった。
一気に2人の若い兵士は悲鳴を残して狼の口腔内に消えた。
生きたまま食われるという泣き声と悲鳴は、歩哨に当たって居た殆どの兵士のインカムに響く。
それがパニックの引き金を引いた。
東側にいたAPCがその方向に向かおうとした時、既にその正面にも三頭のハティウルフは待ち構えており、第四小隊は完全に包囲されていたのである。
車両長席の十二.七ミリ弾が火を噴くが、ハティウルフの毛皮は冬に向けて僅かに厚みを増していた。
装甲車にも対抗するその銃弾は全て弾き返される。いや、古館は確かに見た。
物理的な防弾性だけではなく、弾丸の速度が僅かに落ちていた。
二十分の一の割合で含まれる射撃線視認用曳航弾がその巨体に迫ると確かに速度を落としたのだ。
「三十式を前に出せ! 三十七ミリでないと無理だ! ランチャー員、ATM(対戦車ミサイル)用意。各分隊長の指揮に従って発射! APCを中心に分隊は集結!」
指揮は迅速だったと言えるだろう。
しかし、その前に一旦林の中に引かせて態勢を整え、敵の数を把握すべきであった。
後方から飛び出してきたハティウルフが三十式偵察警戒車両に体当たりすると、巨狼から見れば仔犬に当たるようなその車体を軽々とひっくり返してしまったのだ。
「伏せろ!」 誰かが叫ぶ。
三十七ミリ機関砲を発射している最中であった三十式の砲身が筒内爆発を起こし、一気に炎が広がる。
あれでは車内に生き残っている者は居ないであろう、と誰もが思ったその時、その炎に照らされて六頭のハティウルフが頭上から彼らを見おろしていた。
目前に現れた巨大な獣に誰もが恐怖する。
最早、彼らを守る盾はAPC(兵員輸送車)一台のみである。
だが逆に、横転すればその下敷きになりかねず、誰もがAPCを盾に集結する事を躊躇した。
この時点で兵力は完全に分散されたのだ。
林に入り持ちこたえれば、二十分ほど離れた集結点からヘリを飛ばす事も出来たであろう。また、隣の防衛陣地からも一キロと離れていない。
増援はある。
しかし判断を誤り、ミサイルに頼った。
ATMが発射される。
「死ねや! ケダモノが!」
今までなら三十式の画像認識連携により楽々と中型ヘルムボアを捕らえたミサイルである。
これだけの至近距離である以上、初めて見るハティウルフとは云え過去にA-10が集めた画像データを持った三十式が生きていたなら識別装置は問題無かったかもしれない。
しかし暗闇の中、赤外線シーカーに頼るしかないミサイルは、その巨体から発せられるはずの熱源を全く捕らえられなかった。
レーザー誘導を行った隊員が目標確認するも、そちらの計器にも何ら反応はない。
首を振っただけ、或いは軽く飛び下がったハティウルフ達はそのミサイルを全て軽々と避けて見せた。
「なっ! なんで……」
隊員達の顔に絶望の色が広がる。
同時に別方向から現れたもう六頭の巨狼達が兵士達の北側に回り込むと後方の林への逃げ道は完全に塞がれた。
そして殺戮は始まる。
おごり高ぶった狩る者達は、一転して惨めで哀れな狩られる者に置き替えられた。
十二頭の牙だけが彼らを蹂躙した訳ではない。
その爪が、いや、足で押しつぶされるだけで体中の骨が砕け、目玉が飛び出し、内臓が破裂する。
必死で放つ銃弾はまるで豆鉄砲のように弾き返され巨狼達の怒りを増すばかりとなれば引き金を引く事を戸惑う者まで出て、その動きが止まる。
ランチャーは的外れな方向で爆発し、手榴弾で味方を傷つけるものまで出た。
誰が何処に向かって攻撃しているのか分からぬうちに一人、又一人と頭上から押しつぶされ、噛み砕かれていく。
「食わないで、食わないで!」
「手が、手が無いぞ。俺の手が無いぞ!」
わめき声と鳴き声が重なり合う。
「誰だ! 俺を打ったのは誰だ! 殺してやる!」
そう言って味方に向けて銃を乱射する一人の兵士。
古館は“許せ”とだけ言うと、その男の頭部に向けて拳銃の引き金を引いた。
その兵士は完全に錯乱していたのだ。止むを得ない行為であったと言える。
そして、その行為は平凡な男が最後に見せた指揮官としての矜恃であったのかも知れない。
直後、彼もハティウルフの牙に掛かり、その姿をこの世から跡形もなく消す事になる。
暗闇の中、燃えさかるAPCと三十式の炎だけが生き残った兵士達の視覚を確保するという皮肉な結果にパニックは頂点に達していた。
