その30
文献と薬の反応をガン見しながら2日目。ようやく病原菌の正体がわかった。
キアヌリア菌という、南国の植物がかかる病気で普通は、キアヌリア菌が着いた植物は枯れてしまうが、林檎はもともと寒い地方で栽培する植物だったが南国でも収穫できるように、色々な林檎の種類を掛け合わせ、更に農薬なども使った為に林檎自体にはなんの変化もないが実の中にしっかりと菌を蓄えていたらしい。
よくよく調べていくと、キアヌリア菌は、加熱には比較的弱いらしく、その証拠に林檎を生で食べた者が激しい食中毒の症状が出たが、加熱したものを食した者は、軽い症状で済んでいた。
早速、病原菌がわかった事、治療薬を作る為に、患者の血液サンプルが欲しい事をメモに書き箱に入れる。
=1時間後=
不眠不休で丸二日いたので、うたた寝をしていたら、ガチャと箱から音がし、飛び起きた。
「はっ…寝てた。いけない!」
急いで箱を開けると手紙と血液サンプルと古い文献が三冊そして小さな箱が入っていた。
早速、手紙を開ける。
゛ラルー=スエル様
この短時間の間に病原菌を発見できるなんて、さすがセドリック先生が最も優秀な弟子だと言っていただけありますね。
言われた通り血液サンプルを入れておきます。また書庫にキアヌリア菌の事が載っていた文献を入れておきます。こちらでも薬草で薬を配合しようと思いましたが、必要な薬草が無かったので出来ませんでした。すみませんがよろしくお願いします。
追伸:貴女の事だから寝る間を惜しんで治療薬を研究しているのでしょう?
疲れていませんか?良ければキャラメルを入れておきますので食べて下さい。糖分は、疲れに効きます。゛
「アハハ…キャラメルね。」
そう言って小さな箱の中から一粒取り出し口に入れる。食事をあまり取っていなかったので甘さが口いっぱいに広がる。
「あまーい!……ムグムグ……。よし!チャージ完了!もぅいっちょ頑張りますか!」
早速送られて来た文献を読むとキアヌリア菌の特効薬として、オペーク草という断崖絶壁に生える薬草が必要だった。
確か昔取りに行ったが、軽く死にそうな思いをしたっけ
オペーク薬は、切り立った崖の頂上にあった気がする。
昔書き綴っていたノートを見て確信した。しかもオペーク草は元々生えている所から移動させると二日で枯れてしまうという鮮度が命の薬草だ。
「女は度胸よ!ラルー。」
自分を奮い起こすように言い聞かせながら崖登りができる格好に身支度を整えた。
部屋を出て母様とおじーさまの執務室に行き、オペーク草を取りに行く事を伝えようとして扉をノックした。
「はい、どうぞって・・・ラルーその格好!どこか行くの!?」
「母様、聞いて、病原菌を突き止めたわ!今から薬草を取りにちょっと行ってくる。」
「あんたロクに寝てないんだから無茶よ!クラスかフィーダが仕事から戻って来たら代わりに行ってもらいなさい。」
「あら、あの二人が私より薬草に詳しいの?多分、私この国の中で1番薬草に詳しいわ!だから、母様一刻を争うの!お願い行かせて」
ニッコリ微笑みながら母様に言い切った。
「では、ペガサスに乗って行きなさい。」
おじーさまが言った。
えぇ!ぺ、ペガサス…おじーさまペガサス好きだわね…。でも、私じゃあれを乗りこなせないから…
「おじーさま、ごめんなさい。無理だわ、ペガサス無理!怖いもん。」
ぶんぶんと頭を振り拒否の体制に入る。
「そうか…ラルーはペガサス苦手か。……そうだ良いものがあるからちょっと待っていなさい」
そう行って奥の小部屋に消えて行った。
はて、何を出してくれるんだろう?
=待つこと5分=
「あった、あった!ラルーこれに乗って行きなさい。」
「そ、それって…」
「空飛ぶ絨毯だ!昔、南方から行商に来た者が我が家に来てな。エルザがえらく気に入って、散々ねだられて買った代物だ!」
「懐かしい〜昔よく乗ったわ」
なんでも、ありは未だに健在っすね…
「子供でも乗れる物だからラルーでも大丈夫だ」
そう言いながら庭に出て絨毯を広げた。
所々虫食いがあるが、フワッと浮いて一定の位置で止まる。
「魔力のある者なら念じるだけで動く。さぁ乗りなさい!」
「・・・ねぇ、大丈夫なのコレ?」
「大丈夫よ!楽しいわよー!これ」
おじーさまと母様が満面の笑みでさぁ乗れと促され仕方なく乗って見る。乗った瞬間フワッと沈むが次の瞬間には低反発な弾力性があり、意外と体が安定する。
これなら、私でも行けるかも!
高くと念じるとクイッと1M程上がった。
「母様、おじーさま、それでは行ってきます!明け方までには戻れると思うわ!」
「気をつけてねー」
もっと高く東へ飛べと念じるとおじーさまと母様の手を振る姿が段々と小さくなっていく。
「目指すはリキン山脈!急いで飛んでね」
そう絨毯に話し掛けると更に勢いを増して元気よく絨毯が速度を上げていった。