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その1

エルフと人間の間に生まれた者はハーフエルフと呼ばれる。


人間にもなれず、エルフにもなれない半端者。


それが私。ラルー=スエル


私の母親がエルフで父親が人間だった。


私の耳は、父の耳より長く母の耳より短い。


母は、とても美しい人でよく笑う自慢の母であり、父はとても優しく、なかなかの男前でちょっと浮気性でだらし無い所もあった。


酒場でお姉さんを口説く姿を母に見つかると、母が微笑みながらキレてフルボッコにされていた。


が、次の日、ボコボコの顔をしながら「僕の愛しのエルザ!大好きだよ」


「ふふふ、私も!ディーン!」と朝から、子供達の前で堂々とイチャつく。


父様…右手折れてますよね。というツッコミは入れずに子供達はもくもくと朝食を食べるのが日常だった。


そんな父と母が大好きだったが、ハーフエルフはエルフと同じ寿命が長く、成長速度が遅い。身体的な成長の速度が人間の5倍かかる為、見た目が人間の10才くらいの子供に見えた頃、父は亡くなった。


母は悲しみ嘆き、一週間泣きつづけた。


父が死んで、一週間目の朝

突然、母の泣き声が止んだ。


「皆!ついてらっしゃい」

母は、さっきまでの意気消沈していた様子は微塵もなく、荷物を手早くまとめていた。


「か、母様何してるの?」

兄のクラスが恐る恐る聞くと、母は例のニッコリ笑顔だった。母は、いつも笑っているが、ニッコリ満面の笑顔は、非常に怒っているなどの不吉な前兆だ!


子供達、一瞬で凍りつく。

ヒイィィィ……例のその笑顔は怖過ぎます!


「ディーンがいなければこの地には用がないわ。

というか思い出がありすぎて、母様泣き続けちゃう!

母様の安らかな笑顔とあなた達のためにこの家を売払って、母様の実家に帰る事にしました!」


えっ!まだ父様が死んで一週間なのに、なんて切替の速さ!むしろ世間的にまだ泣き続けるべきでは?


そんな我々兄弟の気持ちを知ってか知らずか母は、エルフの国へと私達を連れて帰った。



エルフの国のパチーノ

初めて足を踏み入れたエルフの世界。町は、白と青色で統一されており、道は魔法で青く光っている。

更に、行き交う人は皆さん美男子&美女ぞろい。

地味な顔の(対エルフ比:言い訳ではありませんが、もとの町ではかわいいと評判の兄弟でした。エルフがおかしいの!)我々兄弟は注目の的だった。


あぁ!!お家に帰りたい!けどもぅ家もないし…


母はの実家は、エルフの国の中で貴族の地位にある家だった。


「お父様!お母様!かわいいエルザが、かわいい孫達を連れて今帰りました〜」


母様そのテンションの高さどうにかなりませんか?


ここで話は逸れますが私と兄弟達を紹介します。

長男クラス。年齢50才(見た目10才)

母様に似た顔立ちで金髪碧眼の美丈夫。

ちなみに私達は三つ子です。


同い年でもクラスは、長男気質のしっかり者(父母があんなんだったので、自分達だけでもしっかりしなきゃというある意味生存本能なのかも)

綺麗な顔に似合わず趣味が家事と弟妹達の育児。

口癖は、「まったくもぅ」

頼りになる兄様です。


長女私、ラルー

三つ子の真ん中。私は、父の母。つまり、おばーさまに似てしまい、髪の毛は鮮やかなチェリーブロンド。早い話が赤毛。目の色は、これまた母様方のおばーさまに似た紫色。

悲しい事に顔立ちは、美女ではなく普通の顔だが、珍しい赤毛と紫の目は、人目を引いてしまい、正直コンプレックス。私は赤毛の○ンの気持ちが痛いほどわかる!


