表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕の世界は厨二病 ~厨二病でも真っ当な社会人として生きていきたい。が無理のようです~  作者: 笛伊豆


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

74/383

74.僕は患者じゃないよ!

「何でもない。

 ちょっと眠くなって」

 適当に言い訳したらほっといたような表情で下がる比和さん。

 僕が湯あたりでもしているのかと思ったのかも。

 比和さんはそのまま後退して岩に背中を預けた。

 良かった。

 首までお湯に浸かっているからあの驚異の質量兵器は隠れて見えない。

 いや、それはそれで逆にハーレムアニメの温泉回的な印象(イメージ)が強化されてるんだけど(泣)。

 信楽さんは気持ち良さそうに目を閉じていた。

 誰も何も言わない。

 満ち足りた雰囲気というか。

 確かに露天風呂ってそういう所があるよね。

「あ」

 信楽さんが短く言った。

 続いて僕たちも声を上げる。

 水滴が額にぶつかってきたんだよ。

「雨ですね」

「小雨ですぅ」

 降り出したか。

 そういえば静村さんがいないから天候制御が出来ていないと。

 いや静村さんの場合、自分に関係ない所はほっとくからね。

 つまり自然現象だ。

 当たり前だけど(泣)。

「上がりますか?」

 比和さんに言われたけどこの程度なら。

「むしろ気持ちいいかも。

 雪でも降ったら最高だよね」

「無理ですぅ。

 もう3月ですぅ」

 判ってます(笑)。

 でも静村さんや相沢さんがいる時に下手な事を言ったら実現してしまうかもしれない。

 いないから言えるんだよ。

 それからはみんな黙っていた。

 雨脚がだんだん強くなってくる。

「上がろうか」

「はいですぅ」

「ですね」

 もう十分暖まったというよりは逆上せ気味だから引き上げる。

 屋内に入ってとりあえず水を浴びた。

 気持ちいいなあ。

 さて。

 本当なら身体を洗う所だけど水着だからね。

 どうしようと思って振り返ったら二人は洗い場にいた。

 なるほど。

 身体は無理でも髪は洗えるか。

 特に比和さんは長い黒髪なので機会があれば手入れしているはず。

 あれ、清潔に保つのに結構手間がかかるらしいんだよ。

 信楽さんは短髪(ショートカット)だけど、だからといって手を抜けるわけじゃない。

 二人は当分洗髪に没頭しそうだったので僕は風呂場の隅の方に向かった。

 入ってみたい場所があるのだ。

 そう、サウナだよ。

 前に覗いた時はスイッチか何かが切れていて暑くなかったんだけど、ドアを開けてみたらムッとした空気がぶつかってきた。

 よし。

 一応二人に声を掛けてからサウナに入る。

 でかい階段みたいになっている場所にはバスタオルが敷いてあったので適当に座ってみる。

 正面に温度計があって120度くらいだった。

 大丈夫だよね?

 まあ、倒れても二人が助けてくれるだろうし。

 じっと座っているとだんだん汗が出てくるのが判った。

 これってダイエットにはならないんだよね。

 脂肪じゃなくて水分を強制的に体外に排出しているだけだから、下手すると脱水症になる。

 体重は減らない(笑)。

 いや、僕はダイエットしなきゃならないほど太ってないけど。

 むしろ標準体重以下だし。

「失礼します」

 ドアが開いて二人が入って来た。

 水着だけどドキッとするよね。

 比和さんは髪をまとめてタオルでくるんでいるので印象(イメージ)が別人のようだ。

 信楽さんは全然変わってないけど。

 二人は節度を持った距離ソーシャルディスタンスを保って僕の正面に座った。

 眼福?

 いやなんか二人とも色っぽいというか。

 比和さんの胸や太ももとか信楽さんのうなじとかが自己主張してきて困る。

 僕は目を閉じた。

 餌を前に永遠に「待て」を命じられている犬みたいだ。

 二人も何も言わない。

 我慢大会になってしまった。

「僕は出るから」

「はい」

「はいですぅ」

 立ち上がって言ったら二人は短く応えただけだった。

 既に僕の存在は眼中にないみたい。

 女の戦い?

 這々の体でサウナから脱出して水風呂に飛び込もうとしたけど、あいにく準備されてないみたいなので水シャワーを浴びる。

 疲れた(泣)。

 身体が冷えてきたから洗い場に行って髪を洗うことにする。

 ついでに身体も洗っていたらサウナのドアが開いて二人が出てきた。

「さすがでございます」

「まだまだですぅ」

 何か試合の後のエール交換みたいになってない?

 二人はシャワーの所に行って水を浴びつつ何か話していた。

 更に親密度が増しているみたい。

 僕には入れない世界だ。

(女子会に混ざろうなどとは考えるなよ)

 無聊椰東湖(オッサン)に言われるまでもないよ!

 身体を洗い終わっても二人の話が続いていたので大風呂に浸かることにする。

 それにしても贅沢だよね。

 ちょっとした温泉旅館並の風呂場を独占だ。

 これが社員の福利厚生だとしたら矢代警備だかホームサービスだかっていい職場だなあ。

 僕の家らしいけど(泣)。

矢代大地(ガキ)はホテルチェーンのオーナーという所だな。

 事業施設を自由に使い放題という)

 それはそうだけど、ここはホテルじゃないし。

 自宅……じゃないか。

 思い出した。

 大昔の小説で読んだことがあるけどホテルに「住んでいる」人っていたらしい。

 つまり自分の家があってホテルに一時滞在してるんじゃなくて部屋を長期契約で借りているという。

 掃除洗濯はホテルの従業員がやってくれるし食事も出る。

 ベッドメイキングなんかプロだ。

 セキュリティもしっかりしている上に万一の場合の対応も万全。

 医者もすぐに呼んで貰える。

 良いことずくめだとか。

 問題はお金がかかる事だけど高給取りの人だったら大した問題じゃない。

 何より自宅の維持管理や家事なんかに手を取られないのが魅力だと書いてあった。

 でもそういうのって大抵独身の人なんだよね。

 家族持ちがホテル住まいって何か違う気がする。

 別にいいんだけど。

 よく考えたらこれ、介護サービス付きのマンションに住むようなもんだな。

矢代大地(ガキ)みたいに手がかかる患者にぴったりかもな)

 僕は患者じゃないよ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