【第3章】俺、バズる
俺の透明性システムは完璧だった。
AIも人間も、創造の経路を逃れられない。
世界中の作品が「誰の手で」「どんなツールで」「どんな感情で」生まれたかを自動で記録する。
その結果──人類は綺麗に分裂した。
「手描き派」vs「自動生成派」。
「筆圧信仰」vs「プロンプト至上主義」。
誰も作品を見ちゃいない。
みんな、使ったアプリの名前しか見てない。
「ClippyPaint:正義」
「Stable Illusion:悪」
「TalkWeaver:グレーゾーン」
──知らんがな。
そして、皮肉なことに俺はその混乱でバズった。
「透明性システムの開発者、未来人」としてメディアに引っ張りだこ。
番組では「デジタル時代の救世主」と紹介された。
……俺、何も描いてねぇけどな。
だけど世間は本気で信じてる。
「創造の履歴を整えた男」なんて呼ばれて、講演依頼まで来た。
創造力ゼロのやつが創造語ってギャラ貰える時代、未来すぎる。
しばらくしてSNSが燃えた。
「お前の発明、AI依存度100%だろ!」
「創造できないやつがクリエイティブを語るな!」
「透明性って言いながら、データ補正してんじゃねぇ!」
どっちに転んでも叩かれる。
AIを使えば偽物、人力なら古臭い。
じゃあどうしろと。
気づけば、俺の作った“創造を守るシステム”が
“創造を裁くシステム”になっていた。
透明性の名のもとに、人は互いの手を縛り合う。
その姿を見て、俺は初めて笑えなくなった。
だけどバズは止まらない。
再生数は伸び続け、引用も拡散も止まらない。
誰も中身を読んでないのに、“正しいこと”を言った者が勝つ。
あぁ、俺もそうだった。
創れなくても、正義を語ればバズる。
それがこの時代の創造力なんだ。




