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その25

「母様…私の事何て言ってる?」

おずおずとフィーダに聞くとニッコリ微笑み何も言わない。


怖い!すんげー怖いんですけど!無理、会うの超怖い!


「ま、みんなラルーの事が心配なんだよ!年末くらい帰って来いって御達示が出て俺が連れに来たってわけ」


「そう簡単には店を閉めるわけにはいかないわよ!病気で困ってる人がいつ来るかわからないし・・・」


「そういうと思って、いいもの持ってきたんだ!はいコレ」


そう言ってフィーダが小さな箱を取り出す。


「何よコレ?」


「この箱には、もう1つ同じ箱があって、時空を繋ぐ魔法がかかってるから、この箱に紙で何が欲しいって書いておくと、もう1つの箱に繋がって紙を取り出せるようになってるんだ。その紙を見て薬を作って箱の中に置いておけば、こっちの箱に薬を届けられるんだよ。凄いだろコレ!ベイルが作ったんだぜ。すんげー複雑な魔法がかかってるらしくて3ヶ月くらい費やしたって言ってた」


「ベイルが!?」


「あいつ、ラルーの事となると昔から目の色変わるからな…。これ作るのも、ろくに寝ないで作ったみたいで、出来上がった瞬間に落ちてたもんな。」


「やめてよ、そういう言い方。ベイルには、シャランがいるでしょ!」


「あいつ、シャランの事は妹としか見てないぜ!目下、王様とその事で言い争いが絶えないみたいだし…」


ドキンと胸が高鳴った。いつからだろうか…ベイルの存在が特別になったのは。ベイルとシャランは、将来が約束されているのは周知の事実なのに、気がつくとベイルの事を目で追っている自分に嫌気がさした。


シャランは、うちに来てから少しづつだが成長をし、ベイルが成人した時には調度、見た目が10才くらいになっていた。シャランの成長に驚き喜んだ王様がもう少し、彼女の成長を待ってから王宮に来させる事にし、まだサルン家で家族と共に生活をしている。それからしばらく会ってないが、今では美しいお嬢様になっている事だろう。


私は、シャランがいつ王宮に呼び出されベイルと結婚をするのかを毎日ハラハラしながら過ごしていた。そんな生活が嫌になっていた時にセドリック先生の事を知り、少しでもベイルから離れられたいという気持ちもあって、人間の町に来た。


もちろん、薬学が好きで極めたいと思ったのも本当。多分、色んな意味でタイミングがよかったんだろうな…。今では、この生活に大満足だ!


「んじゃ、ラルー!さっさと支度して帰るぞ」


「えぇ、今から?無理よ!今やってる研究を止めるのも、すぐには無理だし、箱の事だって町の人に言っておかなきゃ!あと、帰ったら、箱の前で注文が来る事を待つ暇なんて無いだろうから、必要な薬を作り置きしておかないと…」


「ブハッハハ!ラルーは昔っから、真面目だな。そう言うと思ったよ。だから俺が来たんだって。ホラ店番しといてやるから、お前はやらなきゃならない事をやって来いよ!」


ニヤニヤ顔のフィーダが私を面白そうに見下ろす。


テメー調子に乗りやがって…

目にもの見せてやる。


それから、フィーダでも扱えられる作り置きの薬の説明をした。

「それじゃ店番よろしくね、フィーダ!大好きよ」

そう言って、フィーダに抱き着く。ただし全体重はフィーダの片足の上。


「イぃッッッタァー」


「じゃあ姉様は、やらなきゃならない事をやるために、店の裏に引っ込むけどなんかあったら言いなさいね」


悶え苦しむフィーダを後にして、店の裏の研究所に引っ込んだ。よっしゃ!報復成功!



=6時間後=

「あー疲れた!ラルー、夕食にしよーよ」


「わかった!もうちょっと待ってて!あ、ドアのノブに本日閉店の看板かけといて!」


「ヘイヘイ…人使いの荒さはオフクロ譲りだな、全く。」


フィーダが渋々ドアノブに看板をかける。まぁ、閉店と書いていても急患の場合は、ドアベルを鳴らしてもらうように看板の下に書いてあるけどね。


私は、研究を一旦ストップするための作業を終えて、大食いのフィーダの為に夕食を作っている。


「出来たから、こっち来て」


「はぁー腹減った!おっ上手そうだな!いただきまーす!ん!これめちゃくちゃ美味い!これは何?」


「それは、ここの名物料理でピコナっていう麺料理よ」


「へぇー!初めて食ったけど、スゲー美味いよ!」


「んじゃ、これも食べて見てよ!肉団子だよ!」


まぐまぐまぐ……「う、うっめぇー!これクラス達にも作ってやってよ!すっげー喜ぶから」


「あら本当?うれしいわ!これも食べてみて」


フィーダの美味しそうな顔を見てると、久しぶりに自分以外の誰かと食事をしている事実に気がつく。

もともと、料理を作る事は大好きだったから、先生が生きてた時は、先生の為にご飯を作り、一緒に食べていたけど、一人ぼっちになってからは、自分一人の為に、料理を作る事が面倒で、朝は果物とコーヒーで軽く済ませ、昼は朝作ったサンドイッチを食べながらみ店番をし、夜は研究や薬作りに没頭して、食べない事が多かった。


だから、久しぶりの来客が嬉しくてテーブルいっぱいの料理を作ってしまったが、フィーダが片っ端から平らげていく。


「ラルー、お代わりある?」


「あるけど、あんたのお皿に山盛りに持ったから、、少ししかないわよ!ちょっと待っててね」


お皿を持って席を立つと顔が綻んでいる自分に気が付く。


(こうして家族が集まって食事をする事がこんなに楽しいとは思いませんでした)


ふと昔、ベイルが言った言葉を思い出す。あの時は、よくわからなかったけど、いまでは痛い程わかる。当時のベイルは、今の私よりも幼かったのに、もうそんな事を知ってしまっていたと思うと胸が締め付けられた。


「ラルー!まだ?早くー」

ダイニングでフィーダからご飯の催促の声がとんで来る!


人が感傷的になってる時にあの男は……


「ちょっと待ってなさい!この食いしん坊!!すぐ行くわ!」


「なんだよ!怒るなよ〜。ラルーも一緒に食べよ!」


甘い笑顔でフィーダが見つめて来る。

ムカついが、ついほだされてしまう。


「別に怒ってないわよ!はい、お代わり。んじゃ、私も食べよっと!・・・ってアンタ殆ど無いぢゃん!」


「あ、うまかったからつい・・・。良ければコレ食べる?」

と、さっき渡したお代わりのシチューをくれようとするが、それも1/5くらいしか残っていない。


「こんのー食欲魔人め!せっかくデザート作ったけどフィーダにはあげない!」


「そんなぁ、ラルー姉様!優しい優しいラルー姉様お願いだから、デザート取り上げないで」


上目遣いのキラキラ眼差しで見つめられると無視できない。


仕方なく作ったケーキを出して お茶をいれている間にフィーダがワンホールの7/8程、食べていた。

勿論、ボコボコにしてやったのは言うまでもない。


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