52.朝っぱらからエロ話に持ち込まないで!
比和さんと向かい合って座る。
テーブルと椅子はファミレスというよりは高級レストラン風だった。
調度が豪華で。
「「頂きます」」
ご飯と味噌汁に鮭の切り身やお漬け物や海苔がついた伝統的な和風朝ご飯だった。
生玉子は僕が苦手なのでメニューに入ってない。
代わりにちょっと違反だけど茹で玉子があった。
「ご飯とお味噌汁のお代わりはありますので」
「この鮭美味しいね」
「鮭もあります」
そうなの。
鮭、いくつ用意したんだろう。
まあいいけど。
比和さんが煎れてくれたお茶も美味しかった。
煎れ方とお茶葉の両方が良いんだろうな。
僕は珈琲党だけどお茶も嫌いなわけじゃない。
日本茶や麦茶、ウーロン茶まで何でも好きだ。
夏はやっぱり冷たい麦茶だよね。
「そういえばお風呂と女子会はどうだった?」
聞いてみた。
「露天風呂を頂きました。
みんなで入れるくらい大きかったのには驚きました」
全員で入ったと。
それはさぞかしラノベの温泉回的な光景だったに違いない。
全員が美女と美少女という。
「セキュリティの都合上、壁に囲まれていて外は見られませんでしたけど。
空は見えましたが」
「そうなんだ」
覗きも無理なんだろうな。
いや修学旅行とかじゃないんだから(笑)。
「その後は和室でちょっとした親睦会を」
「今更親睦ってやる必要があるの?
全員知り合いどころじゃないと思うけど」
すると比和さんはちょっと遠い目をした。
「そういう意味の『親睦』ではなくて。
むしろ決起集会でしょうか」
「決起!」
「はい。
一致協力してダイチ様をお守りすると」
何でそれが決起になるんだよ!
まあいいや。
きっと何か僕に言えない事情があるに違いない。
僕、一見矢代グループの中心みたいだけど情報遮断されているからね。
もちろん疎外されているわけじゃないと思うけど差し当たって必要のない情報は伝わってこない。
それは僕が望んだ事でもある。
余計な事にカカワリアイになりたくない(泣)。
(矢代大地はそれでいい。
知らない方が上手くやれることもある)
何か無聊椰東湖が賢人的な口調になっているけど無視。
「まあいいや。
その後は?」
「すぐ解散しました。
お風呂に時間を取られすぎてもう深夜でしたので。
皆さんお疲れのようで各自ご自分の部屋でお休みになられたみたいです」
「それは良かった」
みんなの分の部屋もあると聞いていたけど本当だったらしい。
ただあるだけじゃなくて就寝出来る程度には内装や備品も揃っていたと。
女性は細々した道具とか服が必要だから整えるのは大変だったろうな。
「比和さんはよく寝られた?
僕はバタンキューだったよ。
いいベッド入れてくれたみたい」
「そうですね。
私のお部屋のベッドも高級品でした。
低反発マットレスとか二重スプリングとかそういったものだと思いますが」
さすがに比和さんは詳しかった。
矢代ホームサービスを統括する担当役員だもんね。
もっとも今の矢代ホームサービスは清掃やメイド派遣だけじゃなくて警護やセキュリティもやってるみたいだけど。
医療も。
気にするのはよそう。
美味しかったのでご飯と味噌汁と鮭もお代わりしてしまった。
僕、小食の方なんだけどやたらに空腹だったし。
美味しいからいくらでも入るんだよね。
「ご馳走様。
いつもだけど比和さんのご飯は本当に美味しいよ。
家庭の味というか」
つい余計な事を言ってしまった。
比和さんは頬を染めて「ありがとうございます」と小さな声で応えてくれた。
うーん、新婚家庭?
というには比和さんが低姿勢過ぎるけど。
やっぱり旦那様と奥様じゃなくてご主人様とメイド臭い。
それにしてもみんな起きてこない。
いつもなら誰かが乱入してくる頃合いなんだよね。
「みんな遅いね」
「まだ早いので。
お疲れのようですし」
それもそうか。
昨日は僕も大変だったけど相沢さんや炎さん、静村さんたちは後援会とかの相手もしていたんだよね。
比和さんは自分の配下との付き合いがあったし。
そういえば。
「信楽さんは大丈夫かなあ。
ひょっとしたら一番大変だったかも」
「そうですね。
信楽殿については矢代ホームサービスが最優先で遠隔体制を敷いていますから心配ないかと。
最新の報告ではまだご就寝のようです。
この際、ごゆっくりお休み頂く方が良いとの進言を受けています」
比和さんが難解な事を言ってきた。
つまり信楽さんは常時監視というか遠隔で体調管理されているわけか。
比和さんの口ぶりだと信楽さん専任の支援チームとかいそうだし。
進言があるって事は比和さんが指揮している?
じゃなくて最終決定者が比和さんなんだろうな。
「信楽殿は矢代ホームサービスがお守りします。
もちろんダイチ様も」
にっこり笑う比和さん。
相変わらず凄い事やっているなあ。
まあ僕は別にして信楽さんは矢代グループの至宝だからね。
何を置いても守らなきゃならない。
「判った。
お願いします」
「御意」
やはり随所に戦国時代が出る比和さん。
いいんだよ。
巨乳の美人で経営者でメイドで妖精でも比和さんである事には変わりはないし。
設定盛りすぎという気はするけど(泣)。
「お早うございます」
「良い朝じゃな」
パティちゃんと静村さんじゃなくて静姫様が食堂に入ってきた。
二人ともラフな格好だけど矢代家でも似たようなものだったから、既にこの屋敷に馴染んでいたりして。
「お早うございます。
すぐにお食事なさいますか?」
一瞬でメイドさんに戻った比和さんが立ち上がった。
言いながら素早くお皿なんかをワゴンに載せる。
流れるような動作が美しい。
それに速い!
さすが最高のメイドさん。
「頂きます。
今朝は和風ですか?」
パティちゃんが茶碗なんかを見たようで聞いた。
さすが直弟子。
「洋風もご用意出来ますよ」
「大地さんと同じ物でお願いします」
「私も同様で。
生玉子はいりません」
静村さんに戻った。
本当にもうこの人は。
「ただいま」
比和さんが去ると静村さんが僕の隣に腰掛けて言った。
「ここの風呂はなかなかじゃぞ。
比和の艶姿が露天の岩に映えて」
朝っぱらからエロ話に持ち込まないでよ!




