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その18

もしかして、王族の姫君!?


いやいやいや、このガッツキぶりからしてちょっと違う気がする。


王宮で働いてる人の子?

でも、父様も母様もいないというし…


「この子…迷子なんじゃない?」

フィーダが珍しく核心を突く事を言った。


迷子!迷子の気持ちは痛いほどわかるわ!こんな小さな子が迷子なんて…可哀相に。思わず涙ぐんでしまう。


「ねぇ、お名前は何て言うのかな?僕はクラスっていうんだ。君は?」


「ひゃらん」フィーダに取ってもらったパンを頬張りながら答えた。


「え?ひゃらんって言うの?」

私が聞き返すと口の中の食べ物を急いで飲み込んで言い直す。


「シャ・ラ・ン!」

「シャランちゃんか!可愛らしい名前だね」

クラスがシャランちゃんの頭を撫でながら言った。


「シャラン今度あれ食べたい!」

どんだけ飢えてるのこの子は…


フィーダが料理を取って行っている間にクラスと密談をする。


「どうするクラス。シャランちゃん一人にしておけないよ」


「うーん、とりあえず母様達の所に連れて行って相談しようか。僕らだけでは、手に負えないからさ」


そう言ってクラスは果物やお菓子を手に持ち、フィーダが戻るとシャランちゃんに話し掛けた。


「ねぇシャランちゃん、あっちに座るところがあるから、僕達と一緒に座って食べようか。そしたら、料理を落としちゃう事もないしさ」


「うん!わかった」

クラスがシャランに手を差し出すとニッコリ笑って手を握り嬉しそうについて来た。



おじーさま達がいる所まで行くと色んな人達がおじーさま達に挨拶をするべく長蛇の列になっていた。


マジっすか!おじーさまって大人気なのね!


私達に気づいたおじーさまが

「あれが上の孫達です」と紹介され、再び例のお決まり文句の挨拶をする私達。それをキョトンとした表情で見つめるシャランちゃん。


一通り挨拶が終わり、母様達にシャランちゃんの事を話すまで15分はかかった。


「シャランちゃんの保護者の方が見つかるまで私達と一緒に入ればいいわ」

母様が元気よく答えた。


「シャランちゃん、誰も取ったりしないからゆっくり食べなさい。あらあら、口にソースを付けて。拭いてあげますね。ほら綺麗になったわ!」


おばーさまは、クラスと同じで小さい子供に目が無く、子供らしいシャランちゃんの世話をかいがいしいく焼いた。


「王宮の者達に、この子を今当家で預かっている事を伝えてこよう。

ん?なんだカルも行きたいと?おじーさまは、遊びでいくわけでは無いんだぞ…。

…しょうがない子だ。」


おじーさま………。しょうがないのは、おじーさまなのでは?

おじーさまはカルを抱き、王宮の使用人の人の元へ向かった。



「ねぇ、おばちゃん!シャランね、まだ食べたいな…もうご飯やお菓子は、ないの?」


悲しい顔をしたシャランちゃんがおばーさまを見上げる。


シャランちゃん、あなたの胃袋は宇宙かい?どこのフードファイターなのこの子は!


「シャランちゃん、あまり食べ過ぎるとお腹を壊してしまいますよ」

おばーさまが優しく諭すとグゥーとシャランのお腹がなる。


マジっすか!マジでお腹鳴ってるよこの子!


「本当にお腹が空いてるのね、この子。ラルー、シャランちゃんに、料理持ってきてあげなさい。なるべくお腹にたまるものがいいわ」


母様に言われ、料理のブースへ行き、どれがいいかキョロキョロ見回していたらドンと人にぶつかってしまった。


「あ、ごめんなさい」急いで頭を下げる。


「僕の方こそ、キョロキョロしてたのですみませんでした…怪我はなかったですか?」


ん?この声…

どこかで聞き覚えがある声に顔をあげるとそこには、黒髪眼鏡のあの青年が正装した姿で立っていた!


「「あっ!」」

二人ともお互いを指さして固まる。


「ま、まさかこんな所で会えるなんて思ってもみなかったな!腕はもう大丈夫?」


「え?うん!すっかり骨もくっついて元通りよ!私ハーフエルフだから怪我とかに強いの!」


「アハハ!そうだったね。

でも、一瞬、君の事がわかんなかったよ。よく似合ってるよ、そのドレス」


「あ、ありがとう…///お世辞でもうれしいわ」


「お世辞なんか僕生まれてから一度も言った事ないよ!似合ってると思ったからそういったまでだよ」


どこのジゴロだよこの青年は…。と内心ツッコミながら顔がにやける…いかん、こんな言葉で騙されちゃいかん!


「今日は、あなたも新年会のパーティーに呼ばれたの?」


「え!う、うん、そうなんだ…君も呼ばれたの?」


「うん、おじーさま達と一緒に招待されたの。あっ!まだ自己紹介してなかったよね?

私、ラルー=スエルと言います。おじーさまがサルン伯爵だから、今日一緒に招待されたんだ。」


「え!君、サルン伯爵のお孫さんなんだ!」


「おじーさまの事知ってるの?」

「え!あ、うん。サルン伯爵は有名人だからね。ここに来てる人は皆、知ってると思うよ。でも君あんまり似てないね。」


「やめて、顔の事は…傷つくから」


どいつもこいつも…平凡な顔って事くらい十二分にわかっているってんだよ!文句があるなら、明日から平凡な顔で毎日を過ごしてみやがれ!


身体的な特徴の事に触れられると心の奥底にいる、黒ラルーが脳内を暴れ出す!


「何の事?僕は、サルン伯爵はなんか近寄り難い感じがするけど君は親しみやすい雰囲気があるから、あんまり似てないと思っただけだよ」


「そ、そうなんだ…。あ、ありがとう」


再び赤くなってしまう。

この人天性のジゴロだわ!気をつけなくちゃ…


パンパラパンパンパーン


私達が話している途中でいきなりファンファーレが鳴り響いた。驚いて顔をあげると


「パチーノ王、レンジ様、パチーノ国、王妃様アキーム様がお越しになられます。皆様、拍手と共にお迎え下さい。」とアナウンスが流れ広間にいた人々が割れて中央に一本の道ができた。


「ラルー、ごめん。僕ちょっと行かなきゃ!会えてうれしいよ!できれば、また会って話したいな」


「え?うん、わかった!」


そう答えると青年はニッコリ笑って足早に私の隣から去って行った。



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