その12
やっと骨がしっかりとくっつき、お医者様から兄妹や母様と同じ部屋で寝起きをしてもいいとお許しが出たのは、新年をあと2日残した頃だった。
良い機会だからと、そのまま一人部屋を与えられそうになったが、まだいらないと断固拒否をし、晴れて昨日から狭いベッドで親子六人「州の字」で寝ていた。
あぁ、この狭さから生じる密集度合いが冬場は暖かくていいのよね。
フィーダの寝相の悪ささえも一人じゃないと実感できて、ある意味快・感…!
侍女さん達に起こされ支度を整えると、食堂に向かう。
食堂では既におばーさまとおじーさまが定位置に座って朝食を食べていた。
「「「「「おはようごさいます」」」」」
「皆、おはよう。ラルー、久しぶりの六人一緒のベッドはよく寝れたかしら?」
微笑みながらおばーさまが聞く
「はい!ぐっすり寝れました。」
私は、元気よく答えた。
朝食が運ばれ食事を取っていると、コーヒーを飲みながら珍しくおじーさまが口を開いた。
「明日の大晦日、皆出かけるからそのつもりでいなさい」
そう言うとおじーさまは出ていってしまった。
何?出かける??どこへ?
私達兄妹の顔には「???」という表情が浮かんでいる。
「もう、クリスラー(おじーさまの名前)ったら言葉が足りないんだから…。」
おばーさまが苦笑しながらおじーさまに文句を言った。
「あのね、明日は大晦日でしょ?毎年、大晦日になると国王が貴族とその家族を宮殿に招待して、新年を祝うパーティーを開くの。
当然、今年は貴方達も呼ばれているから、皆で出席しましょうっておじーさまは言いたかったのよ」
おばーさまは、私達に満面の笑みを見せながら、おじーさまの言葉の補足をした。
「ええぇ!まだあの新年のパーティーやってるの?
本当、国王も飽きないわね…。お父様とお母様で行ってらして。私達は、仲良くお留守番していますから!」
母様がさも嫌そうな顔でおじーさまの提案に拒否をした。
「必ず家族は出席する決まりなのよ。エルザも知っているでしょ?
きっとお父様も貴方達を紹介するいい機会だと思っているのよ。あそこで貴族の面々に紹介する事で、この子達はサルン家の者と皆に認識されるわ。
そうすれば、この前みたいな、変な輩に子供達が絡まれるのを防ぐ事ができるとお父様はお考えなのよ…。
これもお父様なりの愛情よ。わかってあげなさい」
いつになく、おばーさまの口調が厳しいので、空気がピンと張り詰めた。
「…でも…。……。
そうだわ!私達パーティーに来ていく服なんて持ってないもの。日頃お世話になってる、お父様とお母様に恥はかかせられないし…。あぁ残念だけど今年は−」
母様が嬉しそうに答えた。
「安心なさい。今日、仕立屋を呼んで、今日中に仕上げさせるように言ってあるから、ドレスに関しては何にも心配いらないわエルザ」
おばーさまがニッコリ微笑みながら母様の話しに被せて黙らせた。
「ぐっ…」
おばーさまのダメ押しで母様とおばーさまの攻防は、一気におばーさまに軍配が上がった。
母様…母様の負けだわ。
今回の事に関しては、おばーさまが1枚も2枚も上手です。
さすが母様のお母様だけあって母様を黙らせる用意周到ぶりにに驚きを通り越して、一種の爽快感まで感じさせる。
でも正直、エルフの貴族ってあのバカ親子みたいな人達ばかりっぽいから気持ちとしては行きたくない。
しかし、私達が今いるパチーノの国王様かのお呼ばれなら行かざるを得ないか…
あぁ気持ちが重いよ。