【第二章】第九部分
『ジーッ。』
「なんだか、スゴく見られてるなあ。って、桜子、オレを見るんじゃなくて、前を見ろ。授業中だろ!先生に怒られるぞ。」
「サクラは飛び級優等生なんだから、授業なんて聴かなくても大丈夫なんだから。べ、別にお兄ちゃんに心配されてうれしくもなんともないんだからねっ!」
「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「うれしいんだ。」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
周囲の意見はふたたび満場一致。
「ムムム。あたしの栄知を~!」
久里朱だけはまったく違う色の反応を示していた。
その後、移動教室など、桜子はずっとくっついていった。
男子トイレまでついてきて、さすがに弾き出された桜子。久里朱も1メートル離れて追随していた。
体育の時間になり、ふたり一組で柔軟体操を始めた。体育は白いシャツにブルーのハーフパンツという、ごくありふれたスタイルである。
桜子は栄知に横並びして、手を伸ばした。
「お兄ちゃんがどうしてもって言うから、ふたり一組になってあげるんだからねっ。」
赤い顔をそむけたままで、反対側の栄知に話しかける桜子。
がっしりした角張った顔の体育教師は笛を鳴らして命令した。
「今日の授業は、二人三脚だ!」
桜子は厳しい表情で、栄知に話しかける。
「お兄ちゃんズを保護するために、お兄ちゃんにくっついていないといけないんだよ。だからサクラは栄知の前に勃つよ。」
「漢字が違うわ!」
「どう違うのかな?」
「オレに言わせるな!」
「それじゃ、二人三脚やるよ。足を結ばないとね。」
桜子は手際よくふたりの両足を赤いヒモでくくりつけた。
「よし、ちゃんとできたよ、お兄ちゃん。」
満足げにひと汗を拭った桜子。
「おいおい、これでいいのか?すごく走りにくいぞ。」
桜子の作った二人三脚は、足を横に並んで左右を結ぶのではなく、前後で結んでいた。つまり、桜子が前、栄知が後ろになる列車繋ぎで、ふたりとも前を向いているスタイルである。
「栄知のヤツ、あんなにデレっとして、なんのつもりなのよ。」
久里朱はそんなふたりを見て、メラメラと心に炎を燃やしていた。




