その24
ここから新章に入りまーす!ラルーも大人になりました。
「ラルーちゃん、おはよう!
今日は、頭痛の薬を貰えるかしら?」
「あら、ジャンヌさん。またお祖母さんが?」
「こう寒いと、どうしてもね・・・。ラルーちゃんの薬は、よく効くからさ!」
「いつもありがとうございます。風邪が流行ってますから、ミントで作った喉飴も入れておきました。」
「あら、ありがとう!これ喉がスッキリして私大好きなの。いつも悪いわね。はい、お金!
あ、そうだ!今度ケーキ作ったら持ってくるね」
「ありがとうございます。ジャンヌさんのケーキほっぺた落ちるほど美味しいですもんね。楽しみにしてます!」
カランカランとドアに付けたベルが鳴りお客様が帰って行った。
さて!次のお客様が来るまでパッとお昼でも食べちゃおうかな!
お茶を入れて、朝作ったサンドイッチを広げて一口食べる。パリっとしたレタスとハムのジューシーな味わいがなんとも言えない!
「っんんまい!」
店の裏で一人、モグモグとサンドイッチを食べているとカランカランとお客様が来たことを告げるベルがなった。
「ホァーーヒ!フグ、ヒキマフ」
口の中の食べ物をお茶と共に飲み下して店に出る。
「お待たせしました!今日はどう言ったご用件……ってフィーダ!?なんでここにいるの?」
「なんでって、5年ぶりに会ったっていうのに冷たい姉貴だな、ラルー!今日行くって梟に手紙付けて出しておいたけど見てないの?」
「見てないわ!どうせ、フィーダに似て道草してるんぢゃないの?」
私はそう言うと久しぶりに会うフィーダにギュッとハグをした。
「久しぶりのラルーの匂いだ…」
フィーダも私の肩に顔を埋める。「お前、男できてないよな?」
「はぁ?何言ってんの?バッカじゃない?」
「その分だと出来てないんだな!よしよし!」
カラン、カランと再びドアが開きベルがなった。
「ラルーちゃん、ステフが切り傷をしちゃって!消毒薬と塗り薬を…って、あら?あらら?いやだわ、私ったら間が悪かったわね、出直すわ…」
「え!あっスミスさん!違うんです。弟なんですよ、これは」
「え?弟さん?あら、やだ、てっきりラルーちゃんのいい人だと思っちゃったわ!あら、弟さんいい男ね!私があと20年若ければ言い寄ってたわよ!」
「何をおっしゃいますか、マダム。今も充分お綺麗ですよ」
フィーダのマダムキラースマイルがスミスさんに炸裂し、舞い上がったスミスさんは、消毒薬と切り傷の塗り薬の他に風邪薬と腹痛の薬も買ってくれた。
「あんたね…その偽紳士面するのやめなさいよ。」
「これで、ラルーの店の薬が少しでも売れるんだから恩に着ろよ」
「うちの店は細々とだけど、ちゃんと売れてるんだから大丈夫です!」
「でも、まさかラルーが人間の町で薬屋やるなんてな…未だに信じられないよ」
フィーダがまじまじと私を見つめながら遠い目をして言う。
サルン家に私達が転がり込んだでから今年でちょうど50年になる。
おじーさま、おばーさま、母様に愛情たっぷりに育ててもらい興味のある事は、なんでもやらせてくれた。その中で私の心を鷲掴みにして離さなかったのが薬だった。
いやいや、違いますよ!やばい薬とかではありません。
薬草や魔法を使ってできる病気治療の為の薬です!
何と何を配合するとどんな症状に効くとか考えるだけでたまりません!
薬学に没頭した私は、パチーノの中の薬学の本を読みあさり、薬学の先生の弟子になり薬剤師になった。
おじーさまが薬学に没頭した私の為に薬屋を町に作ってくれて晴れて薬剤師としてデビューしたが、これまたハーフエルフと言う事で私の作る薬は、一向に買ってくれるエルフはいなかった。
そんな時、人間の町に今まで考えられないような薬の配合で多くの人を助けているセドリック先生という人がいるという噂を聞きどうしても会って教えを請いたくて、なんとかおじーさまと母様を説得し、1年だけ人間の町に行ける事になった。
セドリック先生は70過ぎのおじいちゃんで、初めは私の姿と生い立ちに驚いたが、熱心に薬学の素晴らしさを語る私に根負けをし、弟子にしてくれた。
セドリック先生は、おじいちゃんと思えぬ程、日々研究に熱心に取り組むと共に町の人々から薬屋として絶大な信頼を得ており、遠くの町から薬を求める人達も少なくなかった。
しかし、先生の弟子になってちょうど一年が経った朝、いつものように先生を起こしにいくと先生は、安らかな寝顔で冷たくなっていた。
もともと身寄りが無かった先生は、私に財産と薬屋を譲るのでどうか自分の意思を継いで多くの人を助けて欲しいと遺言書に書いていた。
そこから、おじーさまと母様とおばーさまを三日三晩説得し、現在サルン家を離れ薬屋として人間の町で暮らしています。
とにかく、町の人や遠方からくる人が困らないように常に店は開けているので、実家に中々帰れず家族に会わなくなって5年が経っていた。