その19
は!!
こんな所で顔をニヤつかせて、何油売ってるのよ私は…
素早く、テーブルに盛られていた料理を取ろうとすると広間が割れんばかりの拍手に包まれた!
いけない!王様と王妃様が来ちゃったよ!
食べ物持って人だかりを越えるのはちょっと無理だな…
仕方なく皿を置いた。ふと見ると、林檎がうず高く盛られていたので、赤い林檎と青林檎を1つずつ、両手で掴みタイミングを見計らって母様達の元に行くことにした。
すると人々の間を通って王様と王妃様が壇上に上がった。
「今日は皆、来てくれてうれしく思う。皆の働きに敬意を表し、家族と共に私の心ばかりの感謝の印として、今日は大いに楽しんでもらいたい」
ワアァー!!
溢れんばかりの歓声が広間を包む。
「それと、今日正式に私の息子ベイルの婚約を皆に発表したいと思う。ベイルこちらへ」
再び大きな拍手鳴り渡るその中で一人の青年が壇上に登る。
え………………!
あ、あれって…
さっきの、青年!?
林檎を持っていた事を忘れて、手を口にあてようとして、林檎が落としてしまっていた。
せ、青年が王子様!?
私ってっきり、動物と話せるから辺境の地に住む一族の人だと思ってた…。んで、たまたま王宮に呼ばれた的な……。
まさかの辺境の民。からの王子様って!
青年は無表情で人々を見下ろしている。
「このベイルと婚約者の……」
「大変でございます!!」
バタバタと執事のような人が走ってきて、王様に一礼し、なにや耳元で囁いた。
「本当か?ふむ・・・わかった。
ベイルの婚約者が体調を崩してしまったらしく急遽、皆にお披露目ができなくなってしまった。
悪いが、お披露目は、体調が良くなり次第とさせてもらおう。それまで今夜の料理や、催しを楽しんて欲しい。」
拍手が起き、再び音楽が流れ初めてた。それをきっかけに挨拶に行くもの、料理を取りに行くものなど、人々は、王様がが来る前のように好き好きに移動をしていった。
私は、どうしても青年−ベイル王子に逢いたくて、壇上に向かったが王子の姿がどこにも無かった。
仕方なく、トボトボと母様の所に行くと
「ラルーご飯持ってきてくれた?」と元気にシャランちゃんが声をかけてきた。
「あ!あぁ、ごめんね。王様のお話が始まっちゃったから取りに行けなかったの。すぐ取りに行くから、もう少し待ってて…」
「ラルー!さっきの王子見た?絶対あいつだよな!」
料理を取りに踵を返そうとした途端に目を輝かせたフィーダに捕まった。
「さっき、会ったよ…。あの人に」
「え!王子様にあったの?すっげー呼んでくれよ!」
「偶然、会っただけだから…それに私もさっき初めて知ったんだもん」
ブー垂れた顔で答えていると後ろから大きな声が聞こえた。
「あ!シャラン!!ここにいたのか?」
振り返るとそこにベイル王子が立っていた。
「全く、いいと言うまで部屋から出るなって言われただろ?皆お前の事大探ししてたのに…って、あっ、これは皆さんお久しぶりです…」
すると、おじーさまが王子の前に歩み出ると膝をついた
「久しぶりですな、ベイル様。先日、孫娘のラルーを助けていただいと先程、妻からた聞きました。この場を借りてお礼を申し上げます」
「顔を上げて下さい。サルン伯爵。僕は当たり前の事をしたまでです。」
するとおばーさまがおじーさまの隣に行き膝をついた。「知らなかった事とはいえ、ご無礼の数々、お許し下さい。」
「お二人とも、やめてください。身分を隠していたのは、僕の方なんですから…」
王子は、二人の手を取ると立ち上がらせた。
「もしかして、シャランを保護していただいたのもサルン伯爵達だったのですか?」
「はい。孫達が一人になっていたシャラン様を見つけてウチで預かっていました。」
「そうですか…。ありがとうございます。あの、もし、よければ皆さんと少しお話したいのですが宜しいでしょうか?」
おじーさまが皆の顔を見回すと興味津々の顔が並んでいる事を知り「・・・わかりました」と一言答えた。
「では、こちらへついて来てください」
王子は、シャランと手を繋ぐと広間の隣にある部屋へと私達を誘った。