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僕の世界は厨二病 ~厨二病でも真っ当な社会人として生きていきたい。が無理のようです~  作者: 笛伊豆


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101.えーっ?

 侵入者(インベーダー)

 確か大昔のアメリカのテレビドラマにそういうのがあった気がする。

 宇宙人が円盤で攻めてくるんじゃなくて、密かに人間の社会に潜入してくるんだよね。

 本当の姿は違うんだけど地球では人間に化けている。

 何か「メン・イン・○ラック」みたいだけど、違うのは人間に友好的とは限らないことだ。

 正体を知られると平気で人を殺したりする。

 でも侵略なのか移住なのかよく判らないんだよなあ。

 それを言ったら頷かれた。

 侵入者(インベーダー)の皆さんはもちろん平気で人を殺したりしない。

 それどころか宇宙人が直接地球に来ているわけでもないそうだ。

 つまりこの人たち自身は地球人(人間)

 でも自分たちの事を侵入者(インベーダー)と名乗るくらいだからね。

 初老の紳士が説明してくれたところによれば、皆さんはやはり厨二病(前世持ち)だということだった。

 でも普通(笑)の前世とは違うらしい。

 まず地球人類の転生とか生まれ変わりとかじゃない。

 前世? は人類の口では発音出来ない名称のとある惑星の支配種だそうだ。

 何かの理由でその惑星が滅亡の危機に瀕したため、その支配種は移民を試みた。

 だけど宇宙船を作って別の星に移住という選択肢には限界があった。

 技術力も資源も時間も足りない。

 大体、そんな事をしようとしても移住出来るのはごく少数だから他の人? たちが取り残される。

 全員一致で協力出来るはずがない、ということだけど実は僕たち人類とは事情が違ったらしい。

「我々の前世、というよりは移民元の種族は分類上は群体生物に近いものでした。

 地球で言えば蜂や蟻の類いですな。

 個体は素子のようなもので、集合することで知性を発現します」

「ああ、なるほど。

 つまり個体数が少ないと知性が失われると」

「そうです。

 知性だけでなく記憶も薄れます。

 ホログラム方式で記憶を維持しておりましたもので」

 なるほど。

 SFで読んだことがあるけど、実は人間の記憶も似たような方式で維持されているみたいなんだよね。

 脳のどっかの部分に記憶がまとまって保存されているわけじゃない。

 断片的な情報が脳の記憶巣にばらまかれていて、人間が何かを思い出す時はその情報の断片を集めて再構成する。

 だから記憶は変化する。

 忘れたり思い出せなくなるというのはその情報の断片の索引(インデックス)が壊れたか、あるいはインデックス自体にアクセス出来なくなる為だと。

 まあSFだから本当かどうかは知らないけど(笑)。

「つまり個体数が少ない状態で移住しても意味がなくなると」

「知性も記憶も失われて単なる原始群体になると思われます。

 ですが問題はそこではございません」

 英国紳士の人は溜息をついた。

 どうでもいいけどこの人、日本語上手すぎない?

 ネイティヴ以上という気がする。

 まあいいけど。

 ちなみにその他の人たちは黙って座っているだけだった。

 統制はとれているな。

「他にも問題が?」

「というよりは方法論ですな。

 宇宙船を作って移住という方法がナンセンスな以上、他の方法で行わなければなりません。

 ですが物理的な移動はどう考えても不可能。

 しかも移住先での生存はほぼ絶望的です。

 環境がまず合わないでしょうから。

 なので」

 その種族は何をどうやったのか判らないけど自分たちの知性と記憶を抜き出して「投射」したということだった。

 どこに向かってという事はない。

 石を投げたらどこかには落ちるわけで運を天に任せたと。

「ほぼ駄目なのでは」

「それはそうですが僅かなりとも可能性はあります。

 どこかの惑星に辿り着いて適合する生物に『取り憑く』ことが出来るかもしれません。

 ひとつでも成功すればいいわけですので」

 ああ、海亀みたいなものね。

 卵から生まれた小亀は一斉に海を目指すんだけど、そのほとんどが途中で喰われる。

 でも生き残った亀がでかくなって浜辺に戻ってきて卵を産む。

 悲惨な方法だけどそうやって種族としての命を繋ぐわけで。

 いやもっと条件は厳しいな。

「すると皆さんが」

「はい。

 成功したわけです。

 侵入者(インベーダー)は地球に辿り着いて人類の中で再生した。

 ですが」

「駄目だったんですか?」

 英国紳士は首を振った。

「再生出来たのが記憶だけだったのですよ。

 しかも発現しなかった。

 取り憑かれた人間、つまり我々は自分が侵入者(インベーダー)である事を取らないまま生きてきたわけです。

 ですがある日、記憶が戻った」

 嫌な予感がする。

「それはいつ頃で?」

「6年前の春でした。

 いきなり自分が侵入者(インベーダー)だった事を『思い出し』まして」

 あー、これは駄目だ。

 無聊椰東湖(オッサン)がいきなり僕の中に現れたのと同じだ。

 時期も合っている。

 つまり紛れもなく厨二病。

 仲間だ(泣)。

「記憶だけ、とは?」

 ショックでぼーっとしている僕に代わってパティちゃんが質問してくれた。

 英国紳士はいきなり女子高生から聞かれたにもかかわらず平気で応えてくれた。

「つまりですな。

 侵入者(インベーダー)は群体生物であるが故に多数の個体がお互いに密接に情報を交換しあって知性を発現させていたわけです。

 おそらく臭い(フェロモン)のようなもので情報(データ)をやり取りしていたと思われますが詳細は不明です。

 ですが私共は人類ですのでそのような個体間での濃密な情報(データ)交換は不可能でございます。

 記憶の方は断片的ながら再生可能だったのですが」

 そういう設定(笑)か。

 記憶だけじゃ自分が侵入者(インベーダー)とは思えないもんね。

 それはそうだよ。

 自分は人類であってそれまで生きてきた社会生活の記憶もあるわけだから、人類である自分によく判らない記憶が出てきたとしても、即自分が侵入者(インベーダー)になったとは思わないだろうし。

 いくら無聊椰東湖(オッサン)が五月蠅くても僕が矢代大地である事には間違いないのと同じで。

(何だとコラ)

 無聊椰東湖(オッサン)が喚いているけど無視。

 ということはつまり、ここにいる皆さんは侵入者(インベーダー)というよりは厨二病患者(人間)なんだよね?

 当たり前だけど(笑)。

「だとすると皆さんは地球人類ですよね?」

 駄目押しのつもりで聞いたら大きく頷かれた。

「はい。

 私共は侵入者(インベーダー)ではありますが、その前に人類です。

 更に言えば人間で家族も国籍も職業もあります。

 例えば私はジョン・モルゴー。

 英国通商代表部の臨時代理補佐官という肩書きがあります」

 えーっ?

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