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僕の世界は厨二病 ~厨二病でも真っ当な社会人として生きていきたい。が無理のようです~  作者: 笛伊豆


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82.そんなに切羽詰まってるの?

 情報過多というよりはその内容に衝撃を受けてぼやっとしているとスマホが言った。

『信楽様よりメッセージです』

 電話じゃなくて?

 スマホを見ると「今起きた」とあった。

 そのまま電話する。

「もしもし」

『はいですぅ』

「お早う。

 よく休めた?」

『充分休みましたぁ。

 ところでお食事ですがぁ』

「僕はもう食べちゃった。

 ご免」

『判りましたぁ。

 それではぁ』

 あっさり切られた。

 その辺はドライなんだよね。

 もっとも僕と信楽さんって別にそういう仲じゃないし。

(どういう仲なんだ?)

 ええと、まずは心理歴史学講座の教授と助教でしょ。

 矢代興業では役員と最高執行責任者(COO)だから同僚でいいか。

 矢代財団の理事長と理事。

 宝神総合大学の理事長職は関係ないよね。

 つまり仕事仲間(同僚)だった!

矢代大地(ガキ)の仕事はお飾りだけどな)

 それはそうだけど。

 でもちゃんと働いて給料貰ってるんだからいいんだよ。

 サラリーマンなんかみんなそんなものでしょう。

(お前、今全国のサラリーマンを敵に回したぞ)

 誰も知らないって(笑)。

 でも信楽さんは違う。

 実の所、信楽さんの「本業」は矢代グループの経営というよりは総帥臭いからなあ。

 いやむしろ総統?

(それは違うだろう。

 黒幕だ)

 まあいいけど。

 でも今までの話をまとめてみたら、もう矢代グループは一企業のレベルを超えている。

 下手すると国に匹敵するような組織になってるんじゃないだろうか。

 それも民主主義や共産主義じゃない。

 資本主義でもない。

 完全な独裁だ。

 怖っ!

 まあ信楽さんだから問題ないと思うけど。

 だって信楽さん、野心ってなさそうだもんね。

 ていうか、もし信楽さんに野心とかがあったらもう世界征服し終わっている気がする。

(……あまり考えんことだな。

 矢代大地(ガキ)の身に余る)

 確かに。

 考えるのは止めよう。

 何か気が削がれたので仕事も止めだ。

(もともとしてなかったじゃないか)

 そうだけどこの部屋にいる事自体が仕事なんだよ!

 休むとすればやっぱり居間(リビング)かな。

 ややこしいけどこの場合の居間(リビングルーム)は僕の部屋じゃなくて矢代邸のだ。

 あの高級サロンみたいな。

 あそこにいれば誰か来るだろうし。

 というわけで僕は身支度を調えて居間(リビング)に向かった。

 スマホの案内(ナビ)で廊下を歩く。

 何度も往復しているはずなのに道が覚えられないって何なの?

『矢代邸は心理的錯視や建築学的錯覚誘導によって内部構造を隠蔽しています』

 突然スマホから声が聞こえてきた。

 慌てて見たら画面の右上に小さく碧さんの顔があった。

「どういうこと?」

『簡単に言えば道や内部構造を覚えにくい構成になっているということです。

 例えば廊下にしても直線ではなく曲線を主に用いて視界を狭めると同時に方向感覚をずらし』

 改めて見たら確かにそうだった。

 直線で見通せる場所が少ないし、真っ直ぐ歩いているはずなのにだんだん方向が変わっていたりして。

 継ぎ足し増設満載の不法建築みたい。

『それはありません。

 この矢代邸は矢代建設の総力を持って構築した芸術品です。

 要塞でありながら居住性に優れ、美観的な視点からも』

「判ったから」

 ほっとくといつまでも続きそうな碧さんを黙らせる。

 僕が迷子になる理由はそれか。

 つまり矢代邸って攻め込まれたり侵入された時のために敢えて面倒くさい構造になっていると。

 昔のお城と同じだったりして。

(要塞だからな)

 そんなもんに住みたくないよ!

 でもしょうがない。

 居間(リビング)に着くと美少女ウェイトレスさんが控えていた。

「胡堂くんご免」

「私は矢代様のお付きですので」

 淡々と応える胡堂くん。

 僕一人だから駆り出されたらしい。

「別に給仕とかはいらないから」

「そうは参りません。

 私の仕事でございます」

 とりつく島もないなあ(泣)。

 僕は溜息をついて言った。

「それじゃあ珈琲を」

「かしこまりました」

 一礼して消える胡堂くん。

 疲れる。

矢代大地(ガキ)も大変だな。

 いくら美形でもあの無表情は俺でも怖い)

 だよね。

 誰でもいいから一緒にいてくれたらメイドさんたちも近寄ってきてくれるんだろうけど。

「お早うございます!」

 パティちゃんが入って来た。

「お早う。

 矢代邸にいたの?」

「いえ。

 シャーロット先輩の所の寮に泊まりました。

 色々ありまして」

 言いながらソファーに座るパティちゃん。

 私服だけど女子大生に見える。

 美少女と美女の中間くらいかな。

 本業は中学生だけど(泣)。

 そこにワゴンを押したメイドさんが寄ってきた。

 「サンドイッチとオレンジジュース貰えますか?」と声をかけるパティちゃん。

 本当に中学生なんだろうか。

 メイドさんは僕の珈琲を配膳してから「かしこまりました」と一礼して去った。

 胡堂くんじゃなかった。

 パティちゃんが一緒だからメイドさんでいいのか(笑)。

 徹底しているなあ。

 パティちゃんが眠そうなので聞いてみた。

「朝ご飯まだだったの?」

「貫徹に近かったので。

 食欲がないのでパスしてきました。

 矢代邸(ここ)に戻ったら急にお腹が空いてきて」

 貫徹って仕事してたのか。

「仕事はもういいの?」

「シャーロットさんの所との調整は大体つきましたから。

 後は私がいなくても大丈夫です」

 中学生(パティちゃん)がいないと大丈夫じゃない仕事してるのかシャルさんの所は(笑)。

「大変だったね」

「急でしたから。

 本当は何日かかけてやる予定だったんですけれど。

 でも信楽師匠に呼ばれたので。

 あ、ありがとう」

 何でもないことみたいに言って運ばれてきたサンドイッチにかぶりつくパティちゃん。

 聞き捨てならないぞ。

「信楽さんに呼ばれた?」

「はい。

 接触(コンタクト)があったんですよね?

 ならば私も大地さんの側にいなければ」

 そんなに切羽詰まってるの?

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