第一話:出会いの季節は薔薇が咲く
はじめまして
ミディア寝子です
のんびりとした日々を描いた作品を読みたい方
是非ご一読ください
明るい朝の光が瞑っている瞼の裏側まで届いてくる。
ゆっくり階段を降りてトーストを焼いている間に二度寝する。
今日も良い目覚めとは程遠い朝。
トーストをかじりながら朝の散歩のルートを考える。
毎日の日課である散歩はまだ気に入った散歩道を見つけていない。
今日は少し遠くまで歩いてみようか。
川の方まで歩いたら川に沿って山に向かってみようか。
「行ってきます」
誰の返事も返ってこないこの家にもう慣れたはずだが、それでも寂しさはまだ残っている。
ドアを開けて外に出る。
もう春も終わりに近づいているのだろう。
藤の花ももう終わり頃か。
川までの道を下りながら家の花壇に咲いている花たちを見る。
花は季節を教えてくれる綺麗な生き物だ。
大きなお屋敷の前を通ると薔薇がところどころ咲き始めていた。
美しい薔薇には棘がある。か…
地味な私には無縁の言葉だ。
川沿いには草が生い茂っている。
散歩道にはむいてないかもしれない。
そんなふうに評価しながら山へと足を運ぶ。
ちょうど橋のましたに差し掛かる時うめき声が聞こえた。
「ふぅうにゃう…」
誰かが倒れているのかと思い声を頼りに近づくと足に硬い何かが当たる。
声の主は足に当たったダンボールの中でうずくまっていた。
____ネコ…?
小さく痩せたネコは怯えているようだ。
どうにも、そのダンボールにはボロい布切れが一つあるだけだった。
誰かに捨てられたのだろう。
取り敢えず、保護したほうがいいだろう。
このままでは死んでしまいそうだし、そうなると私は罪悪感でいっぱいになるだろう。
警察に届け出を出してみることにしたが、場所をうまく説明できるだろうか。
〜PrrrrrPrrrrr…はい、もしもしこちら○○警察署です。どのようなご要件でしょうか?〜
「実は散歩をしているときに捨て猫だと思われるダンボールに入った子猫を見つけたのですが…はい、はい、場所は橋の下です。はい、それではこちらでお待ちしてますね。」
良かった…話をきちんとできたみたいだ。
それにしても、この猫は何をこんなに怯えているのだろうか。
ピーポーピーポー…とサイレンが近づいてくる。
「こんにちは。電話をくださった方で間違いないでしょうか。何故こちらに?」
「朝に散歩するのが日課なのですが…その、まだ散歩する道を探している途中で…実は、気に入った散歩道がないといいますか…」
「散歩をしていたということですね?」
「はい」
しまった。余計なことまで喋ってしまったみたいだ。
これだから、人見知りは何の役にも立たない。
「それでは、この猫を保護し、ひとまず動物病院へ連れていきます。その後、元の飼い主の捜索をし、里親を探します。連絡感謝いたします」
そうか。確か、愛護動物についての法律が…あったんだ。
でも、この子ともう少し一緒にいられないだろうか。
私は今独り。この子も今独り。
独り同士仲良くできるといいんだけど。
「あ…あのっ」
「どうしましたか?」
「こ…この子の里親、なんですが」
「はい」
「私がなっても…いいんでしょうか?」
「勿論ですよ。では、動物病院へ一緒に行ってその後ご自宅までお送りしましょう」
「っありがとうございます!」
良かった。
これで、私もあなたも独りじゃないね。
その後、この子が動物病院で大騒ぎし先生まで傷つけることになった。
先生はいつものことだと言っていたが、この子は捨てられたあと野良として過ごしていたから余計に警戒されたのだろう。
これから私とこの子はどうなるのだろうか。
少なくとも、今までのように独りでいることは減るだろう。
綺麗になったこの子の艶のある黒色の毛並みを見ながら私は
”まずはこの子の生活必需品を買いに行こう”
と思ったのだった。
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※この物語はフィクションです