33.宗教だよそれ!
パティちゃんもこの家に住むそうで、正式に矢代財団に所属して信楽さんの配下になるのだそうだ。
この場合、矢代興業最高執行責任者じゃなくて信楽さん個人の助手というか秘書扱いになるということだった。
「矢代財団で働くの?」
「バイトとしてですぅ。
中学生ならぁ理由があればバイトが可能ですぅ」
いやパティちゃんってロンズデール財閥だかグループだかのお嬢様なんじゃ。
バイトする必要があるとも思えないけど。
「家族の承認は得ています。
信楽さんの秘書だったら無給どころかお金を払ってもいいからしっかり働いて学んでこいと」
さいですか。
まあ世界でも有名な経営者である信楽さんの元で働けるんだからね。
しかも直属の助手。
それは許可がおりるわ。
「でもパティちゃん、宝神の付属校に通うのでは」
「宝神系列の学校ですのでぇ融通が効くですぅ。
学校に通わなくてもぉレポートと試験でぇ進級出来ますぅ。
来年度は無理ですがぁ次の年度からはぁ飛び級制度も導入する予定ですぅ」
信楽さん、着々と手を打っているな。
パティちゃんなら一発で飛び級するだろう。
そこで静村さんがパティちゃんに話しかけてきたので解放してあげる。
さて。
次は魔王様か。
中性的なイケメンである炎さんがパティちゃんと入れ替わりに僕の隣に座る。
相変わらず飄々としているなあ。
炎さんって初めて会った時からイメージが変わらないんだよね。
タカラヅカ的で。
年齢も不詳だ。
まあ十代や三十代以上には見えないけど二十代ならどこでも当てはまりそう。
「炎さんって、やっぱり魔王軍を率いるの?」
聞いてみた。
「それはないです。
アレは発展的解消する予定なので。
人数が増えるし組織としての目的が変わると聞いてます」
「じゃあ魔王軍じゃなくなると」
すると信楽さんが割り込んできた。
「宝神系列のぉ一貫校の組織になりますぅ」
信楽さん、マジで何でも知っているというよりは全部の黒幕なのでは。
「ああ、そういうことか。
今までは学外の活動だったけどこれからは校内活動、いや団体になると」
「近いですぅ。
サークルみたいなものですぅ。
パトリシアさんもぉ参加する予定ですぅ」
あー。
確かパティちゃんって魔王軍の「姫」だったっけ。
何か信楽さんが打っていた布石が次々に生きてきているような。
囲碁の名人か。
「確かロンズデール兄弟も参加していたよね」
「あれはぁ冗談みたいなものですぅ。
もっともぉ留学して来たらぁ所属して貰いますぅ」
あの兄弟も妖怪の手下になるらしい。
まあ僕には関係ないからいいや。
「じゃあ炎さんってどうするの?
矢代財団の理事って閉職でしょ」
ていうか理事長である僕ですら何もしてないぞ。
全部信楽さんに投げているし。
「炎先輩はぁ拠点防衛の司令官ですぅ。
末長家のネットワークを使って貰いますぅ」
またかよ!
信楽さん、何と戦うつもりなんだろう。
宝神総合大学やシャルさんたちが作っている遊興施設があるこの辺りは地元の旧家である末長家の縄張りみたいなものだからね。
拠点防衛というと、例えばテロリストとか特殊部隊が攻めてきた時に立て籠もったりするわけか。
この矢代邸が司令部で。
僕、逃げていいかな?
ていうか陥落したときの脱出経路まで用意されている臭い。
(諦めろ。
もう矢代大地は逃げられん)
無聊椰東湖に言われると何かムカッとくるよね。
しょうがないか。
「炎さんも矢代邸な住むの?」
「部屋は貰う予定ですが。
でも実際にはあまり寄りつかないと思います。
有事以外は」
だからその「有事」って何?
いやいいんだ。
聞きたくない。
その後、僕は務めてどうでもいい雑談に励んだ。
どうせ食事の後辺りに深刻な話を聞かされるんだよ。
それまでは忘れよう。
でも静村さんから最新情報を聞いたりしているうちに何かひっかかった。
何か忘れてるような。
あ。
たまたま信楽さんと二人だけになった時に聞いてみた。
「信楽さん、渡辺さんや迫水くんはいいの?」
だってあの二人も依代だよね。
戦力で言えば核兵器みたいなものなのに。
「お二人はぁ別行動ですぅ。
重要人物の護衛や重点防御をぉ担当して貰いますぅ」
信楽さんはのほほんと言うけどそれって。
「そうか。
高巣さんや晶さんたちか。
後は宝神?」
「はいですぅ。
渡辺先輩はぁ高巣先輩とぉ谷先輩のぉ『ご学友』ですぅ。
基本的にぃ一緒に行動して貰いますぅ」
「なるほど」
「迫水先輩はぁ宝神のぉ担当ですぅ。
加原先輩やぁ武野先輩・鞘名先輩たちにぃついて貰いますぅ」
錬金術師や未来人ね。
宇宙人や超能力者はどうでもいい、じゃなくて自力防衛が可能だと思われているのか。
山城くん率いるエスパー戦隊はむしろ前線配備だろうな。
何してるのか知らないけど。
「でも他の人たちは?
NPCとか王国・帝国の人たちも」
聞いてみたらあっさり言われた。
「重点防御以外の人はぁ自力で何とかして貰いますぅ」
さいですか。
あれだね。
戦艦大和(宇宙戦艦じゃない方)も厳重な装甲がある部分とそれほどでもない部分に分かれていたと聞いているからね。
つまり信楽さんの戦略としては矢代興業の中核部分は依代《神様》の楯で守るけど後は自分で頑張ってねということか。
あれ?
「シャルさんたちは?」
「相沢先輩にぃ担当して貰いますぅ。
聖女様の加護はぁどうも空間を超越しているみたいなのでぇ」
ああ、生じゃなくてもテレビでライブを見たりやラジオで聖歌を聞いたりするだけでも何か起こるらしいもんね。
もちろん相沢さんと無関係の人には大した効果はないみたいだけど、シャルさんや宮砂さんは関係者と言っていい。
大いなるご加護の元にあると。
「でもそれ本当に大丈夫なの?
シャルさんはともかく宮砂さんはあまり関係ないような」
すると信楽さんは目を逸らせた。
「信じればぁ救われますぅ」
宗教だよそれ!




