1. 仙台出張
宮城て、また遠いなぁ。
仕事のスケジュール表を確認してため息。
IT系の会社員なんだからリモートで良くね?
なんでも仙台市での新規プロジェクトの
立ち上げ現場に出向かなければいけないらしい。
2泊3日ツアーだそうで。
諸経費は諸々出るとしても
仕事終わりは家にいたいなー準備するのも面倒だなー
という思いとは裏腹に時は進み現場の会議室に来てしまっている。
「伊藤 政崇です。
東京オフィスから来ました。短い期間ではありますが
全力でサポートさせていただきたいと思っております、
よろしくお願いいたします。」
25歳全力の営業自己紹介終了後、早速業務に移行し1日目が終了。
現場の方々に飲みに誘われたので、ご一緒させていただくことにした。
ビールと牛タンは合うな、お酒が進んでしまう。
仙台市中心部にあるこの現場の近くに宿が取ってあるようで、
解散後そこを目指して歩き始めた、
明日も仕事だというのにもう日付を超えそうだ、
流石にこの時間ともなると人通りが少ない。
ホテルへの最短経路をスマホで見ながら暗い路地裏を進む。
ん?暗くてよく見えないけど遠くの方でじっとこっちを見ている
ごつい人がいる気がするな、お、どっか行った。
酔った人なのかわからんけどこんなところですれ違いたくないよ、怖いよ。
ホテルに到着。
チェックイン後エレベーターに乗った、ところまではよかったんだが
エレベーターがおかしい、のか酔いすぎているのか7階を押したはずなのに
5階で止まったし廊下電気ついてないぞ。停電か?
人はいないが誰かが乗ろうとしてやめたのだろうということにしておこう。
7階の部屋に入り色々済ませたあと寝転んだ。
酔いもあって眠たくなってきた、な
パッと目が覚めた、時刻は2時半。
外が微妙に騒がしい、廊下から鳴ってるような気がする。
ガシャ、ガシャ、
なんの音だよこんな時間に、業者ってこんな時間に入るものなのか?
そしてなんと音は多分この部屋の前で止まった。
何をしてるんだ?気になって全然眠れないし、息遣いというか
気配を感じる。仕方がないので体を起こしドアスコープを除いた。
だが誰もいなかった。
おかしいな確かに覗く前までは絶対に人がいるような
物音がしていたんだけれども、
近くの部屋の人が部屋を間違えただけか。
そんなことを考えたまま気づけば眠っていた。
そんな出張も日々業務をこなし帰る日になった。
行き同様新幹線に乗り込む。
今思えば軽い旅行みたいな感じで案外良かったかもしれない、
新幹線から見える山間の景色を見ながら考え事をしていたらトンネルに入った。
ぼーっと暗闇を見ていたら何かが視界に入ったので見た。なんなら二度見した。
いやいやいやいや、待った。窓の端からなんか覗いてきとるーーーーーーー
え、やばいやばいやばい、
ビビりすぎて声も出なかった、鼓動がやばい、
周りの乗客達には見えているんだろうか、声をかけようと目を離した。
しかし、ふと見た時にはいなくなっていた。
深呼吸した。
やばめの幻覚か、でも幻覚なんて人生で一度も見たことない、
にしてはリアルすぎる記憶だ。
外見はよく見るような兜を被った人だった、
タブン、オチムシャ。みたいな。
でもそんなところにいるわけがない、
ほぼ300キロで動いてる新幹線の車外だぞ。
そしてトンネルを抜けた、
ものの数十秒ほどだったのだろうが体感は数十分にも感じた。
あれはなんだったんだろう、思えばここ数日変な体験ばかりしている。
今度同僚に話してみよう、きっと不思議がられるに違いない。
新幹線は予定通り関東に戻り帰路に着いた、
自宅は千葉県の北西部にあり一人暮らしをしている。
久々の家だ、といってもたった数日空けただけだが。
翌日同僚達に出張の報告と不思議な体験の話をした。
面白そうに聞いてくれたが、真に受けて聞いているやつはいない、
何かに憑かれてるんじゃね、と言われてしまった。
そりゃそうだよな、やっぱ疲れてたんだよな多分。
場面がフラッシュバックするおかげで全然仕事に集中できない。
定時後早々に仕事を切り上げ自宅へと向かう。
階段を登りつつ部屋を見る、あれ電気点いてね。
消したつもりだったんだけどな、まじか電気代もったいな。
そして鍵を開けた。
「お!」
「・・・!?うおっっっ?!」
あ、あいつだ、この間のやつがいる、ビ、ビる、というか、言葉にならん。
げ、幻覚じゃない、鎧兜の若者が正座して俺のマンガ読んでる。
動けない、こ、これが金縛りなのか、どうしよう。
「す、すみません誰ですか、警察呼びますよ・・・」
なんとか声を出した、やばい。
「待つのだ!拙者はハラダムネトキと申す!貴殿に憑いてきてしまったゆえ
これからよろしく頼む!」
何言ってんだこいつは、コスプレイヤーだかなんだか分からんが、
冗談にも程がある。というか刀持ってるぞ、
結構危険な場面なのでは?今。
「何が目的ですか?、お金ですか、人呼びますよ」
「目的、んーそうだな。未練といえば、
名誉ある死に方で果てることができなかったゆえ、武士として誉ある死場所を
求めたい!そのために世を彷徨っておる」
待て、まじで何言ってるんだ?この人