14.同感です!(泣)。
そういえば誰かを忘れているなと思ったら山城くんたちがいない。
山城くんは少年エスパー戦隊を率いる超能力者という設定の厨二病患者だ。
少年エスパー戦隊には山城くんだけじゃなくて色々個性的なメンバーがいるんだけど、あの人たちは神出鬼没だからなあ。
思いがけない所に現れたりする。
例えば僕たちの前のテーブルに載っているお皿を片付けている美少女ウェイトレスさんとか。
「胡堂くんも卒業?」
聞いてみた。
「本当に目敏いな。
大抵の奴は気づかないのに」
「何というか胡堂くんには独特のオーラがあるからね」
ウェイトレスさんはエプロンを纏った細い腰に手を当てた。
ハイソックスを纏ったすんなりとして綺麗な足と華奢な身体、細くて長い手。
そして物憂げに光る大きな瞳と艶々しい唇。
綺麗なストレートの黒髪。
物凄い美少女だ。
メイド喫茶とかに行ったら巨万の富を稼げそう。
でも男だ(泣)。
「俺もまだまだか。
……失礼します」
丁寧に礼を取って去る美少……年。
あの人も謎だなあ。
確か僕と同年代だから今年大学卒業のはずだけど、その懇親会に何で女装して混じっているのか。
しかもウエイトレスとして。
そもそも超能力者の人たちって厨二病患者の中でも特殊なんだよね。
他の厨二病みたいに前世があって転生したとかじゃない。
信楽さんによれば並行世界では実際に超能力者戦隊を結成して悪だか何だかと戦っていたらしいけど、山城くんたちにはその記憶がないらしい。
超能力者と言いつつこの時間線? で超能力が使えるわけでもない。
ただ、何だかよく判らない能力だか奇術だかが使えるように見えるだけで。
でも信楽さんが認めちゃったからね。
次元放浪者である信楽さんは前世のいくつかで山城くんたちと出会っているそうだ。
山城くんが信楽さんをスカウトに来るみたい。
戦隊の「頭脳」担当として。
そういう事が何度もあったみたいなんだよ。
それも妄想だか設定だかかもしれないけど。
でも裏の最高権力者である信楽さんが認めたからね。
ということで山城くんたちは何だか胡散臭い状況で矢代興業に参加したんだけど。
結局、超能力者の人たちが何やってるのかよく判らなかったもんね。
山城くんや胡堂くんはウェイターやったりCAやったりしていたけど。
どう見ても諜報員。
まあいいか。
僕はああいう人たちとはカカワリアイになりたくないし。
色恋沙汰なんか聞きたくもない。
「相変わらず謎の方ですね」
比和さんが胡堂くんの後ろ姿を見送りながら言った。
「アレはぁああいうモノだとぉ思っといた方がいいですぅ。
出来ればぁ忘れて欲しいですぅ」
信楽さんが庇うような言い方で話を逸らせる。
うーん。
やっぱ超能力者って信楽さんの配下なんじゃないの?
それも裏というか非合法的な。
(考えるな。
矢代大地に出来ることは何もない)
無聊椰東湖の忠告を有難く受け取っておく。
面倒な事はスルーしよう。
さて。
これで大体の顔合わせは済んだっけ。
宇宙人のみんなは確か僕より1年下のはずだし、そもそも宇宙人グループの代表であるロンズデール姉妹はアメリカに戻ってしまっている。
去年、何と言うか宝神の姉妹校? を向こうで立ち上げたんだよ。
正確に言うと宝神と同じで倒産しかけた小さな理工科大学を矢代グループが買収したと聞いている。
従って矢代興業の関連学校法人ではあるけど資本の大半はロンズデールが出したから、ほぼ宇宙人の独占だ。
宇宙人の人たちはそっちに移動というか移籍したからね。
もっとも須藤姉妹や荒間姉妹といった日本国籍を持つ前世宇宙人は宝神のそれっぽい学部にいるはずだ。
そういえばあの連中の恋愛とか結婚とかどうなるんだろうか。
基本は双子だからね。
宇宙人同士で結婚したりして(笑)。
いずれにしてもこの懇親会には来てないからいいか。
でも僕、何かを忘れているような気がするんだよなあ。
出来れば思い出したくないような何かを。
思い出してしまった(泣)。
「未来人は?
あいつらの姿が見えないけど」
武野さんと鞘名さん。
未だに同類が見つかっていない未来人。
矢代興業の金のタマゴを産むニワトリ。
超自由権を持つ二人は未だに矢代グループの経営戦略の要だ。
証券市場から無限のお金を引き出し続けているもんなあ。
「武野先輩とぉ鞘名先輩ならぁ来てないですぅ」
何でも知っている信楽さんが教えてくれた。
「何で?
あの二人も卒業したんでしょ?」
何か僕のお見合いに賛成したみたいだから文句言ってやろうと思っていたのに。
すると信楽さんは肩を落として溜息をついた。
「海外にぃ遊びに行ってますぅ。
この懇親会出席はぁ別に強制ではないのでぇ」
さいですか。
相変わらず我が儘やり放題だなあ。
矢代グループに巨万の富をもたらし続ける未来人は誰も束縛出来ない。
為替相場や株式市場の動向のみならず重大な局面では諮問機関的な事もやっているらしいんだよね。
僕のお見合いとか(泣)。
「そういえば未来人はこれからどうするんだろう。
卒業したことは知ってるけど」
「大学院ですぅ」
やっぱし。
あの怠け者たちがまともに就職するはずがないと思っていたよ。
ていうか既に就職しているんだけどね。
今はどうなっているのか知らないけど高校時代は証券事業部で働いていた。
事務室を自分たち専用の休憩室にしてしまってポッキー食べながらテレビを観てるだけだったりして。
その合間にテキトーに会社を選ぶ。
ただそれだけで株式市場からコンスタントに利益を上げ続けているんだから誰も文句を言えない。
「大学院ねえ。
何を学ぶのやら」
「何でもいいですぅ。
あの人たちにはぁ別に進級も卒業も学位取得もぉ必要ないですぅ。
在籍して遊んでいるだけで十分ですぅ」
信楽さんは淡々と言うけど結構葛藤があるのかも。
未来人たちは最初の1年だけとは言え僕の心理歴史学講座に所属していたからね。
信楽さんは助教としてあの連中に悩まされたんだよなあ。
「未来人にはぁ好きにして貰いますぅ。
触らぬ未来人にぃ祟り無しですぅ」
吐き捨てる様に言う信楽さん。
同感です!(泣)。




