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その17

私達家族は、皆あまりの驚きに口を空けたまま、おじーさまに注目した。

事情を知らないミスティーク公爵だけ「?」という顔をしていた。


「お父様!」

「クリスラー!」

「「「「おじーさま!」」」」


口々に叫びおじーさまに抱き着く。

「こ、こら!離しなさい!服が伸びる…子供達!あ、挨拶を…挨拶をちゃんとしなさい」



そこで漸くミスティーク公爵の存在に気が付き慌てて挨拶をする。

「クラスと申します。お会い出来て光栄です。公爵」


「私は、ラルーと申します。この地に来て間もないので色々とご教示願います」


「フィーダと申します。公爵様におかれましては、ご機嫌麗しゅう存じます」


「ラインと申します。お目にかかれて大変嬉しく思います。」


「かるでつ。たんたいでつ。(カルです。三才です)」



パーティーに行く前におばーさまに徹底的に挨拶の仕方を仕込まれた私達は、極上の笑顔と共にお辞儀をし、完璧なで挨拶をかましてみた。


ちなみにボロが出ないように、誰に対しても挨拶する時は毎回同じ台詞にしています…。



その姿を見たミスティーク公爵は、美しい子供達に(私を除く…)純真な笑顔と共に挨拶をされた事に、いたく感動している様子


「サルン伯爵も良いお孫さん達に恵まれ、うらやましい限りですな!」と上機嫌でその場を後にした。



ミスティーク公爵の姿が見えなくなったのを見計らって母様が口を開いた。


「お父様!ありがとう!この子達を認めてくれて」


「クリスラー…私からもお礼を言います。ありがとう!」

母様とおばーさまが涙ぐんでおじーさまに言った。


「お前の子なら、私の孫だ。当たり前の事をしたまでだ」


罰の悪そうにおじーさまが答えた矢先にカルがおじーさまの足元に近寄ってお願いをした。


「としゃま、だっこちて」


カルあんた幼児だからといって、おじーさまにまさかの抱っこを要求とは!恐ろしい子…


やっと和解出来たからと言っても、これは流石に一足飛び過ぎるってカル!

空気読むことを身につけようね…しかも父様って!私達の父様は、お空の星になったとあれ程、言い聞かせてきたのに、おじーさまを父様呼ばわりって!


父様には、悪いけどヨボヨボじじぃだった父様と未だ30代後半くらいに見え、男の色気を振り撒いているおじーさまとを間違えるなんて…


「カル、僕が抱っこしてあげるから…」とクラスがおじーさまに気を使ってカルを諭そうとすると、横からカルを掬い上げるように手が伸び、カルが抱き上げられた。


「しょうがないヤツだな。ん?なんだあれが食べたいのか。よし、取りに行こう。」


今まで見たことのないくらい目尻を下げたおじーさまがカルを抱き上げて、食べ物が立ち並ぶテーブルに移動して行く。



「お母様…見た?」

「えぇ…しっかりと…」

「何?あの豹変ぶり…。私の小さい頃だって、あんな顔した事なかったわよ!」

「孫は目の中に入れても痛く無いって言うけど…。何だかんだ言っても、あの人も例に漏れずに孫が可愛いのねぇ…」


母様とおばーさまがヒソヒソとおばーさまの態度について話し合う。


カル…おじーさまが私達に対して作っていた壁を笑顔ひとつでぶっ壊すとは…本当に恐ろしい子!

でも、これで本当の家族になれたんだ!

スッゴくスッゴく嬉しい!

私達兄妹も顔を見合わせて笑いあう。すると、カルにケーキを食べさせているおじーさまが私達に声をかける。


「こっちにお前達の好きそうなものがいっぱいあるから、早く来なさい!」


「「「「はい」」」」

私達は、元気に返事をしてご馳走の並ぶテーブルに向かった。




ご馳走はどれも美味しく、頬っぺたが落ちそうなものばかりで、さすが王宮!と思わず唸ってしまう。


「ラルー!あっちに大きな海老があったから行こうぜ!」

「うん!クラスとラインも行こうよ」

「私はお腹いっぱいだから、母様達といるわ!」

「僕もお腹いっぱいだけど、フィーダとラルーだけじゃ心配だから、一緒に行こうかな」


何よそれ…フィーダはともかく私が心配って…内心クラスにツッコミつつ私達3人は、海老のご馳走がたんまりと乗っているテーブルに移動した。


「う、うま!何この海老料理!超うまい」

「本当!この水色ソースがこれまた海老に合うわ!」


フィーダと共に満面の笑顔で料理を食べていると

「お前達、程々しろよ」とクラスが釘を刺す。


「「だって美味しいんだもーん」」

「・・・まったくもぅ」

呆れ顔のクラス。


すると私とフィーダの間に栗色の髪をした小さな女の子がトコトコやってきて海老料理を取ろうと手を伸ばした。

しかし、テーブルと同じ背の高さのその子では手を伸ばしても料理に届かない。


「よければお皿を貸して。取ってあげるよ」

小さな子供の世話を焼くのが大好きなクラスがたまらず、その子に言った。


「いいの?ありがとう」


直ぐにクラスは、お皿に料理を乗せてあげ女の子に手渡してあげた。


「はいどうぞ!零さないようにね」

「ありがとう!」

可愛らしい笑顔でクラスにお礼を言うと、その子は、一心不乱にバクバクと食べはじめた。

あまりの夢中ぶりにお皿を傾けてしまい、海老とソースがその子のドレスにべっとりと落ちてしまった。


「あらあら、ちゃんとお皿を持ってないとせっかくのドレスがシミだらけになっちゃう!」

私が慌てて、お皿を持ってあげ、その間にクラスがドレスに付いたソースを拭き、フィーダが半分しか食べられなかった、この子の為に新しい料理を取ってきた。


言わなくても伝わるコンビプレー!さすが三つ子だ


「ねぇ君のお父様とお母様は?どこにいるの?」


クラスがその子に優しく聞いた。するとフィーダから新しい料理が乗った皿を受け取った幼女は、料理から目を離ず夢中で食べながら、「いない」とだけ言った。


いない…ですと???

私達三人は顔を見合わす。


「じゃあさ、誰とここに来たのかな?」

今度はフィーダが優しく聞く。


「だって、あたし、ここにいるもん。ねぇあれも取って!!」


料理を凄い勢いで平らげた幼女は、まだお腹が空いているらしく、料理を乗っていた皿に残っていたソースを舐めながら次の料理を催促する。


ここにいるって?

え?この子、王宮に住んでるの???



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