始まりとそれから
何とかならなかった。
「あんたそれでも勇者なの?」
あれから1年経つがこれが俺の評価だ。 同じ勇者達からは友好的な扱いを受けず、蔑みの目で見られる。
そもそもだ。 そもそも俺が勇者として産まれてくるのが可笑しい事にすぐに気づいた。
なんたって俺以外の勇者は、皆貴族様だ。
それもその筈、勇者の子孫は勇者になりやすいのだ。
その事は前から本で知っていたが、貴族は6人位かと思っていたのだ。
それが蓋を開ければ全員貴族様、昔から本場の騎士に稽古を付けてもらっている貴族様はそりゃさぞかし強かった。
そして貴族様はプライドも誇りも周りに求める物も高いと来たら俺なんてど平民は特に鼻につくのだろう。
そりゃ勇者として認めたくないわけだ。 それもリーダー核の戦士なら尚更だ……
そんな訳で俺は今何してるかと言うと、素振りだ。
笑える事に首都まで来て俺がする事は素振りしかないようだ。
他のみんなならダンジョン攻略で戦闘の感覚を掴むらしい。
あれから更に1年経った。
もう素振りには飽きてきたが何せやる事が変わることも無ければ、俺の評価も錆びた剣も何一つ変わらない。
あれから他の奴らは本格的にパーティを作り連携の練習をしてる様だ。
何でも俺の抜けた穴が見つかったらしい。
前勇者様のご子息らしく前勇者様の神具を完璧に使いこなせるらしい。
元々勇者様の子孫は稀に直系の勇者様の神具を使えるとは聞いた事がある。
それはどれも勇者様が使っていた時よりも格段に性能は下がる様なのだが、それを感じさせない強さらしい。
これで完全に俺の居場所は無くなった。
更に1年が経った。
ついにこの日が来たかと俺は思った。
それでもかなり時間がかかった方だと思う。
まぁ、保険と期待も少しはあっただろうがこれで完全に見放された。
俺は勇者の名を剥奪されたのだ。
元々世間に公表されていたのは出来のいい勇者だけ。
俺の事は何とか誤魔化していた様だが、そこに後釜が入って一件落着。
用無しの俺は早々に宿から追い出され1週間程生活できる金を貰って、後は好きにしてくれとさ。
ぼんやりと首都バイスを見て回る。
今日も賑やかな人通りを1人歩く俺。
そして一つの扉の前に辿り着いた。
そこには冒険者ギルドと大きく書かれた看板が掲げられた場所。
今日から俺は冒険者になる。
ここまでプロローグかな?