39.矢代財団って(泣)。
信楽さんが言うには矢代家に対して直接的な強要や洗脳的な攻撃があるかもしれないそうだ。
ちょっと考えられないけど。
だって炎さんはともかく依代や妖精、精神生命体がそう簡単に洗脳とかされるはずがない。
信楽さんは人間だとしたって異能であることにはかわりはないからね。
こうしてみると矢代家って人外ばっかりだったりして。
僕だけ雑魚で(泣)。
「にわかには信じられんが……その危険性があると?」
静姫様の疑問に信楽さんが頷く。
「これまでの報告からするとぉ問題はぁ攻撃自体というよりはぁその当事者ですぅ。
複数のアプローチがあるにも関わらずぅ相互に何の関係もないですぅ。
本人たちにもぉ共通点があるわけでもなくぅ、それ自体がダミーである可能性がぁ高いですぅ」
「……つまり、操られている、と」
「はいですぅ。
アプローチしてきた相手を調査してもぉ手がかりがないのがぁその証拠に思えますぅ」
さすがは信楽さん。
そんな厨二病設定を平然と受け入れてるとは。
まあ本人や周囲も厨二病だし、そもそもここにいる全員がある意味乗っ取られているみたいなもんだからね。
僕にも無聊椰東湖がいるし(泣)。
(乗っ取ってねぇだろう)
似たようなものでしょ。
(全然違う。
俺は潔白だ!)
はいはい。
「私たちも洗脳されるのでしょうか」
相沢さんが心配そうに言うけど。まあ有り得ないよね。
むしろ逆洗脳して信者にしてしまう可能性が高いと思う。
「私なんか危ないかもです。
それに仕事柄色々な人に会いますからね。
大半は断れないので」
炎さんも心配そうだ。
この人の場合は知らない間に傀儡になっていたという結果になりそう。
今でも似たようなものか(泣)。
「私は大丈夫と思います」
パティちゃんが毅然として言った。
「精神攻撃を受ければ判ります。
抵抗出来なかったとしても攻撃を受けたという報告は出来ます」
いやパティちゃん。
乗っ取られる前提で話すのは止めて(泣)。
「私は」
比和さんが淡々と言った。
「侵される前に自決します。
出来れば敵を道連れにして」
比和さん勘弁して!
僕は我慢出来なくなって叫んだ。
「みんなちょっと待ってよ!
そんなことにならないように考える方が先じゃない?」
「矢代先輩のぉ言う通りですぅ」
信楽さんが援護してくれた。
「今のお話しはぁ最悪の場合ですぅ。
そこまで行く前にぃ対処すればいいだけですぅ」
それから信楽さんは「作戦」を説明した。
先手必勝。
つまりこっちから打って出る。
「というと?」
「次に接触があった時はぁ矢代先輩と会って貰いますぅ。
場所はぁこの矢代邸ですぅ」
何と!
いきなり本土決戦?
「危険過ぎます」
比和さんが叫んだ。
「ダイチ様の安全を守ることが何を置いても重要です!
不必要な危険を招き入れるなどと」
「ですがぁ、そうしないとぉこの状態がいつまでも続く可能性がありますぅ。
緊急事態はぁ出来るだけ早く終わらせるべきですぅ」
「でも!」
「まあ待て比和」
静村さん、じゃなくて静姫様が割って入ってくれた。
ただ言うだけじゃなくて、わざわざ席を立って僕から比和さんを引き剥がす。
助かった。
比和さんが僕にしがみついてきて、顔が比和さんの胸に埋もれているせいで窒息しそうだったんだよ。
ラノベによくあるシーンだけど実際にやられてみると快感どころか恐怖しかない。
死ぬんじゃないかと思ってしまった。
「落ち着け。
大地殿が窒息するぞ」
「!
申し訳ありません!」
慌てて頭を下げる比和さん。
土下座しそうだったので宥めて席に着かせるまでかなりかかってしまった。
その間、他のみんなは笑ったり俯いたりして傍観していた。
覚えてろよ。
「とりあえず信楽さんのお話を聞きましょう」
相沢さんがほんわかする口調でまとめて何とか落ち着く。
全員が席に戻った所で信楽さんが言った。
「確かにこれは賭けですぅ。
ですがぁ、いずれは接触することになりますぅ。
ならばぁこっちの体制がぁ充実しているうちにやった方がいいですぅ」
沈黙。
みんなそれぞれ考えているな。
僕は黙っていた。
そういうことね。
ややあって静姫様が言った。
「確かに。
つまりこのメンバー全員で大地殿を支援するわけだな?」
「はいですぅ。
今の所はぁ先方の接触はまず打診ですぅ。
これに乗りますぅ。
更にぃ場所と時間をぉ特定しますぅ」
「場所はここ矢代邸。
時間は?」
「ここにいる全員がぁ出来る限り集まれる時ですぅ」
そうなんだよ。
現状、先方からは接触と言ってもまだ間接的だ。
それを断っているうちは何も進展しないけど、何度やっても駄目なら向こうは接触方法を変えてくる可能性がある。
いきなり襲ってくるとか。
その場合、こっちの迎撃体制が不十分どころかほとんどない状態で不意打ちを食らうかもしれない。
僕が一人の時とか。
だから信楽さんは攻勢防御に打って出ようと。
(出来の悪いラノベだろうそれは)
無聊椰東湖はそう言うけど、そもそも厨二病自体が出来の悪いラノベ設定なんだよ。
でも現実だ。
だったら出来が悪かろうが何だろうがラノベ設定を使うしかないでしょう(泣)。
「……了解した。
つまり私は待機していて指定された日時に矢代邸に居ればいいわけだな」
「はいですぅ。
皆さんもぉお願いしますぅ」
信楽さんの言葉にみんな頷く。
「了解であります!」
「私は信楽さんについています」
「コンサートがあっても……何とかします!」
「当然です。
何ならダイチ様専属メイドとして私が常にダイチ様のお側に!」
いや比和さん無理だし。
すると静姫様が言った。
「時間はともかく。
場所はここでいいのか?
場合によっては汚染されて使えなくなるが」
何するの?
核汚染?
「構わないですぅ」
市から来さんが淡々と言った。
「この程度のぉ拠点はぁ放棄してもぉ支障ないですぅ。
消えたらぁ新しく作るだけですぅ」
矢代財団って(泣)。




