その7
「さて、では早速、君の兄妹達の身体的な特徴を教えてくれるかな?」
「身体的な特徴!?
えぇっと、兄のクラスは、金髪碧眼。弟のフィーダは、ダークブロンドで目は黒。
私とクラスとフィーダは、三つ子だから背丈は私と同じくらい。妹のラインは、肩までの長さの金髪で茶色の目。背丈は私の鼻くらいかな。」
身振り手振りで特徴を伝えると青年はニコリと笑った。
「よく、わかった。ちょっと待ってなよ。」
青年はピィーと口笛を吹いた。
すると、一羽の鷹が空から飛んできて、青年の肩に止まった。
「************」
よくわからない言葉で鷹に話しかけている。
何なの一体この人?!
すると鷹はコクリと頷き、再び空に飛んで行った。
一部始終を見続けていた私はポカンと口が開きっぱなしだったようで振り返った青年が私の顔を見て笑った。
「アハハ!凄いマヌケ顔してる。さて、これでしばらくすれば兄妹に会えるから暇つぶしに屋台でも見ようか?」
狐につままれたような気持ちを抑えて青年に促され屋台を見て回った。
「あ、あそこにおいしい、雲の綿飴が売ってる!凄くおいしいからご馳走するよ。買っくるからちょっと待っててくれる?すぐに戻るから動かないでね」
そう言うと青年は、足早に綿飴を買いに走って行った。
本当にいい人だわ。そう思いながら青年と綿飴が来るのを待っていると背後から甲高い声がした。
「貴方達に乱暴をはたらいた者は、この赤毛なの?」
なんなの今日は!?
人の事を赤毛赤毛と呼ぶなんて。厄日か?
ギロっと睨みながら振り向くと、さっきのバカ兄妹とその親類と思われるプラチナブロンドの女の人がいた。
なんで会いたい家族には会えず二度とお目にかかりたくないバカ兄妹に会うんだろう。きっと私の今日の運勢は最悪なんだ…
「そうよ母様、このハーフエルフが私達を馬鹿にしたのよ!」
バカ妹が意地悪そうな顔をして隣に立っている女に顔を向けた。
ってことは、この甲高い声の人はバカ兄妹の母親か。道理で意地悪そうな顔してるわ
「おい、お前の汚らしいハーフエルフの兄妹は、見当たらないな?もしかしてお前、一人なのか?さては、貧乏過ぎて捨てられたのか?ハハッざまあみろ!」
全くうざすぎるこの家族…
「スタンリード、およしなさい。ハーフエルフなんかに口をきくのは。貴方の価値が下がってしまうわ!」
なんなのよ!このクソ親子。いちいちムカつく言い方ができるとは、見下げた才能だわ。
まぁ、私も今日は言われっぱなしで我慢できる程、心の許容量超えてますので、あえて言わせていただきます。
「なんなんですか?いちゃもん付けてきたのは、そっちでしょ。これ以上、私に付きまとわないでくれますか?うっとおしいにも程があるわ。」
お馴染みのニッコリ笑顔で返す。
「まぁ、なんて下品な口の聞き方をするんでしょう。私達を辱めた愚かさを教えてあげようとしているのに。
あら?貴方の汚れた髪には似合わない髪留めなんてつけて。どこで盗んだの?」
バカ妹がほざいた。マジで蹴り倒してやろうかこいつ…
そう思っていると、バカ兄貴の方が乱暴に私の髪から髪留めををむしり取った。絶対髪の毛が何本も抜けた!
「痛!!何するのこのクソ男、髪留め返して!」
思わずグーでバカ兄貴を殴るとそれがクリーンヒットした。
金持ちは、いじめる事はあってもケンカも何もした事がないヤツが多いから避け方も知らない。
伊達に兄弟喧嘩で鍛えてはいない私の腕っ節は、並の男の子より強い!
バカ兄貴は、私に殴られ尻餅をついた。ざまーみろ!
ふっと不敵な笑みでバカ兄貴を見下ろしていると突然、強い衝撃を受け後ろに体ごと吹っ飛ばされ、背中から地面に叩き付けられた。
「クハッ…」
地面に背中をしこたま叩きつけた衝撃で少しの間息ができない。
「…!!」
いかん!!
こんなとこで倒れっぱなしだと何されるかわかんない!
なんとか上体を起こして前方を見るとバカ母が私を魔法で吹き飛ばした事がわかった。
「ハーフエルフごときが私の大事スタンリードに何をするの!この愚か者!殺してやるわ」
凄い剣幕でバカ母が怒鳴る。
子供の喧嘩に親がしゃしゃり出るか普通!つーか、肩が物凄い痛い!何これ!
今まで体験した痛さを遥かに超える激痛がして痛みでクラクラする。しかも叩き付けられた衝撃で口の中を切っており只今、口の中は絶賛鉄の味中で気持ち悪い。
そんな鉄の味を気にならなくなる程、尋常でなく右肩が痛い!どうしたのかと思い腕を見下ろすと、あらぬ方向に右腕が曲がっていた。
ええぇ!!う、腕が折れてる…。しかもバカ母、私を殺すってなんて物騒なの?本当今日は厄日って言うか命日になるの?
更にバカ母は、バカ兄貴がむしり取った髪留めを踏み付けて木っ端みじんにしてくれた。
殺す…。マジぶっ殺す…。
人の右腕折っといて、その上、クラスが私の為に買ってくれた大事な髪留めをよくも……。このクソ親子め。お前らに殺される前に殺してやる!
ゆっくり立ち上がり口の中の血を「ペッ」っと地面に吐き捨て口を拭う。このクソ親子、下町上がりを舐めんなよ…ぶっ殺す!
悪意を込めた念を貯めて親子にぶつけてやろうと集中した時
「お待たせ〜!ってあれどうしたの?えぇ!!口から血が出てるよ。大丈夫?髪はボサボサだし、服に土がついてるし、何かあったの?本当にどうしたの?」
いきなり臨戦体制から引き戻され、かいがいしく世話を焼いてくれる青年が現れた。
青年は、私の服に着いた土を払おうとして、服をパンパンと優しくはたく。叩く手が右肩に触れた瞬間
「ギャー!!いったーい!」私は悶絶しながら腕を庇ってしゃがみ込む。
頭が痛くなるくらいの痛さと熱さで意識がボーッとする。
さっきまも痛かったけど、怒りでアドレナリンが出てたらしく、応戦しようと思えるくらい痛みを我慢できてたけど、頼れる人が現れた途端、体は正直で痛みを全面的に感じるようになった。その上、折れた腕を軽く叩かれたら、そりゃ悶絶物ですよ。
「え!!腕が…折れてる…。ちょっと見せてみて!」
青年は私の腕を見ようとするが、悶絶中の今は体を少しでも動かそうとするだけで脳天に響く程痛いので、ただ首を横に振り「今は無理」とジェスチャーで伝えるのが精一杯だ。
「誰にやられた?」
青年は一瞬驚いた顔を見せたが直ぐさま真剣な顔をして私を抱き寄せた。