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その11

どのくらい時間が経ったのだろう。


目が覚めると真っ暗だった。窓に目を向けるとカーテンが閉じられているから、おそらく夜だろう。きっとよく寝ているから私を一人にしてくれたようだ。



起き上がるのも億劫なので横になったまま天井を見上げる。


・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。


さ、寂しい…誰か来てぇ〜

暗いのは平気だけど、こうも静かだと逆に落ち着かない。

ねぇ、誰か様子を見に行こうと思う人はいないの??


しかも右手を固定されているから寝返りすら打てない。

どんだけ頑丈に止めてるんだよ!少しイラッとしながらため息をついた。


早く皆と一緒に寝たいよ…


物心ついた時には、周りに必ず家族がいる騒がしい環境だったから寂しいって思うことが無かったし、逆に早く独立して一人になりたいと願っていた。

けど、いざ一人になってみると(一人といっても、今は一人で寝るだけだけど)寂しくて落ちつかない。


自分ではない誰かと一緒にいる事は私にとっては、落ちつける環境だったんだなぁ。


しみじみ思っているとジワっと涙が出てきた。いかん、いかん!独り寝ごときでホームシック(?)にかかるとは…私、まだ熱が高いのかなぁ。



ガチャ


扉が開いて誰かが部屋に入ってきた。

やばい!赤ちゃんでもないのに泣いてた事がばれる!すかさず、目を閉じて寝てるふりをした。


コツコツと足音が近づいてきた。


誰だろう?母様かな?


うっすら薄目を開けて見てみると、そこに立っていたのは、なんとおじーさまだった。


ヒィェェェー!おじーさまと二人きりになるのは、笛の稽古をサボった時以来だ!

気まずい事この上ない!寝たふりを続けて嵐が去るのを待つのみ!


心臓がバクバクしているが、それを悟られないよう、規則正しい寝息を繰り返す。



はーやーくー出てって!夜遅くにレディの部屋に入ってこないでよ!!

母様!たすけてぇぇ!!!敵が!敵が攻めて参りました!!私を避難させてください。


いくら心の中で強く念じてみても、もちろん助けが来るわけでもない。

こちらの心境に気づく事もなく、おじーさまはベッドの隣にある椅子に腰を下ろして私の寝顔を眺めている。


頭の中は警報が鳴りっぱなしでひどく動揺して焦ってしまい、私は鼻と口から同時に息を吸い

「ンゴォォ」と盛大ないびきをかいてしまった。



最・悪・・・

ただでさえ、お祭りで迷子&一悶着を起こして腕を折り、その上に盛大ないびきをかく孫娘って…

最悪を通り越して最凶よね。。。



「驚いた。いびきまでもが、デニールとそっくりだとは…」


おじーさまは、嬉しそうに小さな声でつぶやくと、私の頬を人撫でした。


はっ?デニール?誰それ?

デニールは本物のいびきかもしれないけど、私は緊張のあまり呼吸が乱れて結果、いびきになっただけだから!

根本がもうデニールとは違うからね!


心の中でツッコミながら寝たふりを続ける。


「デニールよ、お前は姪の姿を借りて私の元に戻ってきてくれたのか??私の事を許してくれたのか…

それともまだ怒っているのか?」


おじーさまが私の寝顔に向かって小さな声で話しかけた。


何?何?何?

寝てる孫に向かって何、訳のわからない事言ってきてるんですか?!何これ、無茶苦茶怖いんですけど!!一刻も早く、立ち去ってくれ!


その思いも虚しくおじーさまは椅子に座ったまま、私を黙って眺め続けた。




−1時間経過−

おじーさま、しつこいにも程があるわ!本当にお願いだから、帰って!



−3時間経過−

黙って人に寝顔を見続けられるって、こんなにもプレッシャーになるなんて、初めて知った…。辛い…



−5時間経過−

ねぇ、これ何プレー?



−6時間経過−

・・・・・。死にたい・・・・。いっその事、殺して・・・。



-朝-

チュン、チュンっと小鳥の軽やかな囀りと共に部屋の中に太陽の柔らかな朝の日差しが入り込み部屋を明るく染める。



「ラルー!おはよーう!

昨日は仕事で相手できなくてごめんね!今日は、お父様に仕事ぜーんぶ押し付けるから母様と一日一緒にいようね!って、うわあぁぁぁぁ!ラルーの枕元に、し、し、死神?!」


母様が元気よく部屋に入って来ると予想しなかったおじーさまの姿に度肝を抜かれ、黒い服を来ていたおじーさまを思わず死神と間違えた。


「何がおはようだ!! 病に伏している娘をよく寝ているからと言って夜中に一人にするなんて!お前はそれでも母親か!?恥を知れ、恥を!」


「えっ!って事はお父様、ずっとラルーについていてくれたの?」


母様違う。ついていたんじゃなく監視されてたのよ…


「い、いや・・・さっき通りがかって少し様子を見ていただけだ。私はもう行く。」


おじーさまは立ち上がると部屋から出ていった。



「へぇ!お父様も良いとこあるじゃない。ねぇ?ラルー!

・・・え?ラルー?どうしたの?何シクシク泣いてるの?え?え?」


やっとおじーさまの愛情ある監視から解き放たれ喜びと今までの数時間に及ぶ苦行に思わず泣けてしまった。


もちろん、この精神的なストレスでこの後、熱がしばらく続いたのはいうまでもない。

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