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僕の世界は厨二病 ~厨二病でも真っ当な社会人として生きていきたい。が無理のようです~  作者: 笛伊豆


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96.大物だなあ(泣)。

 聞いてみたらさすがに仕事中に漫画を読むことはないということだった。

 それはそうだよ。

 しかもパティちゃんの仕事って事務とかじゃない。

 年齢的にはまだ中学生だけど矢代興業COO(信楽さん)の助手というか代理だ。

 役員クラス。

 経営会議で漫画なんか読むはずがない。

「移動時間が結構あるので。

 社用車の中で読んでいます」

「ならいいけど」

 まあ、パティちゃんがどこで何しようが僕に関係ないんだけどね。

 それに経営者は自分の仕事に役立つと思ったら何してもいい。

 遊んでいるように見えても、ていうか本当に遊んでいてもその結果として事業の役に立ったり会社が発展すればOK。

 もちろん人前で公然と遊んでいたら周囲や取引先の人たちに反感を買うからそこの所は気をつけないといけないけど。

 僕、どうもその辺が苦手で一人の時もつい真面目に仕事してしまうんだよね。

 もっとサボらないと。

(別にいいんじゃないか)

 無聊椰東湖(オッサン)が口を出してきた。

 いいの?

矢代大地(ガキ)が仕事しようが遊んでいようが何も変わらんと思うぞ。

 全部お嬢ちゃんがつじつまを合わせてくれる)

 さいですか(泣)。

 反論出来ないなあ。

 信楽さんがいれば僕なんか無用の長物だからね。

 でも僕、結構「仕事」してるんだけど。

(サインやデジタル捺印だろう。

 矢代財団や宝神の理事長として)

 それはそうだけど。

 僕が仕事としてやっているのはまさにそれだったりして。

 契約書や公的書類とかの最後に責任者が署名・捺印する欄があるんだよね。

 日本のお役所や保険業界、銀行業界は遅れていて未だに大量の紙の書類が必要だ。

 今時複写用紙にボールペンで署名っていつの時代かと思う。

 でも慣習としてまかり通っていて、何かを公的に決めるには責任者のサインと捺印が必要なんだよ。

 僕の主な仕事がそれ。

 ぶ厚い契約書とか約款の部分はすっ飛ばして付箋がついた場所にサインして捺印する。

 矢代グループや宝神内部での書類は大体デジタル化したから電子捺印なんだけど、外部との取引ではまだ大量の書類が飛び交っているんだよなあ。

 だから僕は何なのか判らない書類に毎日サインして判子を押し続けている。

 そういう話を小説で読んだことがあったっけ。

 とある王国の宰相だかその代理だかの人が毎日物凄い量の書類を処理しているんだけど、全然読まないで決裁するわけ。

 その人も就任直後は一応頑張って内容を読んで理解してから決裁しようとしたんだけど、あまりにも多すぎてすぐに挫折してしまった。

 だから自分が決裁しているのが何なのか判らないまま、毎日仕事している。

 ひょっとしたら今自分がサインした書類は自分を反逆罪で処刑する判決文かもしれないんだけど、そんなのどうでもいいという(笑)。

 まあ、僕の場合は信楽さんが目を光らせてくれているし、一応碧さんが書類の内容を超ダイジェストで説明してくれるからね。

 「矢代興業の○○への資本参加」とか「矢代航空の旅客機売買契約」とか。

 怖いから取引の内容や金額は聞かないようにしているけど。

(で?)

 無聊椰東湖(オッサン)の冷たい声が響いた。

 すみません(汗)。

「興味深いお話しですぅ。

 タブレットでぇ読めるんですかぁ?」

「サイト専用端末もありますけど、基本的には何でも大丈夫です。

 宝神支給のタブレットでも読めます」

 ぼーっとしていた僕を置いて信楽さんとパティちゃんの間で話が弾んでいた。

「信楽さんも漫画読むんだ」

 聞いてみたら頷かれた。

「今はぁ読んでないですぅ。

 でもぉ前世(・・)でぇ」

 あ、そういうことか。

 信楽さんは次元漂流者(ディメンションワンダラー)として中学2年生の約8ケ月を百回近く繰り返した。

 という設定の厨二病患者だ。

 8ケ月を百回なら60年以上生活した事になる。

 だから信楽さんはその間に暇に任せて色々やったそうだ。

 図書館の本を全部読破してみたり。

 アニメや映画をコンプリートしたり。

 当然、漫画も読んだんだろうな。

 そして中学2年生女子が読むんだったらやっぱり少女漫画?

「だけじゃないですぅ。

 少年漫画や成人向けもぉ読みましたぁ」

「……18禁も?」

「一応ぉ。

 もっともぉあまり興味がなくてぇ」

 幸いにもBLやエロマンガには走らなかったらしい。

 中学2年生だからというよりは頭が良すぎたせいだろうね。

 漫画サイトの事を知らないのは当時まだ中学生だったからだな。

 タブレットを買うお金もないし契約も出来ないし。

「ということは一応、漫画の知識はあるわけね」

「はいですぅ。

 でもぉ私には合わないみたいですぅ」

 それはそうかも(笑)。

 大企業の経営どころか下手するとリアルで世界征服出来てしまいそうな頭脳の持ち主なんだよ。

 架空の世界に興味を引かれないのが当たり前だ。

「でもないですがぁ」

 信楽さんがぼそっと言ったけど

 まあいいけど。

 そういえば比和さんが来ないな。

 空中に向かって言ってみる。

「碧さん。

 比和さんどうしてる?」

『ご自室で執務中です。

 緊急の要件が入ったということで大地さんに謝罪が入っています』

 ありゃ。

 仕事が入っちゃったか。

 休暇のはずなんだけど矢代興業クラスの経営者だったらそんなの関係ないもんね。

 僕を除いて(泣)。

「何かお手伝い出来ますか?」

 パティちゃんが言ってくれたけどいらないと思う。

「比和先輩からぁ連絡が来てないですぅ。

 つまりぃ私ぃやパトリシアさんにはぁ関係ない要件ということですぅ」

 信楽さんが言ってくれた。

 そうだよね。

 多分、比和さんの担当事業関係の問題なんだろうな。

 大したことがないとも言える。

 信楽さんやパティちゃんに関係してくるとすると単なる事業じゃなくて矢代グループ全体に関わってくる問題ということだ。

 そこまでではない、と。

「碧さん、比和さんに繋いで大丈夫かな」

『聞いてみます。

 大丈夫とのことです』

 碧さんの声に被さるように比和さんの声がした。

『ダイチ様。

 お手数をお掛けして申し訳ありません』

 碧さん、居間(リビング)のスピーカーに繋いできた。

「それはいいんだけど、大丈夫?

 こっちに来られる?」

『少々時間がかかりますが。

 お伺い出来ます』

「じゃあ待ってるから」

『はい、ダイチ様』

 電話? が切れた。

 便利なのか不便なのか。

「ならばぁゆっくりするですぅ。

 パトリシアさん、お勧めのぉ漫画ってありますかぁ?」

 平然と漫画談義に戻る信楽さん。

 大物だなあ(泣)。

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[一言] 小生が神なら このあたりで主人公を勇者召喚のオマケとして 一人でいる時に攫いますな で 呑気にバカンスに入る主人公と 発狂しているメイドちゃんと不思議ちゃん もしくは、メイドちゃんと一緒に…
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