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僕の世界は厨二病 ~厨二病でも真っ当な社会人として生きていきたい。が無理のようです~  作者: 笛伊豆


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97.ブラック企業の管理職かよ!

 そんな感じで毎日が過ぎていった。

 世間ではどっかの国で内戦が激化したり相沢さん(聖女様)が急行して聖歌で鎮めたり、ムー大陸は実は地底帝国だったというフェイクニュースが否定されたりしていた。

 何かの協定の調印も無事に済んだらしくて都内の警戒体制も解除された頃には4月に入っていた。

 その間、ずっと待っていたんだけど誰かが訪ねてくるということはなかった。

 信楽さんたちが話題にしないので僕も忘れかけていたんだけど。

 ある日、信楽さんと二人で朝食を摂っていると唐突に言われてしまった。

「矢代先輩ぃ。

 今日の午後、空いてますかぁ?」

「空いてるどころか予定なんかないから」

「良かったですぅ。

 いよいよ先方が矢代邸(ここ)に来るのでぇ」

 な、なんだってーっ!

 突然過ぎない?

「いつの間にそんな話が」

「スケジュール調整していたですぅ。

 なかなか上手い日程が組めずにぃ」

 そうなのか。

 でも相沢さん(聖女様)はまだ外国だし静村さんもどっかに行ってるよね?

「集まれるの?

 ていうか依代(神様)はいなくてもいいんだっけ」

 そんな話をぼやっと覚えているような。

 信楽さんが頷いた。

「一応ぅ、静村先輩にはぁ同席して貰いますぅ。

 後はぁ私ぃと比和先輩ぃ、それにパトリシアさんだけですぅ」

「何だ。

 その程度でいいんだ」

 矢代邸(要塞)まで用意して、しかも脱出用のヘリや装甲四輪駆動車なんかも揃えたというから凄い事になるんじゃないかと思っていたのに。

 まあ、今信楽さんがあげた人たちは矢代グループの中枢というか(かなめ)だからね。

 事業じゃなくて厨二病関係の。

 シンプルイズベストということで。

(矢代グループのじゃないだろう。

 矢代大地(ガキ)の側近だ)

 無聊椰東湖(オッサン)が呆れたように言ってきた。

 そうかな?

(矢代グループというか事業体には大量の幹部がいるだろう。

 だがそいつらは呼ばれていない。

 王国や帝国もだ。

 何より宇宙人が外されている)

 比和さんは王国人だけど。

(メイドさんはもはや王国の臣とは言えないと思うぞ。

 矢代大地(ガキ)の配下だ)

 そうなのか。

 でも比和さんって高巣さん(王女様)の言う事は聞くけどね。

 まあいいか。

「それではぁよろしくお願いしますぅ」

 信楽さんが何でもない風に言うので気が楽だ。

「えーと、やっぱり正装(オーダーメード)着た方がいいかな」

「矢代先輩のぉ自由ですぅ。

 どっちかというとぉ家庭的(アットホーム)な格好の方がいいかもですぅ」

 お見合いにそれはヤバいんじゃないのかと思ったけど信楽さんがそう言うんならいいんだろう。

 午後というからには昼食後か。

 会食じゃないってことは単なる会見かな。

 ていうかお見合いじゃないよね?

「その、相手って女の子?」

 すると信楽さんはちょっと困ったように視線を逸らせた。

「女の子もいますぅ。

 でも、だけじゃなくてぇ」

「あ、それはそうか」

 お見合いの場に当事者が一人で訪ねてくるわけがない。

 最低でも両親くらいは付き添ってくるはずだ。

 本当にお見合いじゃないよね?

「お見合い……と言えなくもないですがぁ。

 少なくともぉ矢代先輩の結婚の話じゃないと思いますぅ」

 信楽さんが言ってくれて助かった。

「それは良かった」

「最も先方がぁどう思っているのかはぁ不明ですぅ。

 そこら辺はぁ矢代先輩が自分で判断して欲しいですぅ」

 訳が判らなくなってしまった。

 まあしょうがない。

 信楽さんが僕に判断しろと言うんだからそうすればいいんだろうな。

 何か用があるらしくて信楽さんは去った。

 比和さんも仕事があるというので午前中は都内に行っているしパティちゃんも行方不明。

 しょうがない。

 僕は自分の部屋に戻った。

 居間(リビング)でちょっとテレビを観てから仕事部屋に引きこもる。

 仕事はあるんだよ。

 相変わらず書類にサインと判子だけど(泣)。

 ちなみにデジタル捺印で済む書類はデスクトップで処理出来るけど、紙の書類は毎日誰かが台車に載せて運んでくる。

 大抵はメイドさんだ。

 最初はいちいちドアをノックして入室許可を求めてきていたんだけど、面倒くさいから直接仕事部屋に運んでくれるようにお願いした。

 僕が寝ていたり朝食に行ったりしている間に運ばれてきて置いてある。

 結構大量なんだよね(泣)。

 まあアニメみたいに山のように積まれているとか一日中書類仕事という程じゃないけど、それでも一目見てうんざりするくらいはある。

 僕は今日の分の書類を作業机の上に置いてペンや理事長印などの道具をチェックした。

 既に揃えてあるんだけど。

 矢代邸のメイドに手抜かりは無い。

 気がついて珈琲を煎れてから机に向かう。

「碧さんよろしく」

『大地さんの秘書の碧です!

 今日はまず矢代財団の書類からです。

 印鑑を用意して下さい』

 この場合の「用意」は矢代財団理事長印以外の判子を引き出しに仕舞うという意味だ。

 間違えたらヤバいからね。

 ちなみに碧さんは液晶ライトに付属したカメラで机を見ている。

 それ以外にもどっかにある監視カメラで全体を俯瞰しているはずだ。

 露骨なストーキングだけどもう諦めた(泣)。

「わかった」

『最初の契約書は国連登録の難民支援NPOへの物資提供に関する協定締結文書です。

 サインと捺印は3ケ所。

 付箋がついていますので』

「わかった」

 書類は英文だったけど僕は構わず「矢代大地」とサインして捺印した。

 とても読んでる暇もないし理解出来そうにないからね。

 せめて碧さんにダイジェストで何の書類かだけでも説明して貰っているんだよ。

 何も判らないけど(泣)。

 僕は碧さんの指示でサクサクと書類を処理した。

 碧さんの指示に従っていれば間違えようがない単純作業だし、間違ってもすぐに注意して貰える。

 中学生でも出来る作業だけどこれが矢代財団理事長()のお仕事です。

 処理済みの書類は専用の箱に入れておく。

 未処理の書類の山がなくなったら箱ごと台車に運んで、さて次だ。

 箱はまだ大量にあったりして(泣)。

『さあ!

 今日は午後からお客様だと聞いています。

 さっさと片付けましょう!』

 ブラック企業の管理職かよ!

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