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僕の世界は厨二病 ~厨二病でも真っ当な社会人として生きていきたい。が無理のようです~  作者: 笛伊豆


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75.そっちかよ!

 また逆上(のぼ)せてきたので一度上がって露天風呂(そと)を覗いてみる。

 ざあざあ降りになっていた。

 これじゃ入れないなあ。

 別にいいけど。

「今日はもう無理ですね」

 いつの間にか隣にいた比和さんが言った。

「そうだね」

「どうなさいます?」

「上がるけどいい?」

「はい、ダイチ様」

 隣に立っている比和さんは水着なんだけど胸が物凄い。

 普段は服で隠れているシルエットがくっきりと浮かび上がってしまっていて目に毒なんてもんじゃない。

 でもアニメや漫画でよくあるみたいな不自然な巨乳じゃないからね。

 大きい上に形がいい。

 僕はなるべく比和さんを見ないようにしながら最後にシャワーを浴びてから風呂場を出た。

 信楽さんはいなかった。

 比和さんも「失礼いたします」と言いながら去ってしまった。

 それはそうだよ。

 着替えなきゃならないし。

「碧さん」

 脱衣場で空中に向かって言ってみたらすぐに返事が返ってきた。

『はい、ダイチ様』

「何だよそれ。

 比和さんの真似?」

『そういうのが好みかと』

 時々思うけど碧さんの思考回路(プログラム)ってバグッてない?

「馬鹿言ってないで。

 これからの予定とかどうなってるか知ってる?」

 聞いてみた。

『特にないです。

 さすがにこの時間になってから何かをするには』

「それはそうだけど。

 そういえば他のみんなは帰って来ないの?」

『はい。

 聞きます?』

「いやいい」

 何か碧さん、あざとくなっているような。

 まあいいか。

「それじゃ居間(リビング)かな」

『そうですね。

 伝えます』

「よろしく」

 これで済んでしまうんだから簡単だなあ。

(何が済むって?)

 無聊椰東湖(オッサン)には判らないか。

 信楽さんと比和さんは僕にくっついてくるはずだ。

 何か予定があれば別だけど。

 でも碧さんはないと言うし、他のみんなも帰って来ないと。

 だとしたら寝るまで何かしないといけないよね?

(そういうことか)

 そういうこと。

 今のやり取りで碧さんから信楽さんと比和さんに僕のいる場所が伝わったはずだし、メイドさんたちもつまみや飲み物を用意してくれると思う。

 後は寝るまで歓談かな。

矢代大地(ガキ)も狡猾……じゃなくて人使いが上手くなったもんだ)

 いいでしょ!

 僕は水着を脱いで服を着た。

 そのまま暖簾をかき分けて廊下に出ると美少女が待っていた。

「胡堂くんがなぜ……って僕の護衛か」

「そういうことだ。

 最低一人はそばについていろという命令だからな。

 もちろん見えない所にもいるが」

「でもいない場合もあるような」

「ケースバスケースだ」

 相変わらず素っ気なく言う美少女(胡堂くん)

 メイド服が抜群に似合ってるけど、胡堂くんの場合はどっちかというと秋葉原的なんだよね。

 伝統的なロングスカートのメイド服なのに萌え要素が大きすぎるというか。

「ジロジロ見るなよ」

「ご免。

 じゃあ行こうか」

 胡堂くんの先導で居間(リビングルーム)に行くとソファーテーブルにお茶の用意がしてあった。

 碧さん、グッジョブ。

 僕がソファーに座っても胡堂くんは立ったままだった。

 ここまで来てメイドかよ。

「胡堂くんはどうするの?」

「私はメイドでございます。

 比和様と信楽様がおいでになるまで待機させて頂きます」

 澄ました口調で応える胡堂くん。

 ソプラノだよ!

 どう見ても美少女。

 だが男だ(泣)。

 胡堂くんが仕事(演技)に入ったらもう駄目だ。

 完璧な美少女になってしまうからね。

 ヲタク仕様の。

 僕はお茶を飲みながら待つことにした。

 テレビを観ていると十分ほどで二人が居間(リビング)に入って来た。

 女の人って準備に時間がかかるから、これって驚異的な速さなんじゃない?

「ダイチ様。

 お待たせして申し訳ありません」

「ご免なさいですぅ」

 二人は何と浴衣姿だった。

 完全に温泉旅館のノリだなあ。

 だったら僕も浴衣にしとけば良かった。

 ポケットのスマホは沈黙していた。

 さすがに空気を読んだか。

 二人を座らせてお茶を勧める。

 僕が。

 比和(メイド)さんが反応したけど今はご主人様だからね?

「ありがとうございますぅ」

「お言葉に甘えさせて頂きます」

 大人しく従ってくれて助かった。

 ちなみに胡堂くんは気がついたらいなかった。

 神出鬼没は超能力かも。

 替わりに本物のメイドさんが数人、ドアの側で待機していたりして。

 落ち着かないけどしょうがない。

「でもやっぱり水着のお風呂はちょっとだったね」

 愚痴ってしまった。

「はいですぅ。

 やはりぃ日本人はぁ全裸で入るべきですぅ」

「私はダイチ様のご要望があればいつでも!」

 いやいやいや!

 そういうことを言いたいんじゃなくて!

「まあ、雨が降ってきたからね。

 僕がすぐ出ちゃったし。

 そういえば寝椅子(マッサージチェア)を使うのを忘れていたな」

 思わず呟いたら信楽さんが反応した。

「マッサージチェアはぁ矢代先輩のお部屋にぃ納品手配済みですぅ。

 すぐに使えるはずですぅ」

 相変わらず早い!

 そういえば昨日、そんなことを言われたっけ。

「そうなの!

 ありがとう」

「私ぃは報告を受けただけですぅ。

 碧さんとぉ矢代ホームサービスの連携ですぅ」

 するとポケットのスマホが振動した。

 褒めて、か?

 無視することにする。

寝椅子(マッサージチェア)ですか。

 あれは長時間の会議直後に疲れを取るのに便利ですね。

 私も本社の役員室に置いています」

 比和さん、そんなことしてたのか。

 いや別にいいんだけど(泣)。

「そう思ってぇ皆さんのお部屋にもぉ同型機をぉ導入手配したそうですぅ。

 順次ぃ納品されるはずですぅ」

 そこまで。

 矢代興業、金に糸目は付けないにも限度があるぞ。

 別に良いけど(泣)。

「それはいいですね」

 比和さんが弾んだ声で言った。

「やっぱりマッサージチェアっていいんだ」

「はい。

 私の部屋にも入るんですね。

 ならばリラックスしつつメイドアニメを!」

 そっちかよ!

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