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剣聖の娘が賢者の弟子〜その娘は将来魔王になる予定です〜  作者: 桜庭古達
第一章 運命「的」な出会いは数多に
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日陰者の陰謀


最果ての国、『フレリア国』。

そこは一日に日の光がが僅か三時間しか灯らない国。


そしてその国の一角にある住宅街のとある一つの家。

その中で、無精髭の生えた三十半ばの一人の男と、年の離れた一人の少女がいた。


「クックックッ……ヌフフフフフ……ワッハッハッハッハ!!!」


男は手に持っている一冊の本を片手に握りしめ不敵に笑っていた。そしてその笑い声は段々と形を変え……


「フッフッフ……クヒっ、クヒヒヒヒ……!」


「うるせぇ!あと笑い方が気持ち悪すぎるわ!!」


思わず、と言った様子でその男の顔面に少女の蹴りゴッ!!!っと炸裂する。


「うぶぅ……」


想像よりも強烈なその蹴りはその男を黙らせるほどの威力は十分に持っていた。

その拍子に少女の腰のあたりから狐の尻尾のようなものがスルリと姿を見せる。


「あちゃあ、あまりに気持ち悪い笑い声を出しやがったせいでオレの幻術が解けちまったじゃねぇか。人化の幻術って結構ムズいんだぞ」


その少女の言葉通り、尻尾だけでなく他の場所からもその『人間らしくない』特徴が見て伺えた。代表的なものを挙げるとするなら……その耳。


「くっそ!結構しっかり蹴り入れやがって……。そんな悪い子には……こうだっ!」


蹴られた箇所をさすりながら、その男は反逆と言わんばかりにその少女へと迫る。そして……


頭からひょっこり出てる二つの、それこそまんま黄金色の狐の耳をフミフミフミフミフミ……


「ちょ!やめろご主人!それくすぐったっ、〜〜〜〜〜〜っ!」


……この瞬間だけを切り取ったら、その場面は傍から見たら事案以外のなにものでもないが、彼にとってはイタズラしたペットを少し懲らしめる程度の認識しかない。


ひとしきり、その男の『お仕置き』が終わるとその男は「ふぅ」と一息つき、さもやりきった感を出す。


「今の俺はかな〜り気分が良いからこれくらいで許してやろう。何しろ、こいつがようやく手中へと収まったんだからなぁ!」


そうして、その男は再度その本を取り改めてその存在を確認する。


「クックック、かの高名な『次元の賢者』が創り出した次元魔法の魔法書。それに加えて俺のこの魔力が合わされば……クヒヒヒ……」


「お、オレに感謝しろよ。厳重な王城の警備をくぐり抜けてやっとの思いで手に入れたやつなんだからな。もっとオレを褒め称えろ」


先程の影響か、震える言葉とともに胸を張って自慢した後、男の手の近くに少女はその小さな頭を突き出す。

男の方も、慣れた様子で先程とは打って変わり優しい手付きで、


「おー偉い偉い。よーしよしよしよし」


犬でも撫でるように頭を撫でる。その際に、耳をペタリと伏せているところが、なんだかんだでこの少女の可愛らしいところであり、ご主人の立場なのに暴言を吐かれるのも信頼を寄せてくれているからなのだということを実感する。

それが男にとっては何にも代えがたい嬉しさの一つだ。


「ところでご主人」


頭を撫でられながら上目遣いで男の方を見上げて尋ねる。


()()()()はいつ決行するの?その魔法書も手に入ったんだから作戦自体は文字通りいつでもできるはず」


「それな。正直この魔法書さえあれば距離なんて殆ど意味をなさない。それこそ次元魔法なのだからな。時間帯も()()()()()()()し、行って返ってくるだけ。まぁ、強いて言ってしまえば夜の方が色々と都合がいいし、何より危険性も低い。あの家には絶賛『剣聖』が鎮座しているからな。モタモタしてたらすっ飛んでくる事間違いないだろう。だからバレずにことが済みそうな夜の方が良いのだろうが……」


長々と話したのち、チラリとその少女を一瞥する。


「夜はダメ。オレの力が出ない。ご主人も知ってるだろ」


「だよなぁ。……『()(きつね)』も大変だぁ。んま、だからこそこの国だと()()の審査にも滅多なことがない限り引っかからずに侵入することができたんだが」


そう呟きながらその男はニヤリと笑った。


陽ノ狐。

それはとある魔物の一種であり、成体は全長三メートルをゆうに越すという。

その名の通り陽の狐。陽の光が差し込んでいる朝から夕方において力を発揮する魔物であり、ダンジョンと同じように魔物の種族で危険度が分類されている表では、陽ノ狐はB級に値するという。

しかし、その成体の単一個体で国が危ぶまれるレベルの危険性を孕んでいるが、日中という縛りが存在するため夜間に襲われることが多く、陽ノ狐自身もそのことが分かっているのか積極的に人を襲うようなことはしない。


「しっかし、これを用意したと言えどまだまだ根本的な準備が済んでねぇんだ。そうなるとこの国では少しばかり狭すぎる」


「と、いうことは?」


「あぁ、そうだ」


そうして男は立ち上がる。


「この国を出るぞ。アイツが夏季休暇期間のギリギリまで準備を済ませる。全ては……魔物たちのために……!」


男は改めて決心する。

隣についてきてくれる、魔物という存在に生まれてしまったがために不幸な生活を送らなければならなかった、不幸な少女のために。


―――生涯でただ一人を愛した、彼女のために。






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