9.僕、そんなのとお見合いさせられるわけ?
改めて聞いてみたら一応は調査結果が出ているそうだった。
僕の両親に持ち込まれたお見合い? のお相手の実家やご本人、その係累なんかも判明している。
それなりのお嬢様らしいけど問題はそこじゃない。
「実体が掴めない?」
「さようでございます。
矢代警備がコネを使って調べたところ、書類上では完璧ということでございました。
その方の誕生から通った学校、成績や活動記録なども矛盾はなく」
「だったらいいのでは」
「書類上ではでございます。
ですが例えばその方が卒業された学校の親しい同級生などが見つからないということで」
「何それ。
ラノベ?」
クラスごと異世界に飛ばされたとか?
「違います。
生徒は存在しているのですが、インタビューしてみると誰もその方を知らないというか、同級生だった事を覚えていないそうで」
やっぱラノベじゃん!
そういう設定は昔流行ったと思う。
認識疎外とか幻想とか。
「するとその人は誰にも知られずに学校に通って卒業したわけか」
「さようでございます。
何とも不思議な事で」
うん。
話だけ聞くとそう思えるよね。
でも読めた。
(ほう?
矢代大地には理解出来ると?)
当然でしょう。
僕は溜息をついて言った。
「つまりその人って不登校もしくは保健室登校児童だったというわけでしょ」
「その通りでございます」
黒岩くんも苦笑していた。
何のことはない、クラスに所属はしているんだけど誰も見たことがない生徒って、つまり教室にいなかっただけじゃないの?
不登校なのか、それとも登校はしているけど教室にいないのかは判らないけど合法的にその状況を作り出す事は出来る。
わざとやったとは思えないけど。
「なるほどですぅ。
盲点でしたぁ」
信楽さんが言うけど白々しいよね。
判らないはずがないでしょう。
「でも卒業出来たんだから登校はしていたんだろうな。
ていうかその相手って学校出てるの?
いやその前に年齢は?」
肝心な事を聞き忘れていた。
ラノベだと幼い頃から婚約者とか時々あるからなあ。
「名門の女子高校を卒業されておられるとのことでございます。
進学はしておられないとか」
「じゃあ働いているんだ」
「いえ。
家事手伝いを。
年齢は二十歳という事でございます」
うわっ。
駄目じゃん!
しかも成人済み。
「何か凄い事故物件という気がするんだけど」
言ったら頷かれてしまった。
「矢代警備の調査部も概ね似たような評価でございます。
実家はともかくご本人は考慮に値しないと」
さいですか。
まー、小説ではよくある話かもしれない。
財閥とか名家のお嬢様が引きこもりになってしまったので、何とかしてどっかに押しつけようという。
別に僕じゃなくても良かったんだろうな。
手当たり次第に話を持ちかけているという所だろう。
「だったら気にしなくてもいいんじゃない?
僕が何か言う以前に断ってくれても良かったのに」
解決したつもりで言ったら黒岩くんと信楽さんが揃ってしかめっ面になった。
何か支障が?
「それがですねぇ。
矢代興業内部からぁ異議が出ましてぇ」
「それも複数箇所からでございます。
無視するにはあまりにも」
「そうなんだ」
よく判らない。
僕のお見合い候補がポンコツだと判明したのに、それに異議を唱えると?
しかもこの二人の口調だとかなり強力な意見みたい。
でも僕の結婚話というかお見合いに矢代興業がどう関係するんだろう。
「どういう所が何を言ってるの?」
聞いてみた。
「まずはぁ分析班ですぅ。
ビンビン感じるとの事でぇ」
未来人か!
金のタマゴを産むことしか能がない癖に何を人のお見合いに口を出してるんだよ!
「ビンビンって」
「大地殿と会って貰えとの一点張りでございます。
理屈も何もない主張ではありますが分析班には実績がございます故。
無視は出来かねるとの意見が多く」
そういえば宝神国際大学の買収って未来人たちが執拗に主張して実現したんだった。
あまりにも五月蠅いので仕方なく信楽さんが当時の宝神国際大学理事長だった末長さんと会って意気投合した結果なんだよね。
結果的には大成功で、今の矢代興業があるのはその決断の成果と言える。
それと同じかもしれないと?
(未来人の嬢ちゃんたちは予言者みたいなもんだからな。
ほとんど予知と言ってもいい。
無視は出来んよ)
確かに。
「でもそれだけじゃあ」
「だけじゃないですぅ。
実はぁ宇宙人からも賛成意見がぁ出てますぅ」
信楽さんが言うにはどこから聞きつけたのか、ロンズデール姉妹がいきなり割り込んできて強力に接触を進言してきたそうだ。
何でまた宇宙人が。
「どうい関係?
ロンズデール・グループとその名家とやらに取引があるとか?」
「違うみたいですぅ。
ロンズデール・グループではなくぅ宇宙人としてぇ推奨してきてますぅ。
理由はぁはっきりしないのですがぁ」
「未来人と宇宙人が推薦しているわけでして。
しかも連携している様子もなく。
矢代興業としてはお断りするという選択肢はなくなりました故」
それで黒岩くんが困っているのか。
元々は僕の両親から持ち込まれた話なんだよね。
矢代興業側に決定権があるわけじゃないけど、頼まれた以上は責任が生じる。
いい加減な事は言えないのに調査対象はポンコツと判明。
でも否定しようとたら身内から反対意見が出てしまった。
それも2種類。
未来人は矢代興業の屋台骨を支える重鎮だし、宇宙人は別の意味での重要勢力だ。
その2つが肯定的な意見を出した以上、黒岩くんは僕の両親にそう報告するしかない。
でもその相手って保健室登校の引きニートで現在無職の家事手伝い(予想)だよ?
僕、そんなのとお見合いさせられるわけ?




