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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

勇者と聖女と魔女の呪い歌

作者: どんC

思い付きの勢いで書いたので設定ががばがばです。すいません。

 私は貴方の事が好きだった。

 今、処刑台の上で跪いて処刑人の斧を待っている。

 父と母の首は槍に突き刺さって虚ろに私を見ている。

 人々は私を悪女と罵る。

 聖女を殺そうとした咎人と石を投げる。

 こんな時でも私は貴方が好きだった。

 無実の罪で処刑されるのに笑える。

 どれだけ愚かな女なんだと我ながら思う。

 私の名はエスメラルダ・フリル伯爵令嬢。

 数ヶ月前まで王太子の婚約者だった。

 何故こんなことになったんだろう。

 王太子の横に立つのは私の兄だった人。

 兄と言っても従兄弟にあたる。

 一人娘の私が王太子に嫁ぐので遠縁の子を養子にしたのだ。

 とんだ疫病神を迎え入れたものだ。

 兄は父と母と私を告発した。

 山と積まれた悪事の証拠。

 丁寧に調べれば私が赤ちゃんの時から罪を犯した事になる。

 笑える。婚約者だった男の横に座る女。

 聖女だ。

 光の魔法を操る。神に愛された娘。

 私を処刑した後、王太子と結婚する。

 世界を救ったそうだ。

 各地の神殿を巡り大地を浄化したのだろうか?

 それとも魔王を倒したのだろうか?

  病人を癒したのだろうか?

 どれもこの女はしていない。

 でも神殿は彼女を聖女と崇め奉り、私を魔女と断罪した。

 聖女はいてくれるだけで国が富むのだとか。


 あら? 


 可笑しいわ。

 だって彼女が現れてから飢饉も戦争も収まっていないわ。

 魔物は森から溢れ幾つもの村が消えた。

 何故誰も可笑しいと思わないの?

 その事を指摘した私はこんなところ(処刑台)に居る。

 特別席で王太子殿下とあの女が椅子に座ってにやにやとこちらを見ている。

 王は毒殺され王妃は病で倒れ。

 私を庇う人はいない。

 斧を持った処刑人が私に近づいてくる。

 斧が煌めき私の首が飛ぶ。

 空中にクルクルと首が舞いながら、私はある事を思い出した。


 私こそ聖女だ!!


 200年前、王太子殿下は前世勇者だった。

 そして……私は聖女だった。

 私達5人は北の魔女を退治しに向かった。

 私達は魔女を追い詰めたが。

 重傷を負いながら魔女は呪いをかけた。

 勇者が聖女(私)を殺す呪い。

 勇者や他の仲間は私が魔女に見えた。

 次々と私の躰に剣が魔法が突き刺さる。

 私は死にかけながら、仲間に浄化の魔法をかける。

 浄化の魔法で正気を取り戻す仲間たち。

 私は死んだ。

 私の亡骸にすがりついて泣く勇者。

 嘲笑を上げる魔女は勇者に止めを刺された。

 魔女は滅び、世界は平和になった。


 ああ……


 また私は貴方に殺されるのね。

 魔女の呪い歌は転生しても私達に纏わりつく。

 切り離された私の体と頭から癒しの光が溢れる。

 魔女に操られた人々に癒しの光は優しく降り注ぐ。

 癒しの光を浴びて人々は正気に返る。


「お……俺……は……何をしたんだ? エスメラルダ? エスメラルダ!!」


 王太子殿下の絶叫が聞こえる。

 不思議ね私の体は光となって消えてしまったのに。

 泣き叫ぶあなたが見える。

 私はふわりとあの女の所に舞い降りる。

 あの女の、いいえ、北の魔女の生まれ変わり。

 どうやら人々には私の姿は見えないらしい。

 無理もない私は幽霊になってしまったのだから。

 でもあの魔女は私の姿が見えるみたいだ。

 私を睨み付ける。

 魔女に癒し光は毒だ。

 ピンクの髪はちりちりに黒焦げになりべろりと垂れ下がり、緑の瞳は狂気に血走り。

 愛らしい顔はオークの様にむくれ腫れ上がっている。

 天使だ妖精だと褒め称えられていた容姿は魔法が解けた瞬間、本来の醜い姿を晒している。


「化け物!!」


 癒しの光を浴びて、人々は正気にかえった。

 人々は口々に叫ぶ。


「王太子様……」


「寄るな‼ 化け物‼」


 しおらしく王太子に助けを求めても正気に返った王太子は男爵令嬢を突き飛ばす。


「あはははははは……もう手遅れよ愚かな王太子‼ またお前はこの世で一番愛した女を殺したんだ‼」


正体を現した魔女は王太子を嘲笑う。


「……くっ……」


 王太子の剣がイボイノシシの様な男爵令嬢の心臓に突き刺さる。

 魔女は笑いながら灰になって消えて行った。


「また……俺は……俺は……お前を殺してしまった」


『また来世で会いましょう』


 私はそっと彼の頬に触れると天に昇って行った。


 リンゴーンリンゴーン


 弔いの鐘が鳴る。

 悔やんでも、嘆いても、彼女は還らない。






 ~ 魔女の呪い歌 ~


 私は魔女だ。

 勇者と聖女を呪った。

 嫌がらせだ。

 アイツらは旅の途中からイチャコライチャコラ。

 本当にムカつく奴らだった。

 真実の愛だとか。二人の愛は永遠だとか。

 戯言を垂れ流していた。

 魔法の鏡で敵情視察だ。決して出歯亀デバガメではない。

 腹を立って勇者と聖女に呪いをかけた。

 勇者が聖女を殺す呪いだ。

 所が、何かの手違いで私も巻き込まれる様になっていた。

 それに気が付いたのは100回目の転生の時だ。

 パターンはいつも同じ。

 私に誑かされた勇者の生まれ変わりが聖女の生まれ変わりを殺す。

 そして……私は勇者に殺される。

 いつもいつもこのパターンだ。

 おかしい。

 何故私が巻き込まれる?

