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僕の世界は厨二病 ~厨二病でも真っ当な社会人として生きていきたい。が無理のようです~  作者: 笛伊豆


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83/383

83.僕は贅沢なんかしてないよ!

 信楽さんが矢代家のみんなに集合をかけたらしい。

 相沢さんは普通に海外ツアーに行ったから全員じゃないだろうけど。

「他に呼ばれた人って誰か知ってる?」

「知りませんが推測は出来ます。

 比和師匠は当然として後は静村先輩くらいですね。

 一応、依代(神様)が一人はいた方がいいので」

(エン)さんは必要ないと」

「はい。

 妖怪(あっち)系の問題ではなさそうですから」

 やっぱり(エン)さんって妖怪枠か(泣)。

 魔王(ぬらりひょん)とか言っても別に何かの力があるわけじゃないからなあ。

 強いて言えば神気に弱いくらいで。

 妖精(フェアリー)も苦手らしい。

 弱点だらけだよね。

 まあいいや。

「だったらパティちゃんはこれから矢代邸(ここ)に常駐するの」

「はい。

 信楽師匠次第ですが新学期が始まるまでに片付けたいですね。

 それまでは動きません」

 さいですか。

 知らないうちに作戦計画が着々と進行中だった。

 接触(コンタクト)があってから動きが速いな。

 向こうも急いでいたりして。

 でも僕、未だに相手の正体とか全然判らないんだけど。

 それを言うとパティちゃんも頷いた。

「私にも判りません。

 情報(データ)が少なすぎます。

 私は信楽師匠じゃありませんし」

 やっぱり信楽さんはパティちゃんから見ても異能(チート)らしい。

世界記録(アカシックレコード)には書いてないの?」

 つい聞いてしまったら苦笑された。

 食べながら器用だなあ。

「あれは方便みたいなものですね。

 そういう記録媒体を読めるというわけではないんです。

 何となく納得出来るというか」

「そうなんだ」

「大体、もしそんなものがあるとしたって人間が読める言葉では書いてないと思いますよ。

 そもそも時系列的な記録とは限りませんし」

 なるほど。

 ついでだから聞いてみたらパティちゃんは悩みながら教えてくれた。

 そもそも世界記録(アカシックレコード)なんて便利なものは存在しない。

 だけど膨大な情報の集積がどこかにあることは確かで、パティちゃんはそれを見る事が出来る。

 はっきりとじゃないけど。

「超精密な航空写真を凄く離れた所から見ているかんじでしょうか。

 あるいはグランドキャニオンみたいな雄大な風景の中で立ち尽くしているとか。

 何かを読むというよりは感じたり漠然と把握する、という感覚です」

「それで何か判るの?」

「大まかには。

 ここには大きな谷があるとか、ここら辺はビルがたくさん建っているとかですね。

 実際には全然違いますが、言葉にするとそんな感じです」

 悠々と食べ続けながら説明するパティちゃん。

 ついでにオレンジジュースも飲み干してしまった。

「ああ美味しかった。

 ご馳走様でした」

「どういたしまして」

 いつの間にかそばにいたメイドさんが綺麗に一礼すると食器を下げる。

「お代わりはいかがですか?」

 ついでに聞いてきたので僕は「珈琲を」と返したけどパティちゃんは欠伸した。

「私はもういいです。

 それじゃあ大地さん。

 失礼して」

「あ、うん。

 ごゆっくり」

 そして美少女中学生、というよりは矢代邸副司令官は消えた。

 自分の部屋に行って寝るらしい。

 何で居間(リビング)に来たんだろう。

矢代大地(ガキ)に状況を説明するためだろうな。

 中学生と思うな。

 あのお嬢ちゃんも人外(チート)だぞ)

 それは判っているけど。

 でなければ信楽さんや比和さんが側に置くはずがないもんね。

 でもこの理論には欠陥がある。

 僕って何?

(矢代財団の案山子(オーナー)だ)

 さいですか(泣)。

 まあいいけど。

 何か気が削がれてしまった。

 僕も戻るか。

 お代わりの珈琲を飲み干してから空中に向かって言ってみた。

「自分の部屋に戻るから」

『イエス・マイマスター』

 もういい!(怒)

 食器なんかの片付けはメイドさんがやってくれるらしいので僕はそのまま部屋に戻った。

 居間(リビング)のソファーに座ってから温泉に入ってくれば良かったと思いついたけどこれから行くのも面倒くさい。

 僕の部屋にも浴室くらいはあるんだよ。

 温泉じゃないけど。

 手早くシャワーを浴びてバスタオルで身体を拭いていると声がした。

『大地さん。

 お届け物です』

「何?

 宅配?」

『そのようなものです。

 大型荷物なので入室の許可を求めていますが』

「ちょっと待って」

 僕は急いで服を着てから言った。

「どうぞ」

『スマホの電源を入れて下さい』

 ポケットから声がするんだけど僕が電源入れる必要ってあるの?

 廊下に面したドアの鍵が外れる。

 そしてでかい荷物が運び込まれてきた。

 スマホが言った。

『ご希望のマッサージチェアです。

 どこに設置しますか?』

 仕事早っ!

 さすがは矢代ホームサービス。

 僕は作業員の人にお願いして居間(リビング)のテレビの正面に設置して貰った。

 ソファーセットの一部に配置された形だ。

 これでマッサージされつつテレビを観ることか出来る。

 作業員の人はてきぱきと作業すると一斉に頭を下げてからあっという間に撤収した。

 チェアが故障したり移動させたくなった時は呼んでくれればいつでも対処してくれるそうだ。

 凄い。

(金をかければこれだけの事が出来るのか)

 無聊椰東湖(オッサン)が畏れ入ったみたいに言った。

 確かに。

 そこら辺の宅配や引っ越し業者には無理な話だよね。

 静かになってからマッサージチェアに座ってみる。

 うん、お風呂場の脱衣場にあった奴と同じだ。

 本来なら公共施設に置かれるような高級機種なんだろうな。

 それを個人で使うなんて贅沢だけどいいのだ。

矢代大地(ガキ)って庶民を自称する割にはそういうの平気だよな)

 無聊椰東湖(オッサン)が感心と侮蔑が混じったような口調で言ってきた。

(そういや矢代大地(ガキ)も一応、金持ち家庭の子供だったか。

 あれだけでかい上に広い庭がある家で育ったわけだし。

 贅沢に慣れてると。

 納得した)

 僕は贅沢なんかしてないよ!

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