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その9

「あっ!!ラルー!!!

母様、おばーさま!ラルー発見!ラルー発見!」


今まで緊迫した空気を全く無視した、素っ頓狂なフィーダの大声と共に、母様とおばーさまとフィーダが人影から現れた。


「ラルー!ラルー!もぅ、どこにいってたの!心配して死ぬかと思ったでしょ!!」


泣きそうな顔の母様が猛烈な勢いで走って来た。私に会う事に夢中で周りに目が行って無かったらしく、ボー然としているバカ母を踏み付けて、私のもとまで走り、思い切り抱きしめられた。


「ギャー−−−!」

腕が折れている事を知らない母様が力いっぱい抱きしめたので激痛が走り思わず白目になる。


「え!?な、何?何?何?どうしたの?」


か、母様、お願い…離して…


あまりの痛さで口をパクパクさせていると、

「あのぅ、お嬢さん右肩が折れているので離してあげた方がいいと思います。」


青年は母様と私の激しい再開の姿に驚き戸惑いながらも、痛みのため口が聞けない私に代わって母様に忠告してくれた。


「は???え???ラルーの腕が折れてる?………うそ!」


そう言って私を離して肩の様子を見る母様。


母様。母様に抱きつかれてから離されるまでの間に私、死んだ父様が綺麗なお花畑の中で元気に手を振ってる映像が見えた気がする…


「…本当だ……。折れてる……。………………。

ラルー誰にやられたの?」


もの凄くニッコリ笑顔で母様が私に聞く。


か、母様。その前にお願い!!私に治療をしてぇぇぇ!

報復の前に治療を!!


「キャー−−−!

ラルーの腕が!腕がぁぁぁ!

ラルー、一体誰にやられたの?かわいいラルーにこんな仕打ちを…。ラルー、おばーさまが必ず敵をうってやるわ!」


おばーさま……。いつも冷静沈着なおばーさまだったらまず最初に治癒魔法をかけてくれると思ってました。

しかし、まず報復とは…。やっぱり母様の母様だわ。根っこは同じ血が確実に流れてる。


「ちょっとあんた!ウチの姉貴に何したんだよ!」


フィーダが敵意剥き出しで青年に迫る。


「フィーダ!違うの。この人は迷子になった私にフィーダ達を探す事を手伝ってくれたり、バカ親子から守ってくれたのよ」


私は事の顛末を母様達にざっと話した。途中何度も母様とおばーさまとフィーダがバカ親子をしばこうとしたがその度に私と青年が止めだ。


これ以上、危害を加えれば本当にバカ親子は、冥土送り決定だ!言動には凄くムカつくが、殺すなんて、絶対ダメ!


「僕が懲らしめておいたので、十分ですよ。2、3日は意識がはっきりしない廃人状態が続くと思いますので、後で警備隊に彼等を保護するように言っておきますから」


母様達の怒りを見て青年が柔らかな笑顔で告げる。


マジでこの人怖いわ……


しかしウチの家族は青年の懲らしめた行為に(特に廃人にしたという部分。2、3日だからね!2、3日!!)いたく感動し、次々と青年とハイタッチをしていった。


おばーさま!おばーさまもハイタッチですか!

つか、絶対に意味わからずに母様とフィーダの姿を見て真似しただけでしょ!



あまりの事にこの光景を受け止められません、私。


「本当に娘に良くしてくれてありがとうね。感謝しても仕切れないわ」


母様が優しい笑みで青年にお礼を言った。


「僕にも彼女と同じくらいの妹がいるから、一人ぼっちになってる彼女が心配になってした事ですし…」


「いいえ!貴方がいなければラルーが殺されてたかも知れないわ。本当にありがとう!感謝しても仕切れない。

あ、そうだ!!今度、貴方のお宅に伺って貴方のお父様とお母様に改めてお礼をさせていただくから、お名前と住所を教えてくれる?」


「お礼だなんて…。本当に結構です。こんな事、父に知れたら出しゃばることをするなと怒られてしまいます。お気持ちだけで十分ですよ」


「そんなぁ…。私の息子達が貴方みたいに女の子を助けたら、息子の事を凄く誇らしく思うけど。ねぇお母様?」


「ええ。親なら当然、息子の勇敢な行動はうれしく思いますよ。私からも心からお礼をいいます。孫を守っていただいて本当にありがとう!」


「僕の父は、残念な事に普通じゃないんです…。すいません。本当にお気持ちだけで十分ですから。それじゃ、僕はこれで!」

青年はその場から立ち去って行った。名前も名乗らぬ不思議な人だったな。自分の家族に、なるべく合わせたくない様子だったけど…


「あれ?ラルー、クラスに買ってもらった髪留めは?」

フィーダに突然聞かれた。


「あ、あれ…バカ母に踏み潰されちゃった……。凄く気に入ってたのに。あぁ、クラスに何て言おう」


「あのクソババァ〜!蹴り入れてやる」

フィーダが怒ってボー然としているバカ親子のもとに行こうとする。


「やめて!フィーダ!ムカつく親子だけど、今は廃人だって、あの人言ってたじゃない!

何もできない相手を蹴るなんて非常識よ!」


私は必死にフィーダを止めにかかる。母様とおばーさまに目線を送り一緒に止めてもらうように催促すると


「フィーダ、やるなら早くやっちゃっいなさい!」


「おばーさまは、後ろを向いていましょうかね。フィーダが今からする事は、おばーさま見えなくってよ」


母様、おばーさま…貴方達に頼った私が馬鹿だったわ!


「ダーメ!フィーダ!お願い、やめて」

私が体を張って止める


「あのぅ…」

ギャーギャー騒いでいた私達におずおずと誰かが声をかけた。


皆、その声の主を見ると、さっき去って行った青年がいた。


「言い忘れましたが、早くお嬢さんの右肩の治療をしてあげて下さいね。では、本当に僕はこれで…」


そう言って再び立ち去る。


腕の治療…。母様やおばーさまやフィーダを止めるのに必死で痛みを忘れてた!青年に右肩の事を言われ嫌でも意識が痛みに向けられる。


「いっっ!!!たぁぁぁーい」フィーダを止めるのに必死で痛めた腕を上げた為に更なる痛みが私を襲った。


痛みに悶えながら、ぼんやり去っていく青年の後ろを見やると空から、先程の見た鷹が降りてきて青年の肩に止まったのが見えた。



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