次男フィーダ。

三つ子の1番下。

髪はダークブロンドで目は黒

三つ子の中で1番最後に生まれたせいもあるかもしれないが、食いしん坊のマイペース。そして、どんな人でもすぐに仲良くなれる、天性の人タラシですが母様に似て気が短い。

得意技の上目遣いが、もう父性&母性本能くすぐりまくりでフィーダのお願いを突っ張る事ができた人を私は知らない。


次女ライン40才(見た目8才)

金髪で茶色の目でこれまた母様に似た美人だが泣き虫&超ビビり。寝る時は私と一緒にベッドに入って手を握っていなければ怖くて寝れない。


年の離れた末っ子カル3才。父様が70才の年に生まれた(元気なエロじじぃだな、ホントに)

まだほんの赤ちゃんだから皆のアイドル。茶色のくるくる巻き毛と緑の目が父様そっくり!


総勢五人の子供を連れて元気に実家の門を叩く母様!

母は強し!


扉が開くと黒髪に紫色の目をした今まで見たことが無いくらい飛び切り綺麗な女の人が出てきた。


「エルザ?本当にエルザなの?顔をよく見せてちょうだい。」


「お母様、娘の顔忘れたの?いやだわボケちゃって!ただいま帰りました。」


母様、今この美人を「お母様」って!どうみても母様とあまり年が変わらない人だと思いますがつまり、我々のおばーさま! ?


「あなたが、自分を探してきます。と訳のわからない書き置きを残して家出してどのくらい経ったと思ってるの!散々探したのに見つからないし、何を考えて……」


おばーさまがお小言を言いながらふっと目線をこちらに向けて固まった。


「エルザ!?この子供達は何!エルフでは、無いみたいだけど、面影があなたによく似てるわね。って、ま、まさか…人間との間に、こ、子供を作ったの!?」


「だから、孫連れて帰ってきたって言ったでしょ!

それに、たまたま愛した人が人間だったのよ。結婚して子供を作って何が悪いの?私の宝物だし、彼の大事な忘れ形見よ!」


「そんな、人間なんかと、けっけっけっ結婚ですって!」


「そう。結婚して55年経ったわ。でも、一週間前に彼は亡くなった…。

だから子供達を連れてこっちに戻ったの。魔力が安定してないから、人間の世界にいたらご近所に迷惑がかかるしね。ここなら使いたい放題じゃない!

お父様とお母様は孫に会えるしどっちにとっても良い話でしょ」


例のニッコリ微笑む母様の顔を見たおばーさまは、口を開きかけたが何も言えず、最後には「ついていらっしゃい。」と一言いい、私達は、今まで住んでいた家の三軒分が余裕で入る大きさの一室に通された。


その部屋は、白で統一されており、白い大理石の床と柱に白い壁。大きな窓には白いビロードのカーテンがかけられ、同じく大理石でできた大きなテーブルに白い椅子が並べられていた。


