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僕の世界は厨二病 ~厨二病でも真っ当な社会人として生きていきたい。が無理のようです~  作者: 笛伊豆


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100/383

100.パネェ。

 ソファーで珈琲を飲んでいるとドアが開いてきちっとした服装の人が入って来た。

 知らない顔だ。

「失礼します。

 先方のご用意が整いました」

「判った」

 応えたのは比和さんで、つまり比和さんの配下か。

 メイドだけじゃなかったらしい。

「比和先輩にはぁ今回の統括管理をぉお願いしてますぅ」

 信楽さんが教えてくれた。

 矢代警備と矢代ホームサービスの合同部隊が矢代邸に詰めているんだけど、その最高指揮官らしい。

 つまり現場のトップか。

 というよりは監査役?

 確かに信楽さんやパティちゃんは荒事には向かないよね。

 静村さんは論外。

 ていうか任せたら多分超常現象の嵐が(泣)。

「ではダイチ様」

 比和さんの先導で部屋を出て進む。

 僕を中心として前に比和さん、左右が信楽さんとパティちゃん、そして静村さんが後ろだ。

 ダイヤモンド編隊って奴?

 ていうかその周りをメイドさんと背広の人たちが囲んでいるんだけど(汗)。

 本格的に護衛されてる?

「状況は既に進行しています」

 比和さんがちらっと振り向いて言った。

「ダイチ様はご安心下さい。

 すべて私が対処します」

 比和さん、イメージがさっきまでと全然違う!

 これが臨戦態勢の妖精(フェアリー)か!

「心配ないですぅ」

 信楽さんがのほほんと言った。

「単なる用心のためですぅ」

「いや用心してる時点でヤバくない?」

 でもどうしようもないよね。

 そのまま廊下を進んで並んでいるドアの一つの前で止まる。

 比和さんの配下の人たちがドアを開けてくれた。

「では」

 中は結構広かった。

 特別会議室というからテーブルや椅子が並んでいるんじゃないかと思っていたんだけど、実際には豪華な居間(リビング)、じゃなくてサロンだった。

 部屋の真ん中辺りにソファーが並んでいて、何となく回の字が作られている。

 僕たちが入って行くと、そこに座っている人たちが一斉に立ち上がった。

 揃ってるね?

 でも誰も何も言わない。

 護衛の人たちは壁際に並び、僕たちが進む。

 一同が横並びになると向かい合う形だ。

「よくいらっしゃいました」

 比和さんが藁かな口調で言った。

「We used to come to Yashiro's house. We're welcome yours.」

 滑らかな発音で付け加える。

 やっぱ比和さん、英会話がもう僕より上手いじゃん!

「Thank you for inviting us.」

 相手側の中央にいる初老の立派な紳士が表情を綻ばせながら返してきた。

 発音が違う。

 イギリス英語クイーンズイングリッシュか!

 僕なんかアメリカの中学生(ハイスクール)英語だから圧倒されるよね。

「この度はお忙しい所を時間をとって頂き、ありがとうございます。

 それとこれまでの接触(アプローチ)でご迷惑をかけたようで申し訳ありませんでした」

 最初の人の隣に立っている中年のご婦人がネイティヴな日本語で言ってきた。

 日本人みたい。

 ちなみに最初の人は明らかなアングロ・サクソン系の風貌だった。

 生粋のイギリス人かな?

 信楽さんが目で合図してきたので言ってみた。

「とりあえずおかけになって下さい。

 Please sit down, every one.」

 英語で付け加える。

 だって日本語判らない人が大半みたいだし。

 ていうか英語も怪しい人がいたりして。

 幸いにして日本語と英語だけで理解して貰えたらしくて、一同は一斉に着座した。

 僕が座りながら観察すると相手側の人種は多種多様だった。

 大半は日本人みたいだけど、むしろアジア人と言った方がいいみたい。

 ベトナムや中国、あるいはインドネシア系も混じっているようだ。

 残りは世界の人種のるつぼで北欧系から南欧州、アフリカ系もいる。

 インド人やアラブ人、中央ヨーロッパ的な顔も見える。

 統一感がないなあ。

 何の集団なんだろう?

 僕がぼんやり考えている間に飲み物の配膳が行われた。

 メイドさんたちがお客さん一人一人に希望を聞いて回っている。

 スムーズに届く飲み物。

 珈琲カップやペットボトルなどがテーブルに並び、メイドさんたちが出ていってしまうといよいよ空気が引き締まった。

 さて。

 すると比和さんが静かに話し始めた。

「ご紹介させて頂きます。

 こちらが矢代財団および宝神総合大学理事長のダイチ・ヤシロでございます。

 というよりは矢代グループの代表といった方が良いかと」

 それから。

「This is Daiichi Yashiro, President of the Yashiro Foundation and Hojin University.

 General of the Yashiro Group.」

 うわっ!

 比和さん直訳だと確かにそうなるけどヤバいのでは?

 この文脈だとGeneralは「将軍」というよりは「総帥」になるって!

 手遅れだった(泣)。

 相手の皆さんから何とも言えない動揺のような雰囲気が感じられる。

 僕、悪の組織の首領に思われたみたい。

 続いて比和さんは信楽さんを初めとしてみんなを紹介した。

 信楽さんの肩書きは矢代興業の最高執行責任者(COO)だったけど正体がバレてる臭い。

 実は僕の隣に座っている女の子が世界を支配しているんですよ?

 ご存じでしたか。

 パティちゃんには疑問が籠もった視線が向けられたけど静村さんは別の意味で驚きを持って迎えられた。

 それはそうかも。

 何の会見だか知らないけど企業のトップが出て来るような場所にいきなり和服の水泳選手が同席していたら不思議に思うよね。

 それでも皆さんは大人しくしていた。

 最後に比和さんが自己紹介したけど、これは明らかに不要だった。

 誰でも知っているもんね。

 ヴォーグとタイムの表紙を飾った経営者なんか他にいないでしょ?

 比和さんが黙ると相手方の番だ。

 僕の真ん前に座った例の英国紳士が立ち上がった。

 まずは僕に対して軽く頭を下げる。

 そして驚いた事に流暢な日本語で話し始めた。

「会見をお受け頂き、改めてお礼を申し上げます。

 私共の素性については後ほど。

 本題に入る前に一つ、説明させて頂きます。

 我々は雑多な国籍・人種からなる集団でありまして使用言語もさまざまです。

 しかし今回は日本語で通させて頂きます。

 我々の間では共通認識が出来ていますので」

 それから英国紳士はまっすぐ僕を見つめて言った。

「我々は、侵入者(インベーダー)です」

 パネェ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] いつも展開を楽しみにさせて頂いています。これだけすごい状況をこう日常生活に溶け込ませ(られて)いる大地がすごいです。 [一言] 今回は全く予想できませんでした。要塞(トーチカ)だからインベ…
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