第二話 『いつでも殺せる』
最後まで読んで下さい。お願いします。
『殺人条例』…その異様な言葉がクラスをあっという間に沈黙させた。
ようやくクラスの委員長の沙原 舞が口を開いた。
「あのう、その、それはどういった条例なんでしょうか?」
一見この『殺人条例』というふざけた名前の条例の存在を認めたと自分から言っているようなものだが、普段面白くて温厚な楠木先生が普段しないような真剣な表情だったので、誰もこんなふざけた条例あるわけないと言えないのだ。
「それはね」
と答える楠木先生
「今日の今からこの島の中で殺人が起こったとしてもなんの罪にも問われなくなると言う条例なんだよ。」
意味が分からない、これがもし本当だとしたら何で…?
恐る恐る僕は…口を…開いた。
「なんでそんな条例が生まれたんですか?」
声は震えていた。そして先生は、
「いい質問だね徒然君!それはね、簡単に言うと世界の人が増え過ぎたからなんだよ」
先生は続ける。
「世界の人口は2030年に約85億人、2040年に約91億人、そして今年2050年には97億…四捨五入して100億人もの人がこの地球で暮らしているのはみんな知ってるよね?」
「そして今世界的人口爆発による問題とされる地球の領土問題、食料問題、資源問題、それにより生まれる戦争…それを無くすためにはどうすればいいのか世界政府は考えたんだよ」
「その答えがこの『殺人条例』だったわけだ。」
「説明しておくことはコレくらいかな?質問ある人ー?」
そこで、クラスのビビりで有名な渡海 健がビビりながら言う
「いい意味が分からないよ!そんな条例!世界政府はおかしくなっちゃったのか!?ここにいるみんなで殺し合いをしろってか!?」
ごもっともな発言だ。そう冷静に分析できてる自分に驚く、それもこれも普段からこういう小説を読んでいるからだろうか?
「おいおい、渡海君。何か勘違いしてるね?」
「な、何が」
「みんなで殺し合いをしろなんて一言も言ってないよ。この条例はあくまで『義務』じゃなくて『権利』なんだよ」
「つ、つまりどういうこと…?」
「殺しがOKになっただけで別にみんなこれまで通り殺し合いをしないで生活しても良いんだよ?」
「え、そ、そうなの?」
謎だ、この条例を作った意図が分からない。こんなルールで何が狙いなんだ?
「でもね、」
と先生。それと同時にバァン!と教卓を叩いて先生は
「俺はいつでもお前らを殺せるんだからな?」
「ひぃっ!?」ビビりはビビる
「冗談ですよね?」と沙原が言うが
「本気だ」
「なんなら、証明の為に死にたい奴とかいる?」
答えはクラス全体の沈黙だった。
「あ、面白い話してやるよ。」
先生は急に笑いながら言う
「お前らさ、小学の頃からのさ、戦闘訓練の授業ってのあるじゃん?」
「はい…」と数名。
「あれさ、実はさ、やってたのこの島だけなんだよね!」
えっ、と衝撃が走る。戦闘訓練の授業というのは小学校から実施される科目で基本的な戦闘技術、例えば、銃撃だったり近接戦闘だったり。国語、理科、数学、社会、戦闘で5教科と略されるくらいには良くやる授業で、テストもそれで成績が左右されるくらい重要だった。それが、やってたのはこの島だけ?先生からの説明ではまるで、日本本島の方でもやっているというような言い方だったのに…
「それもこれも全部、より充実した殺し合いが出来るようにする為に最初から仕込まれた授業だったんだよ」
「あとな、島から脱出なんてことは考えない方がいいぞ?何故なら港からも、空港からも、この島で生まれて育った奴はそっから出られないようになってんだよ」
「でもな、外から来た人間、例えば外国や本島とかのな、そういう奴には専用のパスポートがあって、出入り自由なんだよ。それが何を意味するか分かるか?」
僕は困惑しているが、冷静に推理してみる。わざわざこんな死の島に来たい人間なんているのか?みんな怖がって来ないと思うのだが…
そんなことを考えていると、ある結論に辿り着いた。
「つまり、日本中…いや世界各地からサイコ・キラーがこの島にやって来て住民たちを殺そうとするかもしれないという事ですか?」
「グッドアンサーだ。徒然君?君は飲み込みが早いなあ。そんな感じで、それ以外は今までと変わらないからこれからもよろしくな?えーと…ここは2年B組だったな。ハハっ…みんなも徒然君を見習って早く理解することだね。ということで、これで朝のホームルームを終わる。みんな、いろいろ戸惑ってるみたいだし、挨拶は無しで良いよ!それじゃ、バイバイ!」
そう言って、楠木先生は教室を後にした。
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