表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/6

弟の女装で起こったラブコメの背中を押す。


「起きろ

いつまで寝てんだこの野郎」


「‥‥‥‥わっ

姉ちゃんやめて起きる!起きるから

寒すぎて死ぬ12月の早朝辛いからやめて」



翌日、12月某日

世間ではカップルがうじゃうじゃ生まれ、愛を育む日でもあり、

また別れが生まれる日でもある


本当は吉◯亮似の彼氏とデートに行きたかった。

何が寂しくて弟とクリスマスに出かけなきゃいけないんだ。

までには彼氏つくりたい。結婚もしたい。

の今の時点でこれなら望みはうっすいな。



「ほら、化粧してやるから早く顔洗って保湿してこい

この化粧水使っていいから」


「ただの温かい水じゃだめなの?」


「だめだよ。

温水つっても度前後ぐらいのぬるま湯な

冷たい水じゃ確かに肌が締まる感じがするけど毛穴が閉じて皮脂が落ちないから

逆に度以上だと必要な皮脂まで落ちてガッサガサになるから

しかもゴシゴシするのは絶対にやめてね

洗うときも、拭くときも優しくぽんぽん拭くの」


「皮脂‥‥‥毛穴‥何言ってんのか正直ついてけないけど、

世のおしゃれさんがすっごい苦労してるのはわかったような気がする。」



‥‥‥‥おい、お前が可愛くなりたいって言ったんだからな

そんなめんどくさそうな顔しながら洗面所行くなよ。


可愛いはな、めんどくさいんだ。

私も化粧は好きだが、自分にやるのはめんどくさいからいつも大体ノーメイクなんだぞ。


洗面所から帰ってきた真白を眼の前に座らせる。


最初はベースから。

真白の肌はまだきれいだし、下地と軽いコンシーラーだけで完成。


アイシャドウ、チークは軽く、今風に。

ラインを引いて、まつげをナチュラルに上げる。

リップは最近のはやりのティントとグロスで。


手は迷わない。

だんだんと自分好みの美少女が生まれていく。


途中真白が何度か動くけど

「動くな」「喋んな」で封殺。


黙々とメイクを進め

‥‥‥‥ほら、可愛い。



「あいよ、もう終わり。」


「えっ、もう?」


「いいから立って。」


真白を部屋の中にある姿見の前まで引っ張っていく。


んー、せっかくなら髪も巻けばよかった。

着替えさせたら髪の毛巻こう。


真白は一瞬鏡の前で固まった。



「‥‥‥なんか、姉ちゃんの部屋にあった漫画のキャラに似てる。」


「それは言わないお約束。」


「これが俺?」


「そうだよ」



真白は鏡の前で固まったまま

瞬きをしたり、振り向いてみたり動きがやかましい。



「‥‥‥‥ずる」


「何がだよ」


「なんでもない」


「わかったから、さっさとそのベットの上に広がってる服を着ろ。

まだ私の中のおじさんが完成を許してないんだ。

髪を巻かせろ。アクセサリーをつけさせろ」


「こんな感じに可愛くしてもらえるのは嬉しいけど

姉ちゃんの性癖を満たす役に回るのは俺すげー嫌だ。」


「安心しな、

それは別で満たす。」



服を着替えながら引き気味の目を向けてくる弟を軽く流し、

髪を巻く。


ちなみに服は一軍のを選んだ。

トレンチコートと色を合わせたタートルネックにデニム素材のラップスカート。

どれも私が高校時代に夢見て買い、自分に似合わなくて即着るのをやめた服たちだ。



「ほい、外出るよ」


「えっ?今から?」


「そうだよ。

せっかく人に見られてもいいようにおしゃれしたんだから」



わかったと小さく呟いた真白を連れて玄関まで歩く。

‥‥‥あっ!私の化粧忘れた。

ま、いっか。



外に出るともう冷たい空気が一気に流れてくる。


こんな田舎じゃまともに化粧品や服が手に入るワケがないので

電車に乗り込み、我らが東京へと足を運ぶ。


埼玉も住むには悪くないんだけどなぁ。

なんかパッとしなよな。

埼玉なぁ。


そんな事を考えながら真白の方を向くと自分の格好に慣れないようで

目線がぐるぐる動き回っている。

やめてくれ、不審者っぽいから。


挙動不審な弟と共に電車に揺られ約分。


着いたのはそう

新宿。


今までずっと友達のいなかった真白は

新宿についた途端、さっきまでの挙動不審がやかましい動きに変わり

ソワソワしている。


「ここが新宿かぁ

なんか大宮のが人多くない?」


「あんま馬鹿なこと言ってると置いてくよ。」


「えっ待って!やめて

迷子になる!町内放送かかるから!