西に展開する各小隊の無線には第四小隊からの悲鳴としか言えない救援要請がバラバラに入ってくる。
各飛行隊は決してヘリを飛ばすのに手間取った訳ではない。
しかし、狼たちはその目的を達すると、同じ場所に留まる愚を犯さず早急に森へと引き上げ、その姿を晒す事も無かった。
対するヘリのレーダーもサーモグラフも三十式と同じくその巨体を捕らえる事はなく、虚しくセンサーは沈黙する。
三十分後、急行した四機のヘリと集結した中隊百二十五名の目の前には、食い散らかされた第4小隊の隊員達十四名の肉片と燃えさかるAPC、無残に横転炎上した三十式偵察警戒車両だけが残されていた。
古館を含めた五名は丸呑みされたのか、服の一切れも見つからなかった。
また生き残った十一名の内、四名が病院への搬送中に死亡する。
二十五名中生き残ったのは僅かに七名。
その七名も五体満足な者は一人もおらず、まさに『惨劇』と言うべき事態であった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「第十六ブロックへの攻撃は一旦延期して編制を練り直しましょう」
中央右翼部隊から無線で寄せられた巧の進言に、池間は全部隊を防衛壁構築線の後方まで下げる事を決定した。
それから秘書官の軍曹を呼び出す。
「アルボス東部防衛司令に連絡を取ってくれ。貴国の魔術師との共同戦線を組む必要が出てきた、と」
彼の判断は確かに速かったが同時に、
『この判断をもっと早く行っていれば今回の被害は出なかったのでは』と彼が自分を責めたのも事実である。
しかし、それは奢りである。
この被害がなければ、隊員達がフェリシアの兵士を軽んじる傾向に変わりはなかったであろうし、何より魔獣の進化など誰に予測が付いたであろうか。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
『いくら何でもこの結果は予測が付かなかったね。僅か十五分で壊滅とは』
バードの標準稼働を開始させて置いて良かった、と『セム』は思う。
『結局、アルテルフの作動が無ければ、これを知る事もなかったとすればアクスの阿呆にも少しは感謝かな?
いや、多分あいつのせいでこの様なんだ。とっ捕まえたら……』
其処まで呟くともう一体の容疑者に通信を繋ぐ。
『ガーブ、聞こえるか』
〔こちらは、Game area Administration Building(遊技区域管理棟)、コード『ガーブ』、
信号はCentral management mechanism(中央管理機器)、コード『セム』と判定〕
『YES、こちらはセムだ。訊きたいことがある』
〔質問をどうぞ〕
『個体Aだが、あれを出すのは一千五百時間ほど後だと命じたはずだ。何故、今誘導した』
〔コード『セム』には誤認があります〕
『誤認とは何か?』
〔今回、誘導した個体A系統は全てA2です。Aを誘導した記録は認められません。
また、Aが領域を突破した事もありません〕
『バードの観察によると確実に【A】とはいかないがほぼ同等の戦闘力があったがね』
〔生息域密度の問題から、相当数が進化を遂げたものと思われます〕
『今、何と言った!』
〔生息域密度の問題から、相当数が進化を遂げたものと思われます〕
ガーブの言葉は一言一句変わらない。
『馬鹿な! そのような機能は【個体】には与えられていない』
〔コード『セム』、これは事実です。S3のケースでは、彼らは北部に追いやられて絶滅寸前です。S2及びA2は、そこから進化することを学びました〕
少し、間が空いたがガーブの信号は続いた。
〔実は、重ねて報告する事がありますが、情報は受け取れる状態でしょうか?〕
『セム』に人間並みの感情があるとしたら、今こそ「驚いた」という表現を当てはめるのが正しいであろう。
今までは、「驚いた!」という表現を使った【報告の再確認作業】に過ぎなかった。
しかし今回は本物である。
過去の記録において、ガーブがこのように報告を言いよどむ事などあり得なかったからだ。
まるで【個体】が進化を遂げたかのようにガーブにも異常が見られる。
スキャンを開始しようとして彼はそれを止め、代わりに信号を返した。
『ガーブの報告を許可する』
サブタイトルは1954年、ポール・アンダースン「折れた魔剣」改変です。




