73.悩殺するつもりじゃないよね?
興奮状態の比和さんに今は何を言っても無駄そうだったので放置することにする。
タブレットを手に今のOVAの続編を探し始める比和さん。
ないよそんなの(泣)。
信楽さんとヒソヒソ話す。
「どうしよう」
「どうしようもないですぅ。
落ち着くのをぉ待つだけですぅ」
信楽さんも頼りにならなかった。
仕方がない。
「信楽さんはどう?
何か観たいアニメはある?」
「今のところはぁないですぅ。
さっきぃ天才少女アニメを検索してみたらぁ多すぎてぇ」
一応、気にしていたのか。
天才少女はアニメネタとしてはポピュラーだもんね。
転生少女もいないことはない。
だけど中学生を百回やったような天才少女は聞いたことないし。
僕が思いつくのは友達を救うために時間遡行能力を利用して何度も同じ時間を繰り返す魔法少女だけだ。
でもあの話は悲惨だからなあ。
あまりお勧めしたくないけど傑作ではあるんだよね。
なので信楽さんに教えたら目を光らせた。
「そんなものがぁあったのですかぁ」
「テレビアニメだけど劇場版もあるから」
「判りましたぁ。
今度観てみますぅ」
すぐに観たいと言い出さなくて助かった。
正直、今日はもう映画はたくさんという気がする。
気がついたら夜というよりは深夜なんだよ。
劇場版アニメとOVAを1本ずつ観たからなあ。
恐る恐る言ってみた。
「比和さん。
ちょっといい?」
「はい、ダイチ様」
反射的に僕を見てくれる比和さん。
良かった(汗)。
「もう遅いからさ。
アニメは後にしない?」
「……そうですね。
申し訳ありません」
気がついて落ち込む比和さん。
違う、そうじゃない!
「またいつでも映画室に来ればいいし。
それに多分だけど自分の部屋やスマホでも観られるから。
だよね?」
「はいですぅ。
お部屋のテレビでも観られますぅ」
良かった。
「判りました!
続きは今度にします!」
「うん。
後で僕が知ってるメイドアニメのリストを送るから。
暇な時に見てみたら」
「はい!」
輝く笑顔を見せてくれる比和さん。
ある意味チョロインかも。
「私ぃもリストが欲しいですぅ」
信楽さんが割り込んできた。
「うん。
送るよ」
「はいですぅ」
何とか収まった。
さて。
映画室を出て廊下を歩きながら聞いてみた。
「これからどうする?
解散にはまだ早いし」
「お風呂に入りたいですぅ」
信楽さんの爆弾宣言!
解散しないのに?
「そういえばダイチ様。
プールにお入りになられたとか」
比和さんが抑揚の無い声で言った。
信楽さんと一緒に、という言外の意味が伝わって来る。
うーん。
しょうがない。
いや手はある!
「じゃあ混浴といきますか。
水着で」
「はいですぅ」
「賛成です!」
何か僕、物凄くヤバい綱渡りしているんじゃない?
まあいいけど。
信楽さんがその場でメイドさんにお願いすると、メイドさんはヘッドセットでどこかに連絡していた。
そこまで?
「……準備出来ました。
5分後に入れます」
「はいですぅ」
早すぎない?
「というわけで行くですぅ」
信楽さん、凄すぎ。
というよりは矢代メイドサービス、じゃなくてホームサービスか。
「凄いね」
「もともとお風呂の用意はしてあったはずです。
どちらにせよ最終的には入浴する予定ですので」
比和さんも平然としていた。
これがプロの世界か(違)。
ここ、僕んちだよね?
超一流ホテルじゃなくて。
(本物の大富豪の家はこんなもんじゃないと思うぞ)
無聊椰東湖が言ってきた。
(ここのサービスは確かに凄いが設備的には大したことはないだろう。
要塞なんだし)
それはそうだけどせっかく忘れてたのに!
(忘れたら死ぬぞ)
死なないよ!
脳内バトルにも飽きた。
風呂場は昨日見た通りだった。
でも暖簾が変わっている。
「混」って何?
いやいいんだ。
忘れよう。
さすがに着替えは別の部屋じゃないと駄目だから信楽さんと比和さんとはそこで別れる。
後で合流するそうだ。
僕は服を脱いで籠に入れると用意されていた水着を着た。
プールに入る時に選んだのと同じだった。
そこら辺までカバーしているわけね。
しかしお風呂に水着で入るって初めてかもしれない。
混浴も(泣)。
一応シャワーを浴びてから直接露天風呂に向かう。
ひょっとしたらまた胡堂くんが待機してるのかと怯えていたけど誰もいなかった。
夜の露天風呂って幻想的でいいよね。
四角く切り取られた空には星が少なかったけど。
この辺、結構明るいのかも。
ゆったり浸かっていると何か眠くなってきた。
今日も色々あって疲れたなあ。
休暇のはずなのに仕事している時より忙しい気がする。
「ダイチ様」
「来たですぅ」
綺麗な声が聞こえて振り返ると水着のグラビア美女? がいた。
グラスマス過ぎない?
隣にはスクール水着の美少女。
こっちは清楚系を狙ってるような。
二人のギャップが凄すぎて言葉を失ってしまった。
「お先に入っているから」
かろうじて応える。
二人は何も言わずに進んでくるとお湯に滑り込んできた。
比和さんが入ると波が押し寄せてきたような?
恐るべき質量(違)。
そのまま寄ってくる比和さんはマジで何かのドラマ的な印象だ。
信楽さんは慎ましく少し離れた所に落ち着く。
首から上しか見えないのでハーレムアニメの温泉回みたいだ。
比和さんの方は……何も言えません(泣)。
「ダイチ様?」
不思議そうに覗き込んでくる比和さんは胸から上がお湯から出ていて凄い。
悩殺するつもりじゃないよね?