ってうわ!ごめんなさい!」


「前見ろよってもうぶつかってるのかよ」


真白はキョロキョロしすぎて

人の流れや標識まで全部見ようとしている。

脳が情報量に負けてるなこれ。


そんな弟の手を掴んで、人混みへと進んでいった。



服屋にて――

「あのさ!

なんでそんなに変な服ばっか持ってくるの」


無地のシャツに

犬らしき変なキャラクターがど真ん中に描かれ、吹き出しに

「Wonderful」

と書かれたものを手にして持ってきた弟。


なんだ?犬の鳴き声がワンだから

Wonderfulなのか?

英語使うな。

腹立つ。


「だって店員がこれおすすめだって持ってくるから」


「それは信じるな己の感性を信じろ」



コスメショップにて――

「言ったよね!?!?

お前肌弱いんだから酸化亜鉛フリーなのを選べって

しかもなんで変な海外製の激安なやつ持ってくるの

死にたいの」


なんだ色パレット円って

在庫処分セールなのか?そもそも正規品なの?これ?


「だって俺金欠だし‥‥」


「店入る前に

これは姉ちゃんからのお年玉だから値段は気にすんな

って言ったよな」



買い物終わり、喫茶店にて――



「ねぇお願いだからさ、お姉ちゃんの話をちゃんと聞こうよ。

しかも自分の意志を持とう。

真白は押しに弱すぎるんだって。」


「‥‥‥はい

でも姉ちゃんのお陰ですっごくいいものが手に入った。

本当に姉ちゃんの奢りでいいの?」


「いいよ。

喫茶店代とデートが終わったあとの土産話してくれるなら

いくらでも買ったあげる。」


「デートかぁ」



真白は自分が頼んだクリームソーダのアイスを突っつきながらぼやく。


早く弟のデート話が聞きたい。

内容によっては新刊のネタにしたいんだよ。



「そうだ!せっかくなんだから、今春馬くんに連絡して約束取り付けちゃおうよ!」


「えここで今

‥‥‥恥ずかしいんだけど」


「こんなとこだけ女々しくなるなよ。

ほら、スマホ貸しな」



半無理矢理スマホを取り上げ、インズタを開き唯一のフォロワー相手の春馬に

「来週の日曜日会いませんか?」

という内容を送りつける。



「姉ちゃんなにするの」


「うじうじしててうざったいから私が代わりに送ってやった」



真白は慌ててスマホを取り返し画面を見る。



「既読付いたんだけど」


「そりゃ送ったら既読つくよ。」


「いやそうじゃないんだって!

メッセージを送ったら相手が見て

返信がくるかもしれないわけで」


「いいじゃん別に」


弟の困り果てた姿見ながら飲むアイスコーヒーうまー。


――ピロン。

真白のスマホが通知とともに振動する。



「姉ちゃん‥‥」


「見せて。」



真白はスマホの画面を渋々向けてくる。

画面には春馬からのメッセージ。


『来週の日曜日?

大丈夫だよどこか行きたいところがあるなら遠慮せず言ってね』


‥‥へー、いいやつじゃん。



「そうなの?これって社交辞令ってやつじゃないの?」


「違うね、社交辞令の文じゃない。

相手のこと考えて、好きだからこその引き気味のメッセージと見たね。」


「わかるんだ‥‥」


「で、どうするの?

ここで『どこでもいいです(裏声)』なんてほざいたら殴り飛ばすけど」


真白は一瞬、考え

さっき買った買い物袋を見つめる。



「‥‥じゃあ駅前の

クレープ‥‥屋さん?」


「へー食べ歩きデート?いいじゃん。

じゃあ『最寄りの駅前にできたクレープ食べに行きたい』って送りつけたれ

具体的に送るんだぞ。」



指示通り打ち込む真白の指は少し震えている。

送信。



「送れた。」



満足げに私は手に持ったままのグラスを机に置いた。



「じゃあ、今日のミッションは半分コンプリート。

あとは当日楽しめるか、だな。」


「俺次第じゃん。」


「そうだよ。

変にキャラ作らずに素のままでいられたら大丈夫だと思う。」



真白は照れたようにクリームソーダを飲む。


――さて

弟の初デート。


これはもう、

ネタにならないわけがない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