 勇者が聖女を殺し正気に返った勇者が苦しみのたうち回るだけの呪いだったはずだ。

 いい加減私を巻き込むのはやめて欲しい。

 勇者に殺されるのは痛いし苦しいのだ。

 おまけにせっかく集めた魂が勇者に刺される度に抜けていく。

 魂が抜けると私の力が弱くなるのだ。

 そうだ。呪いを解けばいい。

 そう気づいた私は呪いを解いた。


 が……呪いは解けなかった。


 何故だ?


 おかしい、おかしい、おかしい、おかしい、おかしい、おかしい。


 また勇者が聖女を殺した。

 そして……私も殺された。

 魂が抜ける。私の力が弱くなる。


 グルグルグルグル。


 輪廻は廻る。


 グルグルグルグル。


 呪いは廻る。


 誰か‼ 誰か‼ 助けて‼


 イボイノシシのような魔女が助けを求めても神も悪魔も助けてくれない。

 いつもいつもそうだ。

 私は大帝国の王女として生まれたが、流行り病で醜くなった。

 お父様(王)もお母様(王妃)も私を忌み嫌い、北の塔の中に私を閉じ込めた。

 私の世話をしてくれるのは乳母だけ。

 乳母は薬師で私の体中の痘痕を直そうとしたが、出来なかった。

 乳母は死に。

 私は王や王妃や美しい兄妹を呪い。

 私は呪い歌を創り上げた。

 家族の命と引き換えに美しさを得たのだ。

 呪い歌に代償はつきもので。

 私の美しさを維持するために森が死に動物が死に人々が死んだ。

 大帝国は死人の国となった。

 そうしたら勇者と聖女とその仲間がやってきて。


 私は殺された。


 100回目の転生を終えた時に異変が起きた。

 勇者の生まれ変わりが聖女の生まれ変わりを殺さなくなったのだ。

 何故か私が魔女だと言うことが直ぐにばれ。

 私は2人に殺されるようになった。

 しかも二人から逃げても直ぐに見つかり何度も何度も殺された。

 私が呪い歌で集めた人々の魂がその度に解放され。

 私の中から出ていく。

 最期の魂が私の中から出て行った時。

 勇者は言う。


『これで御前は救われる』


『これがあなたが欲しかった救い』


『『 神よ‼ この哀れな魂を貴方の元に届けます。どうぞ安らかな眠りをお授けください‼ 』』


 こうして私は救われて。

 神の元へと旅立った。




           ~ Fin ~




 *************************************

 2019/8/30 『小説家になろう』 どんC

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 ~ 登場人物紹介 ~


 ★ エスメラルダ・フリル 

 伯爵令嬢(17歳)聖女の生まれ変わり。

 魔女の呪いを受けて愛する人に殺される。

 何度も転生をするうちに死ぬ瞬間に癒しの光を放つうちに呪いが勇者の生まれ変わりに効かなくなり。

 呪いから解放される。


 ★ 王太子

 王太子は勇者の生まれ変わり。(21歳)

 聖女を殺すたびに魂に浄化を受け、魔女の呪いが効かなくなる。

 魔女を救うため魔女を殺しまくる。

 良いことをした。ドヤァ~男。


 ★ 北の魔女

 大国の王女。流行り病で醜くなったから、それを治すために禁忌に手を出す。

 魔女の呪い歌で人々の魂を集め、美女になる。

 その代価は家族と帝国の国民の命である。

 勇者と聖女とその仲間に退治される。

 死に際に勇者と聖女に呪いをかける。

 所が100回を超えたころから呪いが効かなくなり。

 魔女だけが殺されることになる。

 殺される度に集めた魂が魔女から抜けていく。

 勇者と聖女は魔女の魂事消滅させることも出来たが、それをやると集められた魂事消し飛ぶので少しづつ魂を解放した。

 魔女からするとサッサと消滅させてくれと言いたいだろう。


* 主人公以外名前はない。決してめんどくさかった訳ではない。


最後までお読みいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 自業自得で苦しんだ魔女さんに、一言モノ申したい人たちがいるようです。 某不死の人「そんなに魂が欲しいなら肉食大ネズミと赤子骸骨をぶっ潰して溜め込んだ人間性をやろう」 人間性がたまりすぎると…
[良い点] 冒頭、救いのないお話かなぁ…と身構えましたが、大局としては収まるところに収まってほっとしました。 ご両親は死に損だけど。 [気になる点] 魔女さんはデガバメじゃなくて、デバガメ(出歯亀)
[一言] 魔女の呪いは自らをも呪っていたということでしょうか? とても読み応えがあって良かったです。
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