【第一章】第二十部分
中世ヨーロッパお城のような建物が、真新しさを誇示してネオンを輝かせている。無論、これはご休憩用のホテルである。
その前にタバコをふかして待っている中年のスーツ姿が見える。
「オジサン、お待たせ~。」
「おマタせ~の間違いだろ?」
「いやん、オジサンったら、スケベ丸出し~。」
茶目っ気たっぷりに言葉をかわしているのは、赤いドレスを着た久里朱。胸元が露骨に開いて、小さな膨らみを大きく見せており、スカートには太ももがあらわになるぐらい、長く鋭いスリットが入っている。
久里朱はかなりケバいメイクをしているが、似合わないこともなく、セクシーである。そんな美少女特典を生かした久里朱は、やはり高そうな枕を背負っている。
久里朱は中年の腕を取って、自分の胸に当たるようにぐいと引き寄せて、そのままホテルにインした。
久里朱たちはエレベーターに乗って、一番上のフロアで降りた。
数分後、『あああ~ん。』という青少年が聞いてはならない艶かしいメス声が窓越しに漏れてきた。
「久里朱、そんなことはやめるんだ~!」
地面からホテルの最上階に、枕営業停止を叫ぶ栄知は、バタンと倒れた。
「いて~!・・・。はっ。ここは、オレの部屋?」
栄知はベッドから転落していたのである。
「夢でよかった。・・。ってワケでもないよな。今日も久里朱は枕営業するんだろうなあ。ううう。」
眠れぬ夜を過ごした栄知は、一人で元気なく登校していた。
栄知は、授業中も、夢のことを反芻していた。
栄知は久里朱が枕営業でやってることを想像すると、到底勉強など手に付かず、いても立ってもいられない精神状態が続いていた。
一方、久里朱は枕営業のことを、もはや隠す必要がなくなっていた。栄知に下校を誘われると、『今から枕営業で恥ずかしい思いをして、生活費を稼いでくるから。』と開き直って自嘲していた。真顔で言い放っているところが、栄知には悲しく思えてならなかった。