「客間でなく、会議室に通すとは、お母様も人が悪いわね…」


母様は不機嫌そう椅子に座ると膝を組み決して褒められるようなたたずまいではない格好でに言い放つ。


「か、母様。やっぱり出戻りは、世間的にも色々とあるんだと思うよ」

私は恐る恐る言った。


「何言ってるのよ。私達は血が繋がってる、れっきとした家族なのよ!世間体より家族でしょうが!」

はい、そうです。家族です。しかし、50年程家出されてましたよねっとツッコミたいのを堪える。


「ねぇ、母様。おばーさまの言葉を聞いて思ったんだけど、人間って、エルフの中では蔑まれる存在なの?」

クラスが聞く。


「あ、それ俺も思った。だって俺の笑顔が通用しないんだもん!びっくりしたよ」


フィーダあんたは、黙りなさい。


「おばーさま、私達の事嫌いなの?」ラインがおずおずと聞くと、


「何言ってんの!」と豊満な胸に私達を力いっぱい抱きしめた。


「あんた達みたいな賢くて可愛い子達が嫌われる訳ないじゃない。


ただ、エルフってちょっと頭が硬くて、自分達以外の種族を受け入れられないのよね。

この世界は、いろんな人々が生きてるって言うのに、キャパシティ狭すぎよね!何様なの?全くもぅ。


でも大丈夫!私達は家族だし、母様も側にいるからどんな事でも太刀打ち出来るわよ!」


母様それは、大丈夫と言わない。


我々の計り知れない不安をよそにお母様は、例の笑顔を見せた。


か、か、母様!ケンカだけはやめてね!お願いします。


突然、会議室の扉が開くと金髪碧眼の絵に描いたような王子様みたいな男の人が入って来た。


「エルザ。久しぶりだな」


「お父様、お久しぶりです。お母様からは、詳細はお聞きになってますよね?私達の事。」


…まじですか。おじーさまですか。この方が…


「あぁ、聞いた。50年もの間音信不通だった上に、よりによって、人間なんかと子供を作ったお前とハーフエルフの子供の世話をしてほしいと言ったそうだな。この、サルン家の恥さらしも者が!」


「恥さらしでも、なんでも事実は事実です。れっきとしたお父様の孫をハーフエルフという言葉でひとくくりにしないで!

私達には、お父様とお母様にすがるしかないんです。

子供達は、本当にいい子達ばかりだわ。絶対にお父様も気に入るはずよ!」


「私は、ハーフエルフを見るのも鳥肌が立つがね。しかも、それを孫と認めろとなど虫ずが走るわ!」




「う、う、う、ゥエェェーン!ウェーン!「ヒック、ヒック、エェェーンエェェーン!ビエェーン」」

張り詰めた空気にカルが泣き出し、それに合わせてラインも泣き出した。


パァーン!ガシャーン

泣き声と共に会議室にあった机や椅子が動き出し、窓ガラスが粉々に砕けていった。


クラスと私が必死にカルとラインをあやすが泣き止まない。


とうとう空気の重さと妹達の泣き声に耐えきれなくなったクラスがシクシクと泣き出し、それを見ていた、フィーダまでも泣き始めた。


自分に向けられる蔑みの眼差しと兄弟達の泣き声に私まで悲しくなり、とうとう我慢できずに泣き始め、泣き声の大合唱になった。私達の泣き声と共に屋敷全体が揺れ、壁や床が壊れはじめ一層泣き声が大きくなった。


「こ、こら泣きやめ!屋敷を壊す気か!!」

おじーさまが慌てて止めに入るが、一旦涙のスイッチが入った私達は、そうそう止まらない。


「ビェーン、ビエェェーン!ギャーギャー!ウェーンウェーン」


「このままじゃ屋敷が崩れるわね。お父様!私達の面倒を見てくださるなら、止めるけど、どうする?」

平然とした顔で母様がおじーさまに聞いた。


「わかった!わかったから今すぐ泣き止ませなさい!」


「ありがとう!大好きよ」

ニッコリ微笑んだ母様は、私達の方を見ると「今から10数える間に泣き止まないと、承知しないわよ。10、9、8、7…」と笑顔で言い放つ。


例の笑顔を向けられ、条件反射でピタッと泣き声が止む。


パブロフの犬状態の私達。

ハーフエルフは、力が強いため、感情のコントロールができない内は、魔力が暴走し、色々なで事がおきてしまう。会議室は全壊していたが、なんとか屋敷は無事で済んだ。


「もう、勝手にしろ!」

おじーさまがよたつきながら、会議室を出ていくと、母様が

「あなた達よくやったわ!本当いい子達!これで、しばらくは安泰よ」と言ってまた私達を抱きしめた。


母様、泣いて頭がボーッとしますが、母様が喜んでるって事はグッジョブって事なんですかね?


その後、それぞれ各個人の部屋を割り当てられたが、今まで自分の部屋を持った事がないのと、家族が離ればなれになる事の不安から、しばらくの間、私達6人が同じ部屋になるようお願いし新たな生活が始まった。

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