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その23

「「「ベイル王子!?」」」


「さすが三つ子だね。息ピッタリだ!」


私達は、慌てて膝をつく。


「あ、そうゆうの王宮で無いところでは、やめてよ!王子って呼ぶのも、ベイル様って呼ぶのも禁止ね!」笑顔で王子が言う。


「え…、じゃあ何て呼べばいいんですか?」


「ベイルでいいよ。それに敬語も王宮以外では禁止ね!シャランに対して兄弟みたいに接してくれてるなら、僕とは友達として接してくれないかな?」

ベイルが上目遣いで聞く。


「でも・・・」


「ダメ?かな・・・」

とても悲しい顔で王子がうなだれ捨てられた子犬のような目で私達を見る。


ズキューン

なに、この罪悪感は?

やめて、そんな目で見ないで〜!クラスとフィーダの顔見ると同じく罪悪感に苛まれている顔をしている。三人で顔を見合わせコクリと頷いた。


「わかりました・・・いや、わかったよ、ベイル」


私がこう言うとベイルは満面の笑顔になって私を抱きしめた。


「ありがとう、ラルー!」

「うきゃ!」


ち、近い…近いっつーの!


「コ、コホン。ベイル!ラルーから離れて!ラルーが困ってるから」

クラスが間に入ってベイルを止めてくれた。


「え?あぁごめんね。嬉しくてつい・・・」


「それより、なんでウチにいるの?」


「月に一度シャランの様子を見に行くって父上と約束してるんだ。あれ?サルン伯爵から聞いてない?

さっきシャランの様子を見たけど、文字を書くのに必死で僕の事なんて眼中になさそうだったから、読み書きが終わるまで君達の剣の稽古でも見てきたらって君達のお祖母様に言われてね。」


「そうだったんだ。」

クラスが思わず言った。


「ねぇ、僕もしばらく剣を握ってなかったから一緒に稽古していいかな?」


「え!ベイルが?だってベイル相手に怪我させたら、王様黙ってないよ!」


「大丈夫だってフィーダ!君らより剣を扱い慣れてるから、昨日、今日始めたヤツには負けないよ!」


カラカラと笑うベイルに対し私達の闘争心に火が付いたのは言うまでもない。


やってやろーぢゃない!



カン、カンカーン!木刀が打ち合う甲高い音が響き渡る。


私が上段から振り下ろした木刀をベイルが片手で振り払う。返す刀で足を振り払おうと、下段から木刀を振り上げるとベイルがヒラリとジャンプをし、ギリギリの所でかわす。


「ハァハァ、ラルー!やるね!」


「ゼーゼーゼー、そ、そっちこそ…」


ベイルは、最初にクラスと、次にフィーダと手合わせして、ことごとく打ち負かせているが、流石に三人

目ともなると、息があがっている。が、散々打ち込ませられ続けている私の方がフラフラだ…


しかーし、絶対に負けない!


木刀の切っ先をを地面にあてながら、振り上げて土をベイルに浴びせた。不意を疲れたベイルの目に土が入り、怯んだ拍子に上段から木刀を振り下ろす。


もらった!


そう思った瞬間にベイルが私の目の前に移動し、私の木刀を片手で掴み、もう片方の手の中にある木刀を私の首に宛てた。


「引っ掛かった!本当は、土は目に入らなかったんだ」


「騙したのね?汚いわよ」


「ラルーだって汚い手を使ったからお互い様だよ!」


ベイルは、肩をすぼめて笑いながら答えた。


「次、僕と手合わせして!」

「クラスずるい、次俺としてよベイル!」


「ハハハ!君達は、本当に負けず嫌いだね。それじゃ順番ね。ラルーの前にフィーダとやったから、今度は一回まわってクラスとね!」


「貴方達、ベイル様が疲れてしまいますよ。今日はこれまでね。トラック先生、ありがとうございます。ベイル様シャランのお勉強が終わりましたので、皆でお昼にしましょう。」


いつからそこにいたのかわからないが、おばーさまの鶴の一声で私達は、昼食を食べに食堂へ行った。


「ベイル!なんでウチにいるの?」

嬉しそうなシャランがベイルに飛びつく。


「ウチか…。そうか、そうだね。シャラン、大切にしてもらってるんだね」

優しい顔でベイルがシャランの頭を撫でる。


「うん!シャラン家族ができたのよ」


「そっかぁ、よかったね」


「うん!一緒にご飯食べよう」



ウチの昼食は、ある意味戦争だ!


「クラス!サラダのお皿取って」


「カル!パン食べなさい」


「いやぁなの」


「おかわり!」


「フィーダ兄様、取らないで!」


「お口が動いてないよ、ライン」


「お父様、さっきの件なんだけど…」


「あらあら、ラルー!豆だけ避けて!美容に良いから食べなさいね」


「シャラン!口からまたご飯こぼれてるわよ」


「お前達、そんなに急いで食べると消化に悪い!ゆっくり30回は噛みなさい」


「「「「「「はぁーい」」」」」」



ウチのせわしない昼食風景を目の当たりにしたベイルは、始めはびっくりしていたが、すぐにクスクス笑って言った。


「この家は、楽しくて居心地がいいですね。シャランが馴染むのもよくわかります。」


「あら!うるさかったですか?お恥ずかしいところをお見せして、すみません…」

苦笑しながらおばーさまが言った。


「いえ。王宮ではご飯を食べるのも何をするのも一人の事が多いので、こうして家族が集まって食事をする事がこんなに楽しいとは思いませんでした」


「・・・こんな食事でよければ、いつでもいらして下さい。」


「そうだよ!毎日来て、手合わせしようよ!」


「サルン伯爵、フィーダ。ありがとうございます。是非伺わせていただきます!」


心底嬉しそうにベイルは言うと、ゆっくりスープを飲んだ。



それから、ちょくちょくとベイルがうちを尋ねてくるようになった。シャランに会いに来ると言うよりは、私達兄妹と遊ぶのが主な目的で。


特に皆がハマったのは、ベイルが教えてくれたチェスだった。意外とフィーダが1番強く、ベイルとフィーダの攻防は三日間続く程、白熱した戦いだった。最後は、お互いにボロボロになって、なんとかフィーダが勝ち「い、イェーイ…」と一声あげてその場で白目になって寝てしまった。


こうして、私達は新たな家族と友達と共にスクスクと成長していった。

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