その36
「ラルー、林檎剥いたから、食べなよ。ほら、口開けて!あーん」
「……。あのね、クラス…。自分で食べられるわ。てゆーか、もぅ、私寝てなくていいくらい体力戻ってるし、こんな風に代わる代わる看病してもらわなくても大丈夫だってば…」
「ダーメ!ラルーは、すぐに無茶するから当分は、ベッドから出さないって、この前、家族全員一致の意見で決まったって言っただろ!いい加減、観念しろって…。はい、あーん」
クラスは、私のベッドの脇にある椅子に座り、母様譲りの有無を言わせない笑みを称えて、一口サイズにカットした林檎を無言で私の口まで運ぶ。
「はあぁ……………。わかったわよ……パリッ シャクシャク まぐまぐまぐ…ごくん」
ため息ともに林檎を食べた。
あの、薬作りで臨死体験をし、皆の暖かい励まし(?)のおかげで、無事復活できた私は、直ぐに薬を大量生産して、天国でセドリック先生に聞いた通りにナギ茶と一緒に薬を飲む事をマクロス医師に伝えようと、勢いよくベッドから飛び起き、家族を驚かした。
が、しかし、体が弱っているのは変わらない。
元気に起き上がった数秒後には、力が入らず、再びベッドにイーン!
仕方なく私はベッドに寝ながら家族の皆に指示を出し、自分の手足のように働いていただき、なんとか町の人々に行き渡る分の薬を作り、ナギ茶と一緒に飲むよう手紙を書き箱に入れた。
手紙と薬を受け取ったマクロス医師は、早急に対応をしてくれ、その結果、町の人々の病状は好転し、一人の犠牲も出す事なく、重体だった人も今では、日々回復に向かっている。
一方、私はベッドの上から皆に指示を出して、なんとか薬を送った後、家族からの厳重なる監視下(別名:軟禁)に置かれる事となり、ベッドから一歩も出ることなく療養の日々をかれこれ3日程送っている。
毎日、家族がつきっきりで看病(?)をしてくれ、フィーダに看病をされた時は、スタミナのつくニンニク料理を無理矢理食べさせられ部屋中ニンニクフレーバーで満たされた。
次の日、おばーさまに看病された時は、「病気の時でもオシャレ心は忘れてはダメよ!女の子は、着ている衣装で気持ちも晴れやかになるもの!これが本当の”病は気から”ね」と訳のわからない事を発しながら微笑み、これは無いだろうというフリフリ&ベイビーピンクのレースたっぷり特注ナイトガウンを着させられた。
そして本日、前の二人に比べると、素晴らしくまともなクラスの看病を受けている。
ただねぇ…しっかり寝たし、食べる物もちゃんと食べているから、もう私、元通りになったってゆーか、むしろ、太ってんじゃね?
だってなんだか今着ている寝巻が前よりキツイような…特にウエストあたりがさ…
ヤバイ…このままだと確実にフォアグラになるガチョウの人生を歩んでしまう…。
なんとかせねば!
「ラルー、顔が悪い顔になってるよ!良からぬ事考えてるんだろ?今」
「え?そ、そんな事ないよ!悪い顔って生まれてからずっとこんな顔よ!悪い顔なんてクラス酷いなぁ〜!アハ、アハハ〜」
「ラルーやフィーダが考えてる事ぐらいだいたいお見通しだよ?何年兄弟やってると思うのさ。観念して、もぅ1日くらい、ゆっくりしなさい。」
チッ…クラスを出し抜くのは、難しいわ。
「ほら、また悪い顔してるよ!しょうがない妹だな、全く。そんな娘には、マクロス医師からの手紙あげないよ!」
「え!手紙来てるの?ちょっと早く教えてよ!クラスの意地悪!早く見せて」
「はいはい…。仰せのままに」
クラスから引ったくるように手紙を受け取りすぐに手紙に目を通した。
ラルー=スエル様
お加減はいかがでしょうか?
あなたの事だから、寝るのも飽きた頃ではないでしょうか(笑)?まだ寝てないといけませんよ!
こちらは、皆さん順調に快方に進んでいます。
1番症状が重かったスミス家の末っ子のミニットも顔色も良くなり、元気にご飯を食べています。
これも全てラルーさんのおかげです。私一人では、救えなかったでしょう。改めて村の皆さんを代表してお礼を申し上げます。本当にありがとう。
そうそう、話しは変わりますが、ジャンヌさんからラルーさんが作られたミントキャンディをいただきました。
ちょうど喉がイガイガしていたのですが、一粒舐めただけで喉の違和感が無くなり、非常に驚きました。
良ければ、今度作り方を教えてください。
早く元気になられて、あなたの元気な顔を見るのを村の皆さんが首を長くして待っていますよ。
では、また手紙を書きます。
マクロス医師!優しいわぁ!村の皆も元気になって本当よかった!
暖かいマクロス医師の手紙は、ほぼ毎日のように来ており、私も毎日が待ち遠しい気持ちになっていた。