僕が頑張る物語
ハロー、僕は勇者だよ!って急に言われてもなぁって思うよねー?そうでしょ?だって僕もそう思ったもん。っていうかこんな小童が魔王とかまじ、無理。いきなりさ、目の前ピッカーって光ったと思ったらなんか偉そうな人がいっぱい居てさ。そんでもっていきなり「勇者様!」とか「おぉ勇者だ。」とか「文献は本物だったのか……」とか「ほわ、成功してよかったですぅ。」「でかしたぞ、マリーよ。」「ふん。本物かどうか……」「あんな貧相なのが……」「ほんとに勇者なのか?」とかとか。一気に情報が、流れ込んできてもう何がなんだかって感じ。一瞬夢かと思って頬っぺたつねっちゃったら超痛いし、まぁそんなこんなで僕が頑張るお話。
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「おっふぉん。皆のもの静粛に。勇者殿が驚いておられるであろう。さて、勇者殿お名前をお訊きしてもよろしいかな?」
「勇者ってひょっとして僕、ですか?僕は、柳葉 優人です。あの……ここって何処ですか?僕、家に帰る途中だったはずなのですが……。」
「おぉ、それはすまぬな。では、その家に帰る前にちょっとだけ遠回りをすることになったと思って貰って構わない。もちろんこちらの用事が済めばユウト殿の家に帰して差し上げよう。」
物腰は柔らかだが、拒否権は無さそうだ。だが即答はしない。
「あの、用事とは…………?」
「ちょっとな、なんと言うかその……。」
この中でおそらく一番偉いであろう王冠のおじさんが口ごもるとドレスを着た僕と同じくらいの歳の女の子が口をだした。
「……お父様、きちんとご説明してくださいねぇ。せっかくわたくしの、魔力を3割もつぎ込んで召喚したのですからぁ。」
独特な話し方の人だ。というかそこ親子だったのか……あまり似ていないな。母親に似たのだろうか?で、僕はこの人に召喚されたの?なんか勇者がどうとか言ってるしなぁ。
「うむ……そのーなんだ。たいへん頼みづらいのだがちょっと…………を倒して来てくれまいか?」
「はい?」
「だから、魔王を倒してきてほしいのだ!」
まさか…………ここっていわゆる異世界だのファンタジーだのの世界だったの?そういえば周りの人の服装も皆でコスプレしていると言うよりは着なれていますよーっていう感じがしてる気がする。
つか、勇者召喚とか魔王とか王様っぽい人とかたぶん王女様とかテンプレ過ぎて笑えない。あれなの?僕、チートスキルとか持ってたりするのか?ってそんなわけないか。だって貧弱もやしだもの。
「……魔王ってあの諸悪の根元とか世界征服とかの魔王ですか?こんな貧弱もやし中学生が倒せるわけないじゃないですか。そう言うのはこの世界の騎士様とか国の兵隊とかそういう武力のある機関に頼むべきでしょう。」
僕は話している間にだんだん怒りが募ってきた。
「というより、帰宅途中でいきなり連れてくるとか誘拐ですか?犯罪ですよ。刑法だかなんだかに引っ掛かってます。今すぐ僕を解放してください。」
「その刑法とやらはこの国の法ではないからの。ここは、ハナルマ王国王城、儀式の間。そうじゃ、自己紹介はまだだったな。儂は、ハナルマ王国第18代国王。レオナルド・ロイ・ソルス・ド・フィルソナである。これは娘のローゼマリーだ。」
「ご紹介に預かりましたぁ。ローゼマリー・リア・ファナ・ド・フィルソナですぅ。一応この国の次期国王に当たりますわぁ。魔王を倒すまで同行させていただくので、よろしくお願いいたしますわぁ。」
「うちのは、複合魔法と光魔法を使える。邪魔にならないと思うから連れていきなさい。」
強制的な発言。仲間なんて入らないから家に帰りたい。明日は誕生日なのに……。
「……強制ですか…………。わかりました、殿下をお預かりします。」
おっと前半思わずぽろり。でもきっと小声だったから気付かれていないだろう。うん。
「さて、勇者ユウト様ぁ。お部屋にご案内しますわ、こちらですぅ。」
「ありがとうございます。あの、殿下…………。」
「ローゼマリーで構いませんわぁ。これから魔王を倒しに行く仲間なのですからぁ。」
「では、ローゼマリー様。僕を召喚したのって殿下ですよね?」
「そういうことになりますわねぇ。」
「どうして僕だったのでしょうか?」
「わたくしにもわかりませんわぁ。ただユウト様の魂が近くにいた人々よりほんの少しこの世界に近かったのでしょう。」