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僕の世界は厨二病 ~厨二病でも真っ当な社会人として生きていきたい。が無理のようです~  作者: 笛伊豆


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20.嬉しいけどほどほどにね(泣)。

「先方の目的が判らんのは確かだ」

 (アキラ)さんが腕組みして言った。

 いつの間にか主導権を握っている。

 さすがは帝国将軍閣下。

「推測出来るか?

 信楽殿」

情報(データ)不足でぇ確定は出来ないのですがぁ」

「構わん。

 言ってくれ」

「はいですぅ」

 何か帝国軍の作戦本部における将軍(アキラさん)参謀(信楽さん)のやり取りに思えてきた。

 副官のはずの八里くんは苦笑いしているだけだ。

 八里くんは参謀でもあるんだけど、この場合はむしろ将軍旗下の戦闘部隊の長という立場なんだろうな。

 どうもさっき話に出た矢代興業の諜報部隊(違)とやらは八里くんが仕切っている臭い。

 そういえば東大行ったのは国会図書館にもない旧日本帝国軍の資料を読みたいからだとか言っていたような。

 別にいいけど。

「それではぁ。

 まず言える事はぁ、先方に必ずしも敵対のぉ意志が見えないことですぅ。

 今のところはぁ探りを入れられているだけですぅ」

「十分な敵対行動に見えますが」

 比和さんが硬いな。

 何か最初から敵意があるみたい。

矢代大地(ガキ)と見合いだからな。

 逆鱗に触れたんだろう)

 さいですか。

「そこはぁ用心してますぅ。

 軽く探りを入れてぇ上手くいかないとぉすぐに撤退してますぅ」

「確かに。

 まあ『上手くいった』例がないから何とも言えんが」

「しかもぉ規模が大きい上に多彩ですぅ。

 同時多発とは言えませんがぁ、間を置かずにぃ何度も繰り返し接触してきてますぅ。

 方法もぉバリエィションに富んでますぅ。

 これらの動きからしてぇ先方はぁ非常に統制がとれた組織であると思われますぅ」

 ざわっ、と空気が揺れた。

 組織か。

「それは確かなのか?

 個人や小グループが好き勝手にやっているという可能性は」

「接触方法やぁ撤退のタイミングなどがぁ統制され過ぎていますぅ。

 どう見てもぉ司令部の命令でぇ作戦部隊が動いていますぅ」

「つまり……軍か」

「あるいはぁ傭兵とかですねぇ。

 ただぁ、確かに役人臭さがないですぅ。

 予算を与えられてぇ動いているようには見えないですぅ」

「……ゲリラ、いやむしろ非合法(テロ)組織か」

 八里くんの呟きにみんなは静まりかえった。

 僕、そんなものに狙われてるの?

「ダイチ様は私がお守りします!」

 空気を読まない比和さんの声に緊張が解ける。

 ありがたいけど羞恥プレイだよねそれ?

「違うと思いますぅ」

 信楽さんがのほほんとした口調で言った。

 助かる。

「なぜそう思う」

 (アキラ)さんの鋭い質問。

「暴力的なぁ匂いもないですぅ。

 上手く言えないのですがぁ、何というかぁ少女漫画的な感触ですぅ」

 いきなり話がアレになった(泣)。

「少女漫画、ですか」

 こういう時だけ食いつく高巣さん。

 狙い(ターゲット)が自分じゃないと判って余裕ですね。

「そのぉ。

 こんなこと言うとぉアレなのですがぁ」

「いいから言ってみろ」

「はいですぅ。

 先方の一連の行動はぁ奥手で臆病な女の子がぁ、何度もラブレターを渡そうとしてぇ失敗しているみたいにしか見えないですぅ」

 別の意味で沈黙する一同。

「……言われてみればそうでーす!」

「しかし……これほどの規模で」

「そんなことが有り得るのか?」

 たちまち私語で埋まる会議室。

 するとずっと黙っていた宮砂さんがよく通る声で言った。

「確かに。

 学園の人気者であるダイチ殿の周りには常に人がいて、平凡な少女であるヒロインがなかなか近づけないわけですね。

 せめてお話ししたいと思ってダイチ殿の周りに人に橋渡しを頼もうとしても疑われて失敗し続けている」

「その度に逃げてしまうから矢代興業(こっち)からみたら怪しい行動に見えるというわけか。

 いやご苦労。

 よく判った」

 (アキラ)さんが抑えきれない笑いをかみ殺しながら言った。

 失礼じゃないその類推(怒)。

 人を学園物の少女漫画の攻略対象みたいに。

「そうですな。

 先方は矢代興業や我等には欠片も興味がない故」

「敵対行動というわけでもない」

「ダイチに惚れた女の子が暴走したというわけねー!」

「ですが!」

 比和さんが低い声で言った。

先方()がダイチ様を狙っていることには違いありません。

 しかも信楽殿によれば統制が取れた強大な組織というではありませんか。

 これは由々しき事態です!」

「まあ、それはその通りだ」

 (アキラ)さんすら辟易していた。

「どうも個人じゃなさそうだしな。

 これまでの接触については調べたんだろう?」

「調査した。

 さっき言ったようにいずれも依頼人や対象者名まで判明している。

 裏もなさそうだった。

 洗い直してみるつもりだが」

 八里くんが淡々と言う。

「とすればだ。

 ダイチに恋した個人というわけじゃなくなってくる。

 ダイチとのお見……接触を望んだ者は、橋渡しが無理と言われた時点で撤退しているんだろう?

 つまりその手づるを捨てた」

「そうでございますな。

 組織的な行動とは言いかねます由」

「その者共が命令を受けていた可能性は?

 依頼人自身がダイチ殿に会いたがっていたわけではないとすれば」

 宮砂さん、やれば出来る子なんだよね。

 実際、矢代興業の社長をちゃんと務めているし。

 パシリ体質なのが悲しいけど。

「そうか。

 例えば見合……会談が成立した時点で入れ替わるとか」

「有り得ますな。

 お見……その場に現れる者がご本人とは限りません」

 みんな口調がアレなのは「お見合い(キーワード)」を口に出す度に比和さんが人を殺しそうな目で見るからなんだよね。

 そこまで怒らなくてもいいと思う。

 そもそも僕のお見合いとは限らないし。

 ただ「会いたい」と言ってきただけなんじゃないの?

「それが危ないのです。

 ダイチ様に取り入るためなら何をしてくるか判りません。

 ダイチ様は私がお守りします!」

 嬉しいけどほどほどにね(泣)。

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