【第一章】第十七部分
次の日、久里朱は学校を休んだ。
久里朱が休んだ原因について、十二分に思い当たるフシのある栄知は教室で唇を噛むしかなかった。
さらに数日間、久里朱は学校に来ることはなかった。不登校になったのである。
栄知は『久里朱に会いたい、話がしたい』と考えたが、自宅面会謝絶状態にあるのは間違いなく、刺激するのは得策ではないとの結論に至り、電話した。
「久里朱、元気か。」
『・・・。』
「そ、そうだよな。休んでるぐらいなんだから。」
『・・・。』
「宿題が溜まってるぞ。プリントはオレが持ってるからな。宿題なんて、自由時間の無駄使いで、エコ精神に反するよな。ははは。」
『・・・。』
「はあ。つまらないことを言ってすまない。」
『・・・。だから、なにが言いたいの?』
久里朱は消え入りそうな声で初めて回答した。
それが栄知に向こう見ずな度胸を与えた。
「オレは久里朱がホテルに入るのを見た。そんな場所だ。やることはひとつだろう。い、いや、ふたつ、3つ、う~ん。もっとあるかもしれない。もうそんなことはやめてくれ。オレは久里朱のことが心配なんだ!」
『・・・。あたしのことを心配してくれるなら、何も言わないで。あたしは探し物をしてるの。そのためには今やってる枕営業が不可欠なの。それがいやならあたしと絶交してよ!うわあ~。』
電話は久里朱の絶叫と共に切れた。




