模擬戦
俺は現在煙の拠点の王座に座っていた。周りには何人もの煙のメンバーがいる。昨日の戦闘により拍白社も一時的に活動休止となったため今回は白煙のメンバーもちゃんといる。そして俺の横には二人の女性が立っていた。黒炎と白炎の2人だ。黒炎は黒煙を仕切っている。白炎は白煙を仕切っている。二人も相当な実力者でそこら辺の魔法使いなら何人集まっても勝てないレベルだ。
「では話をはじめます。」
始めに話し始めたのは黒炎だった。
「前回、創影との戦闘についてですね。言ってしまいましょうか。我々黒煙は負けたといってもいいでしょう。火炎様があの場にいなければ壊滅とは行かずとも拍白社もかなりのダメージを負ったことでしょう。それほどまでに創影は強かった。私たちは創影という組織を侮りすぎていた。現に裏社会では雷帝の黒味が氷結のライルにギリギリとはいえ負けた。個人の戦闘能力は確実に創影の方が上だ。だがだからと言って負けていい理由にはならない。今日から1か月、黒煙は強化合宿を行う。」
「白煙も同行します。最近は戦闘などとは無縁でしたが今回のようなことが起きたとき白煙だけでも処理できるようになっておかなければなりません。」
「火炎様はどうしますか?」
「そうだな…」
『来週には夏休みだし…』
「来週から合流する。」
「わかりました。では私たちからのは話は以上です。他に話がある方は?」
「あのぉ…」
そろりと手を挙げたのは白煙所属の白蝋だった。
「何かしら。」
「えっと…白落様がいないのですが…それはどうしてでしょうか。」
白落は白煙所属で黒味と同じ地位にいる人物だ。
「白落には創影の今後の動きを調査しに行ってもらっている。明日には帰ってくるそうだ。質問は以上か?」
「はい。」
「じゃあ今回はここまで。解散。」
そう黒炎がいうと全員その場を去っていった。残ったのは黒味、白味、黒炎、白炎、そして俺の5人だけだった。
「今後、火炎様はどう動かれる予定ですか?」
「そうだな。最近落雷の原羅に会ってないから会いに行くつもりだ。そこでいくつか情報を聞こうと思っている。」
落雷は裏組織の名前で落雷と煙はかなり仲良くさせてもらっている。落雷は戦闘系の組織というよりは情報収集を主として稼いでいる。そして落雷のボスが原羅なのだ。原羅とは長い付き合いで実力は黒味や白味以上だ。
「わかりました。それでは失礼します。」
「ああ」
そしてその場には俺一人となった。
・・・
次の日、学校では試合が行われることになっていた。
「ええ、もうすぐ夏休みに入るわけだが、今の実力を測るために二年と三年で一対一の戦いをしてもらう。ペアは各々決めてもらうが必ず同じ学年同士は戦わないように。余ったやつは余ったやつ同士で組んでもらう。それではペアを組んだところから試合を始めてくれ。」
そう言われ俺はすぐに歩き出す。三年生と合同事業の時点で組む奴は決まっていた。
「よろしくお願いします。」
「よろしくね。」
こいつは山田七海。七海も裏の世界の住人で、乖離という組織に所属している。乖離は煙と仲がいいわけではないが創影とは敵対関係にあるため一時的に手を組んでいる。
「いやあ、うれしいなぁ。かの有名な黒煙と拍白社を運営している白煙のボスと戦えるなんてね。」
乖離とは手を組んでいるため拍白社を俺達が運営していることも知っている。
「今は普通の学生だ。」
「普通の学生が三年生で学年4位の実力を持つ私の攻撃を余裕の表情で避けられるかな?」
俺は七海の放つ攻撃を軽々と避けている。
「本気を出していないだろ?避けれて当然だ。」
『ここですぐにやられれば乖離から下に見られる可能性もなくはない。裏でも関係も考えるなら少しは頑張らなければならないな。』
裏世界で過ごしている以上表世界では大きくは動けない。だがこういう時は動かなければならない。
『目立ちたくはないが三年生に七海以外の知り合いがいないからな…友人は増やすべきだったか…』
そんなことを考えている間も攻撃が飛んでくる。俺はそれを紙一重で避けきる。
「避けるだけなんて芸がないなぁ。少しは攻撃してよぉ。」
「挑発とみていいのか?」
「いいよ。挑発のつもりで言ったし。」
「そうかい。」
俺は氷の槍を召喚させ七海に向かって放つ。七海は余裕でその攻撃を避ける。瞬間大きな音が鳴り響く。その方向には小丸がいた。目の前には大きなクレーターができており中心で三年生の男子が気絶していた。見た感じ命に別状はなさそうだ。
『模擬戦であの威力の魔法を放つとか…ばかだろ…』
俺がそんなことを考えていた時、横から声がする。
「よそ見してていいのかな?」
俺はすぐに声の方向を向く。だが時すでに遅し。魔法陣が展開され無数の火の玉が発射される。俺は魔法で凍らせていく。だが反応するのが遅すぎて数発攻撃を食らってしまった。
「よそ見なんてするからだよ。」
「あの爆音を聞いて見るなって方が無茶だと思うがな。」
「そうかな?煙のボスならこの程度で気を取られないとおm」
「それ以上しゃべるな。」
俺は一瞬で距離を詰めて七海の身体に触れる。触れた部分がかなりの速度で氷と化していく。七海は即座に俺との距離を取る。
「女子にそんな簡単に触れる?普通。」
「裏世界なら常識だと思うが?」
「じゃあこれは本当の勝負って認識でいいのかな?」
「いいや。俺は限界だ。魔力が残ってない。ギブアップだ。教師に伝えてきてくれ。」
「はあ、本気の君と戦えると思ったのに…しょうがないか…」
そう言いながら七海はとぼとぼと教師に報告しに行く。
『これなら煙のメンツも持つだろ。』
そう思いながら俺は横になった。