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僕の世界は厨二病 ~厨二病でも真っ当な社会人として生きていきたい。が無理のようです~  作者: 笛伊豆


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21.やっぱ駄目じゃん!

 結局、結論は総花的なものになった。

 八里くんが今までの事例を洗い直してみることと、次に接触があった時にはその場で断らずに情報を上げるよう各部署に指示を徹底させることが決まっただけだ。

 確かに現場で撃退しているだけじゃ何も判らないからね。

 そもそも相手の目的が不明なのに緩慢なアタックを受け続けるというのは精神衛生上よろしくない。

「ダイチは気にするな。

 何かあってもお前に達する前に食い止めるから」

「それは嬉しいけど何か判ったら報告はしてよね?」

 言ってあげるとみんなに苦笑された。

「それは当然でございます。

 そもそも最初のご依頼は矢代氏からでございますので。

 そちらに報告する時には」

「そういえばそうだったっけ。

 親父は何か言ってた?」

 聞いてみた。

「すべて任せる、と」

 さいですか。

 あの親父、息子のお見合いだか何だかに欠片も関心持ってないな。

 今回の件も僕というよりは矢代興業に関係してきそうだから動いただけなんだろう。

 別にいいけど(泣)。

「それでは。

 言うまでもないと思いますが、当臨時理事会は非公式です。

 忘れて頂きたく」

 神薙さんから注意が入った後、僕たちは解放された。

「よーし終わった。

 行くぞダイチ」

 (アキラ)さんが寄ってきて僕の腕を掴む。

「行くってどこへ?」

「懇親会の後はカラオケに決まってるだろう」

 決まっているのか(泣)。

「今からやるの?」

 聞き返したら周り中の人たちに不思議そうな顔を向けられた。

「当たり前でーす!」

「懇親会の締めはやはり歌わないと」

「卒業記念ですので」

 誰一人として疑問を持ってない。

 今までの深刻な話し合いは何だったんだろう。

 まあいいか。

 そういう訳で僕たちは宝神構内にあるカラオケ棟に向かった。

 ちなみに宝神のカラオケ棟はあまりの人気に増棟を繰り返して今や十数棟からなる一大歓楽街? 化している。

 去年、芸術学部というか芸能専門職講座を立ち上げたために専用施設化してカラオケ棟ではなくなってしまった棟もある。

 ていうか今では芸能講座の敷地内にカラオケ棟が建っている状況だったりして。

 みんなに囲まれて移動しながら周りを見ると芸能コースの学生らしい人たちがちらほら見受けられた。

 芸能の専門職ってつまりアレだ。

 アイドルとかタレントとか歌手とか演奏家(ミュージシャン)とか作詞作曲家とか。

 舞台の裏方養成講座もあると聞いている。

 よく知らないけど。

 学生さんたちはみんな楽しそう、というよりは張り切っているみたいだった。

「あれって芸能講座の新入生だよね?」

 隣の信楽さんに聞いてみた。

「はいですぅ。

 と言ってもぉ大半はもともと矢代芸能の所属タレントさんやぁアイドルの人たちですぅ。

 バンドマンの人たちもぉ多いですがぁ、今のところは聴講生ですぅ」

 信楽さんは何でも知っているなあ。

 ホントにこの人って何なのか。

「聴講生って事は正規の社員じゃないわけ?」

 するといつの間にか寄ってきたシャルさんが教えてくれた。

「もともと演奏家の人たちはぁ基本フリーでーす。

 組織の歯車(サラリーマン)にはなりたくないというロック魂ということでー」

 その馬鹿っぽい話し方止めて欲しいんだけど(泣)。

 外見は未だに金髪美少女な上に口調がアレだなんて。

 こんなのが矢代興業の最高経営責任者(CEO)でいいのか。

 でも言えない。

 だって驚くべき事にシャルさんがCEOやってるのに矢代興業の事業に全然悪影響が出ていないのだ。

 むしろそのキャラクター(笑)が世間にウケていたりする。

 多分、社長(丁稚)である宮砂さんの涙ぐましい努力の成果なんだろうな。

 大口開けて笑うシャルさんの向こうに宮砂さんの感情を喪失した顔が見えた。

 既にゾンビになって相当たっていると見た(泣)。

 気がつかないふりをしよう。

 話を逸らせる。

「そういえば美形が多いような」

「アイドルやぁ歌手はぁそれが基本でーす。

 でも最近は化粧(メイク)技術の発達であまり関係なくなってまーす」

「矢代芸能にはぁメイクアップアーティストやスタイリストのぉ講座もあるですぅ。

 タレントさんとぉ相互協力関係ですぅ」

 そう来たか。

 つまり矢代芸能って芸能を芸能(エンタテイメント)たらしめている技能や人材を丸ごと抱え込んだと。

 ただ雇うだけじゃなくて宝神の専門職教育体系に組み込んでしまったみたい。

 普通だったらそんなことしたらお金がいくらあっても足りないというか大赤字なんだろうけど矢代興業配下の企業は無敵だ。

 お金なんか証券市場からいくらでも沸いてくるもんね。

 競合企業はたまったもんじゃないだろうなあ。

 他の芸能プロダクションなんか壊滅してるんじゃない?

「大丈夫ですぅ」

 信楽さんが突然言った。

 碧さん(サトリの化物)は封じたけど信楽さん(ご本尊)は無理だもんね。

 でも信楽さんならいいのだ。

 むしろ読んで貰わないと僕が詰む。

「今のぉ日本の芸能(エンタテイメント)関係企業の大半にはぁ矢代興業の資本が入ってますぅ。

 表向きには知られてませんがぁ矢代芸能のぉ子会社みたいなものですぅ」

 やっぱし。

 既に業界ごと征服済みだったみたい。

 僕、矢代興業の役員として一応籍は置いているけど極力関わらないようにしていたからね。

 むしろ知りたくなかった。

「ならいいや。

 アイドルの人たちも社員なの?」

「ほとんど聴講生でーす。

 というのはアイドルって専門職とは言い難いのよね。

 一生の職業じゃないし。

 宝神は専門職大学だから。

 そもそもアイドルという概念が曖昧で。

 『卒業』したら別の仕事しなきゃならないから」

 シャルさんの話し方が真面目になった!

 さすがのシャルさんも自分の配下の事は真剣に考えているみたい。

「じゃあみんな聴講生のまま?」

「それは不明でーす。

 ワタシにはわかりませーん!」

 やっぱ駄目じゃん!

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