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その21

=王宮の謁見の間=


王、王妃、王子、サルン伯爵が接見の間に入ってから、かれこれ1時間程シャランについて話し合っている。


「……ふむ、話はわかった。

しかし…サルン伯爵には悪いが、その・・・そなたの孫は、人間との間にできた混血だとミスティーク公爵から聞いている。


もちろん、サルン家はパチーノにおいて代々王家に忠義を持って働き、功績をあげている事は、十分承知をしているが、意地汚い人間の血が入ったハーフエルフとシャランを共に生活させるのは、どうかと思うが…。」


「父上!!」


ハーフエルフを蔑む王の言葉に思わず、王子が声を上げる。


ビキッッッ!!


大きなな音に王に王子が振り返ると、サルン伯爵の立っている床がひび割れていた。


「「サ、サルン伯爵?」」


「失礼致しました。私とした事が今、修復を致します故…」

無表情でサルン伯爵が手を翳すと一瞬で床が元通りに戻った。


サルン伯爵の表情からは、全くわからないが静に怒っているのがドス黒いオーラで十分にわかり、一同押し黙る。


「「「・・・・・・・・。」」」


いつも、感情があるのか?と思う程、冷静沈着なサルン伯爵が、一瞬ではあるが、感情を暴走させてしまうとは…。凄いジジ馬鹿ぶりだな!!


思わず、マジマジとサルン伯爵を見てしまう。

「王子どうかされましたか?」


「いぇ…。何も…」


サルン伯爵は、コホンと1つ咳をすると王を見つめて言った。


「王がご心配なさるお気持ちはよくわかります。私も孫達に会うまでは、ハーフエルフに対して同じ気持ちを抱いておりました。

しかし、我が孫達は、祖父の私から見ても素直な子達ばかりです。今日も一人ぼっちのシャラン様を見て心配し、保護したのは孫達なのです。


孫達を見ていると、毎日の生活で兄妹達同士刺激をしあい成長をしています。

兄妹達の中で負けたくない、追いつきたいという気持ちから、昨日できなかった事が今日できるようになり、次の日はもっと多くの事ができるようになって、大人の私達が日々驚かせられています。


恐れながら、ここ王宮では、うちの孫のような子供はおりません。孫達と一緒に生活する事は、シャラン様への良い刺激に必ずなるかと思います。」


「うーむ・・・しかし・・・・・・・。」


「私は、サルン伯爵に賛同致します。」


王妃がニッコリ微笑みながら発言した。


「サルン伯爵は、実直な方ですわ。その方の自慢のお孫様達と一緒に育つ事は、あの子にとっても必ずプラスに働くはずです。王宮にいても、私達は公務が忙しく、あの子にはそんなにかまってあげることは出来ないわ。少しでも可能性があるのであれば、私はそれに賭けてみたいです。ね?あなた。」


王妃は、少女のようにたおやかに微笑みながら首を傾げて王をみる。


母上のお願いポーズが出た!!!!!・・・これは十中八九決まる!


「……う、………ううぅ。。。はぁー。仕方ない…サルン伯爵、シャランを受け入れてくれるか?」



「はい。喜んでお受けいたします。しかし王。前もって申し上げておきますが、私や、妻や娘は、シャラン様を特別扱いは致しません。自分の家族と思って接しますので、叱らなければいけない時は孫達と同じように叱ります。その点は、ご了承願います。」


「わかった。しかし、シャランが新しい生活の中でベイルの事を忘れる事が無いように月に一度ベイルがサルン家を訪れる事としよう。よいか?ベイル?」


「ありがとうございます。父上。」


「また、シャランがサルン家にいる期間は、ベイルが成人するまでとする。」


「わかりました。ありがとうございます。では、家族達に話してまいります。」

サルン伯爵は、膝を付き頭をさげると接見の間を静に後にした。




=その晩=

「シャラン、クラス兄様と母様の隣がいい!」

シャランは目を輝かせてクラスと母様の隣の布団に潜り込んだ。


「シャラン、ずるい。私だってそこがよかったわ。今日だけよ!」

ラインがクスクス笑いながらシャランをからかう。


「えへへ!ありがとう。明日はライン姉様とラルー姉様の間で寝たいな!」


「あら、フィーダでなく、私を選んでくれてありがとう!」


「ちぇ!明後日は俺の隣な?シャラン。」


「うん!」

ニッコリ笑顔のシャランが元気よく頷く。




おじーさまが王様達とのお話が終わって、シャランを引き取る事になったと私達に告げた。


そして、今日からシャランは、私達の兄妹だと思って接しないと伝えた。そして、シャランには今日から家族になったのだから、おじちゃんではなくおじーさまと呼びなさいと話した。


「おじーさま?」

キョトンとした顔でシャランが言った。

「そうだ。今日から私はシャランのおじーさまだよ」

そう言うとおじーさまは、ニッコリ笑ってシャランの頭を撫でた。


「私は、シャランのおばーさまですよ。よろしくね」


「おばーさま?」

おばーさまが笑顔でシャランを抱きしめる。


「そして、私が母様よ!」

母様がシャランを抱き上げてクルクル回ると最初はびっくり顔のシャランが母様に抱き付きうれしそうに笑い声をあげる。


「シャランは、ラインより小さいからラインの妹だな!ライン妹ができてよかったな!シャラン、カルはお前の弟だから、面倒みてあげるんだぞ」

フィーダが母様からシャランを受け取ると高い高いをした。


「うん!シャラン、カルの面倒みる!」


「シャランは偉いね。カル、シャラン姉様だよ」


「ちゃらんねたま?」

カルが首を傾げながら言った。


こうして私達は9人家族となった。




「シャラン、嬉しいのはわかるけど、今は寝る時間よ!皆も早く布団に入る!」


母様が優しくシャランを諭すとシャランの背中をゆっくりポンポンと叩く。

同じベッドで寝ている私達にも優しいその振動が伝わり、いつしか皆、寝息をたてていた。

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