その35
=ラルーの部屋=
天国から無事帰還できたみたいで、少しづつ、意識が体に染み渡っていく。
しかし、まだ体とうまく合致していないので意識は、あるが体が動かせない。なので、当然ながら目も開かないので気配と雰囲気と声で自分の置かれている状況を認識するしかない。
今、私ベッドに寝かされてるんだ。ん?周りの声から察すると、皆が私を取り囲んでいるみたい。
ゴメンね、心配かけて…。
多分、もう少ししたら体が動かせるからね!
「ちょっと、息してないんじゃないの!」
母様してるよ私!ほら、耳を澄ませば、スースー言ってる私の鼻息が聞こえるでしょ?
「オフクロ、息はしてるって」
ナーイス、フィーダ!
「じゃあ、なんで目を覚まさないのよ!」
だから、ちょっと待ってて、もうすぐ意識と体が完全に合致するからさ、ゴメンね…母様。
「ラルー姉様、もしかして、このまま死んじゃうの…?」
死なない、死なないから!
「ライン、大丈夫だよ。今ラルーは気を失ってるだけだから」
さすがクラス!頼れる兄様だわ
「クラス兄様…でも…」
ラインも、ゴメンね、大丈夫だからね。
「く、クラス…ラルー死んじゃうのかな?俺、そんなの嫌だよ!…ラルー!死ぬな起きろ!起きろぉぉぉ−!」
ちょっ、フィーダ?何、あんたが動揺してるのよ!
え?うぉぉぉ!寝てる人間を揺さぶるな!頭が揺れて、気持ち悪い!!揺さぶりの力強さとスピードにまぶたがめくり上がるぅぅー。
「ちょっと、フィーダ何してるの?ラルーを揺さぶったって、なんの反応もないじゃない。見なさい、白目になってるでしょ!可愛そうに…。だからやめなさいって!!こら、手を離しなさい!」
はぁはぁ、死ぬかと思った。嫌ぁ!揺さぶられすぎて、私よだれ出てる。だ、誰か拭いて!
「だって、オフクロは、ラルーがこのまま死んでもいいのかよ!」
だから死なねーよ!むしろ生き返ったんだよ!バカフィーダ!
「………。良いわけないでしょ!!ラルーが、ラルーが死ぬなんて…。」
か、母様?母様?落ちついて!ね、私大丈夫だから!しばらくそっとしてくれたら、起きるからさ!
「あぁぁ、どうしよう!!!ラルー!(バチン)ラルー(バチン)起きなさい!母様の声が聞こえる?早く目を覚まして!ラルー!」
母様、やめて、痛い。痛いってば!ね、痛いから!痛ーい、殺されるぅぅ。
「エルザさん、やめてください!ラルーのほっぺたが腫れ上がってしまいますから、これ以上は…」
な、ナイス…ベイル。ありがとう。再度、父様と会うとこだったわ。つーか、ほっぺが燃えるように痛い…。
「ベイル様…では、どうすればいいの!ラルーが死んじゃったら、私生きていけないわぁぁぁぁぁ(泣)」
母様…。心配してくれてありがとう。本当にありがとう!だからもうビンタしないで…。
「エルザちょっと、どきなさい!」
おばーさま!!
「ラルー!新しいドレスが出来たわよ!ねぇ、ラルー凄く綺麗なドレスよ!袖を通してみたいでしょ!ね、いい子だから、目を開けてよく見てちょうだい!」
!!、×○&〜∀*・□……!!!!!
「アビゲイル、そんなにドレスをラルーに近けると、ラルーの息が出来ないからやめなさい!」
ハァ、ハァ、こ、殺される…。私、父様と再会するのも近いかも。
「だって、あなた大事な孫娘が…うぅぅっ(泣)」
おばーさま、ゴメンなさい。すぐに起きるから泣かないで!そして、そのドレス(凶器)は早くしまって下さい。
「ラルー姉様、目を覚ましてぇ!僕に薬のこと教えてくれるっていったじゃないかぁぁ!えーん!」
カ、カル!近い、近すぎる!カルの柔らかほっぺが鼻と口に押し当てられて、い、息…できない!さっきのおばーさまので酸欠になってるのに、あんたが…と、とどめを・・・さ・す・・の・・・?
恐ろしい…………子……。
「カル、ラルー姉様を放しなさい。気持ちはわかるけど、カルに潰されてラルー姉様が痙攣してるから…」
ぷはぁー!ハァハァハァ…シャランありがとう。つーか、洒落にならん、これ。
殺される!早く起き上がらないと確実に家族から息の根止められる!はやく体うごけぇぇ
「シャラン姉様…だってぇ、、ラルーねえざま、死んじゃ、やだぁー」
「ちょっと母様、おばーさま、フィーダ、ライン、カル…、ラルーは今、息してるんだし、ちょっと離れようか、このままだと皆に押し潰されて、確実に『死んじゃう』からね…。」
クーラースー!
的確な指摘ありがとう!皆お願いだからクラスの言うことを聞こうね!
「「「「「死んぢゃ嫌だー!!!」」」」」
クラスの『死んじゃう』という言葉に反応した愛すべき家族が私に群がり、揺さぶられ、抱きつかれ、叩かれ、ドレスを覆いかぶされ、潰されて、収集がつかなくなったのは言うまでもない。
しかし、それまでの私を死なせないような行動(プチ虐待?)のおかげで、生命の危機を感じた体が意識と合致し無事、皆の前で「苦しいつーのー!!死なないから、離れて!」と、怒鳴りながら起き上がる事ができた。