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僕の世界は厨二病 ~厨二病でも真っ当な社会人として生きていきたい。が無理のようです~  作者: 笛伊豆


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47.いや違うでしょ!

 ソファーに戻ってへたり込むと比和さんがミネラルウォーターのペットボトルを勧めてきた。

 ヴィタミン入りの奴だ。

「ありがとう」

 これで(エン)さん以外の人とはデュエットしたし、しばらくは休めそうだと思ったけど。

 まだまだ終わらんか(泣)。

「ご無理なさらないように」

 いや。

 (ヲタク)にはどうしてもやらねばならぬ時がある!

 女の子とのデュエットは死んでも完遂だ。

 デュエットじゃない気もするけど。

 イントロが流れて舞台を見たら相沢さんが輝いていた。

 文字通り後ろに光臨(ハロー)が見える。

 本気みたい。

「相沢先輩ぃ、マジですぅ」

「凄まじい『氣』を感じます。

 これは私も本気にならなければ」

 この二人でも警戒するレベルなの?

 見回したら艶然と笑う静村さんと胸の前で両方の(こぶし)を握りしめたパティちゃんがいた。

 反応がそれぞれ個性的だ。

 ちなみに(エン)さんはとっくに姿が見えない。

 聖女様の本気の神気には耐えられないと見て逃げたな。

 雑魚(モブ)である僕はどうしたら。

 思い出せ。

 さっきは相沢さんと一緒に歌っても平気だったじゃないか。

 しかも距離をとっても大丈夫だった。

 一緒に歌っている限りは。

 そうか!

 舞台の後ろのスクリーンに映っている曲名を見る。

 知ってる曲だ。

 これなら何とか。

 次の瞬間、相沢さん(聖女様)が歌い出した。

「♪……ねえ ○したら 誰もがこんな○独になるの……」

 僕は相沢さんの声に合わせて歌詞を呟いた。

 何とかついていける。

 しかしこれ、僕にはキツイんですが(泣)。

 いや相沢さんが歌う曲なんだから選択の自由は相沢さんにあるのは判る。

 僕の事も考えてくれているみたい。

 アニソンだし一応ロボット物だし。

 でもこれ、オカルト大好き少女が主人公(ヒロイン)の美形男子逆ハーレムアニメだよね?

 いや設定も面白いしストーリーもなかなかで僕は好きだけど。

 でも主題歌を歌うのはちょっと。

「♪……君を君を ○してる 心で見つめ○る……」

 断じて男が言う台詞じゃないよ!

 ていうかもし言ったら露骨な尻軽男(プレイボーイ)だよね?

(そんなことはどうでもいい。

 気がつけ矢代大地(ガキ)

 無聊椰東湖(オッサン)に怒られた。

 気がつくって何を?

(歌えてるんだから時間が止まってない)

 そうか。

 僕、相沢さんの聖歌に抵抗(レジスト)出来ている?

 気がつかなかった。

 歌うのに必死でスクリーンに流れる歌詞しか見てなかったし。

 歌いながら慎重に周りを見回すと何も変わっていなかった。

 信楽さんと比和さんは舞台に見入ってるみたいだけど、時々ペットボトルを口元に持っていったり身じろぎしたりしているから時間停止していない。

 静村さんは目を閉じてゆったりと聞いている。

 でも指でリズムを刻んでいたりして。

 パティちゃんは真剣な表情だった。

 時々頷いたり口を動かしているみたい。

 つまり誰一人として時間停止(ストップ)してない!

 やっぱ人外(チート)ばっかしかいないのか(泣)。

 そして相沢さん(聖女様)自身は凄い事になっていた。

 足元に魔方陣がある(ように見える)!

 しかも明滅しながらゆっくり回転している(みたい)。

 アニメそのものじゃない?

 相沢さん自身は光臨(ハロー)が何重にも取り巻いていて、更に大量の光の粒が周囲を舞っている(という雰囲気?)。

 物凄い光景だった。

 これが相沢さんの「本気」か!

 こんなのを教会関係者に見られたら相沢さんの意見なんか無視ですぐに列聖されてしまうだろうなあ。

 でも噂も聞かないって事は、まだ誰も見たことがないんだろう。

 厨二病患者(チート)以外は。

 いや、なまじの厨二病では抵抗(レジスト)出来ずにやっぱり時間停止させられてしまうからバレない。

 かくして神秘は保たれると。

 口の中で歌いながらぼけーっと相沢さんを見ていたら視線が合った。

 ニコッと笑いかけられる。

 意識が飛びかけた。

 もう戦略級の兵器だよね。

 何とか歌は続けたけどガチ見しているせいで身動き出来ない。

 動いたら集中が途切れる気がして。

 そして僕は最後まで歌いきった。

 口の中で。

「♪……○で今呼びかける 約○などいらない 瞳で今○を伸ばす 寒い夜も……」

 歌い終わった相沢さんが静かに頭を下げると床の魔方陣や周囲の光臨、空中の光の粒なんかがさあーっと消えていった(ような気がした)。

 なるほど。

 一般人(僕や他の人たち)はこの辺で時間停止を解かれて常態に復帰するわけね。

 恐るべし時間兵器(タイムウエポン)

 相沢さん一人で大抵の相手は制圧出来るんじゃない?

「感動しました!」

「さすがじゃ。

 よくここまでやれるの」

「凄かったですぅ」

 賞賛と拍手に包まれて舞台を降りた相沢さんは僕の所に来て言った。

「大地さん。

 出来たみたいですね」

「……何とか」

 そう答えるのがやっとだった。

 身体が怠い。

 いかん。

 時間停止しなかった代わりにエナジードレインされたか?

「ダイチ様。

 これを」

 比和さんに背中を支えて貰ってペットボトルを飲む。

 スポーツドリンクだった。

 乾いた喉には玉露だ。

 やっぱ雑魚(モブ)がチートに対抗するのは無理とは言わないまでもきついよね。

 隣で信楽さんが立ち上がった。

「次は私ですぅ」

「うん。

 聴いてるから」

 信楽さんは驚いたみたいに僕を見ると嬉しそうに笑った。

「はいですぅ。

 先輩にはぁ負担をかけないように歌いますぅ」

 それはどういう、と聞く間もなく信楽さんは舞台に上がってしまった。

 イントロに続いて信楽さんが歌い出す。

「♪……○へと続いてるセンターライン ○づえつきながらあなたを見てる……」

 バラードだった。

 アニソンだけど。

 確かこれ、バイク乗りの話だったっけ。

 劇場版の主題歌だったような。

 ネットで見たけど結構いいアニメだったなあ。

 主人公に全然共感出来なかったけど(泣)。

「さすがは信楽殿ですね。

 微塵も揺らいでおられません」

 僕の隣で比和さんが言った。

「どういうこと?」

「相沢様のパフォーマンスでございます。

 あれは間違いなく、ダイチ様への求愛(プロポーズ)です」

 え?

 いや違うでしょ!

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