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その6

バカ兄妹との一悶着が終わり、気を取り直して、再び屋台の探索に回った。


人魚の屋台に立ち寄ると人魚が売っている真珠は驚く程大きくて綺麗だ。


ちなみに人魚さん達は大きな水槽が屋台の売り子側に用意してあって下半身は水に浸かりながら商売をしている。


すげぇ…。屋台を開く前の準備が半端なく大変そうだ。


「この髪留めラルーの綺麗な髪に似合うんじゃない?」


クラスが手に取った髪留めは小さな真珠をあしらったかわいい髪留めだ。


「あ、本当だかわいい!買っちゃおうかな。値段も手頃だし」


「いいよ。僕が買ってあげるよ。おばーさまから貰ってるおこずかいも持ってきてるからプレゼントしてあげる。

ラインには、このペンダントはどうかな?似合うと思うよ。」


さすが、クラス!さっきのバカ兄妹に言われた髪の色を卑屈に思わないように、さりげなくプレゼントを買ってくれた。

なんて、よくできた兄だろう。


私は、素直に申し出を受けクラスに髪留めを付けてもらい、ラインも小さな真珠のペンダントをフィーダに付けてもらった


「よく、似合うよ。ラルー」


「さすがクラスの見立てだな!ラルーの髪に凄く映える髪留めだよ。よかったなラルー。ラインもかわいいぜ。さすが俺の妹だ」


「「ありがとう」」私とラインは満面の笑顔でお礼を言った。


それから、サラマンダーの火の曲芸を見たり、ホビットの屋台に行ってみたりと楽しい時間を過ごした。


そうこうしているうちに、竜のパレードが始まりどっと人混みが押し寄せて来た。


「きゃあ!」


「ラルー、こっち!」

クラスが手を伸ばし、私を引き寄せようとしてくれるが人が間に何人も押し寄せ届かない。


私も一生懸命手を伸ばしてもクラスの手がどんどん遠くなり、遂に一人になってしまった。


ど、どうしよう…


人が多くて兄妹達の姿すら見えない。というか人の多さに増々押し出されてしまい、一体ここが何処なのかもわからない。


「クラス!フィーダ!ライン!」

大声を上げても、群集に掻き消されしまい、全く届かない。


どうしよう。どうしよう。どうしよう。


周りを見回しても、知らない場所だし、知ってる人もいない。

母様、おばーさま、クラス、フィーダ、ライン、カル!会いたいよー。


心細さでいっぱいになり、涙で視界がぼやける。

いやいやいや、ここで泣いても何にもならない。とにかく皆を探さなきゃ!


キョロキョロと周囲を見渡しながら場所を移動していくが全く見当たらない。


更に、小1時間くらい探し足がクタクタになったが、クラス達の姿を見つけらられない。


足が痛い…。ちょっとだけあの木陰で休んで、また探そう。

そう思って、大きな木の下に行き座った。


「みんな、どこ行っちゃったんだろう…」俯きながら独り言をつぶやいてしまった。


私、相当まいってるわ…


「ねぇ、君さっきから同じ所をグルグル回ってるけど迷子かな?」


いきなり声をかけられ上を向くと、人懐っこい顔をしたエルフの青年が立っていた。

年の頃は、私より少し年上かな?人間の年で言えば13、4才くらいの黒髪、青い眼だけど、エルフにはめずらしく、眼鏡をかけていた。


「いえ、休んでいただけですから大丈夫です。ご心配なく。」


さっきのバカ兄妹の例がある。ハーフエルフは純血エルフから蔑まれる傾向が高い。

(おじーさまも初めて会った時はそうだったし)

警戒するに越した事はない。


「そんなに警戒しないでよ。しばらく君を見てたけど、ずっと誰かを探してるみたいにキョロキョロしてたじゃない?家族とはぐれちゃったの?」


彼は私の前にしゃがんで目線を合わすと、警戒心を吹き飛ばすような優しい笑顔を向けた。


この人いい人かも?


いやいやいや…人さらいは、笑顔で近づいて言葉巧に相手の警戒心を解いて誘拐するって、フィーダの事件があった後、母様と父様が熱弁してたわ。

ダメ!!こんな言葉に流されちゃ!信じれるのは家族だけ!


「本当に休んでいるだけですから。家族とは待ち合わせをしているだけです。あら、時間だわ!では、私はこれで…」


笑顔でそう告げると足早に立ち去った。


いやぁー危なかった。しかしあいつのせいであんまり休めなかったなぁ。

いや、今はクラス達を探すのが先決!頑張れ私!

痛む足にムチを打ち、さらに兄妹を探した。



…。

………。

…………が………やっぱり見つからない。日も陰ってきている。母様達も心配してるかな?っていうか絶対に母様に怒られる!そっちの方が心配になってきた…


「ねぇ、やっぱり君、迷子でしょ!」


いきなり肩を捕まれ振り向くと、さっきの黒髪青年が心配そうな顔をして立っていた。


「つ、つけてたの?」

怖い、何この執念深さ!まさかのストーカー?

いや、私の顔ではストーカーはないか。


「プフ!(笑)

つけてるなんて、人聞きが悪いな。家族と待ち合わせなんていうからすぐに会うと思ってたけど、またグルグル同じ場所を歩いてたから、迷子だって確信しただけ。

顔色が悪いね。疲れただろ?

さっきね、天界人の屋台で空味の飴玉買ったんだ。食べる?

すんごく、おいしいよ。」


青年は雲のような生地でできている、布を取り出し、包み開いた。

すると中から、色とりどりの飴があり、それをこちらに差し出した。

見た事のない綺麗な色の飴で凄くおいしそう。そう言えば、お腹空いたわ。でも知らない人から物を貰うのってちょっとな…


飴を貰うか貰わないか躊躇していると、彼は、包んでいた布の中から1つ飴をつまんで口に入れた。


「うん、うまい!甘酸っぱくてうまいよ!夕日の味だね」


「え!夕日味!?

夕日味ってどんな味なの?

今、どの色の飴食べた?」


「このオレンジと黄色のグラデーションになったヤツだよ」


青年は飴を再びつまむと私の口に入れた。


「ん!!!……

おいしーい!凄くおいしい!疲れが吹っ飛んじゃう!」


あまりのおいしさにうれしくなり、ニコニコとしばらく青年と微笑んでいた。


はっ!!いかん。お腹空いてたのと、疲れと好奇心で頭回ってなかった…。私ってば、何知らない人から、飴貰って懐いてるの!バカバカ。


「ハハハ!君はクルクルと表情が変わる子だね(笑)別に僕は人さらいでも犯罪者でもないから安心して。」


「本当に?」


「家族の名誉にかけて誓うよ。それでも信じられないなら、命をかけてもいい。」


「…わかった。あなたを信用する。私はおっしゃる通り、兄妹とはぐれて今、迷子なの。

一緒に兄弟達探してくれる?」


「やっと信用してくれた!

信じてくれて、ありがとう。

かわいい女の子の頼みとならば断れないな。顔色も少し良くなってきた!

今まで心細かったんだね。もぅ大丈夫だよ。」


彼は笑いなが私の頭を優しく撫でてくれた。


この人、本当にいい人なのかも…

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